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「お客様の声(Voice of Customer:VOC)」を活用した顧客接点の強化

VOC分析の全社浸透に向けたアプローチ

掲載月 : 2010年12月

「お客様第一主義」。保険業界において、以前は「本社の掛け声」で終わっていたこの言葉も、ようやく実現に向けた検討が開始されるようになってきたのではないでしょうか。
保険業界では、近年「保険会社向け監督方針」や「金融検査マニュアル」の中で、契約者保護の観点や苦情対応に関する明確な指針が打ち出されており、保険会社においてもWebを通じたお客様からの苦情・相談件数の公表等、積極的な取り組みを始めています。しかし、実際に保険会社の担当者と話をすると、今の取り組みで「十分対応できている」と答える方はほとんどいないのが現状です。それは一体なぜでしょうか。

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なぜ満足のいく取り組みができていないのか

その理由について、「情報収集・蓄積」「分析」「活用」の3つの視点から考えてみます。

情報収集・蓄積

この局面における現状の課題として、まず「お客様の真の声」を本社が把握できていないということが挙げられます。これまでの保険業界は、間接販売という業界構造により、お客様と直接コンタクトをとるのは営業職員または代理店が中心でした。そのため、個々のお客様の声・ニーズは営業担当者が把握しており、本社は十分に蓄積してこなかった経緯があります。そして、いざ本社が情報を収集しようとした時に、営業職員や代理店に対して、お客様情報が必要となる目的、本社に提供することのメリット等を具体的に伝えられないため、営業職員や代理店を経由して大量の情報を収集することは、ハードルが高いという声をよく聞きます。ここがまさに保険業界特有の事情であり、他業種と比較してVOCに関する取り組みが遅れている大きな要因の一つではないでしょうか。

また、コールセンターにおいては、情報をシステムに登録する際のルールが明確ではなく、人によって登録方法にバラつきが生じやすいということが挙げられます。電話での会話情報はアンケートのように構造化されたものではないため、大量の非構造化情報を人手でさばくこと自体が困難だという性質があります。

分析

例として、「会話情報」の分析を見た場合、新商品・サービス開発への活用等のために、会話という定性情報を、目的に合わせてどのように分析すればよいのかわからないという声を聞きます。そのため、既存データを使い、一定のカテゴリーで集計するのが精一杯となるケースが多く、具体的な打ち手につなげることが難しくなります。

活用

最後に、分析した結果を活用する局面です。既に、アンケート結果やコールセンターの会話記録から、各社VOCを活用する動きはあるものの、特定部門内に閉じた活動になっており、分析結果を部門間で十分共有できていない場合があります。

これは、部門ごとにVOCを活用する目的が異なることが影響しています。また、いざ部門間で共有しようとしても、そのためのシステムを整備してこなかったため、共有を断念してしまうケースもあります。

VOC活用の成功要因とは

1. 目的の明確化

まずは、VOC活用の目的を明確にすることが不可欠です。そうすることで、必要となる情報、分析手法、分析結果の活用方法も明らかになります。さらには、現場の担当者の労力をかけずに、情報の入口で必要なデータを自動的に取得する仕組みを作ることも可能となります。また、VOC活用のメリットを明らかにし、明確に伝えることができれば、現場の担当者も情報収集(情報提供)に対して、より協力的になるでしょう。

2. 部門横断的な推進体制の構築

VOCの活用を全社的な取り組みとして推進するためには、各部門間の利害関係の調整等を行い、部門横断的に全体をリードする専門組織を設置することが必要です。特に他社との差別化を図るために、新商品・サービス開発に向けた予測分析等の高度な分析を行うには一定レベルの知識・経験を要するため、分析専門の組織が不可欠となります。

3. IT技術の活用

そして、これらの取り組みを支えるのがIT技術です。情報収集・蓄積・分析・活用という一連のプロセスを実現し、営業現場から本社の各部門、また経営層に至るまで、各々が必要とする情報をタイムリーに把握、共有するためにはIT技術の活用が欠かせません。

例えばコールセンターでの会話を単に録音しておくだけでは、分析につなげることが困難であるため、音声をテキストデータに変換する技術(トランスクリプション)を活用し、その上でテキストマイニングをすると、大量の定性データを分析のための定量データに変換することが可能となります。

また最新の技術では、非言語情報(声の大きさ、抑揚等)と言語情報(テキストデータ)の組み合わせによる感情分析等も可能になってきており、分析やオペレーターを支援するための技術も高度化してきています。

このような取り組みを行うことが、VOCを活用した新商品・新サービス開発と、それに伴う顧客サービスレベルの向上を実現することになるのです。

段階的展開による全社への浸透

【1st Step】
コールセンターの活用による、成功事例の早期実現

お客様の「生の声」を収集する場合、営業職員、代理店経由で収集するには、どうすればよいのかが悩みどころです。そこで、最初のステップは、本社が主体となってコントロールできるチャネル、すなわちコールセンターを活用して情報収集・蓄積を開始することが重要となります。そして、分析結果をコールセンターから各部門に情報発信していくことで、VOCを活用することの有効性を早期に気づいてもらうことが次のステップに進むきっかけとなります。

【Next Step】
部門横断的組織が主体となった、VOC活用の全社浸透

1st StepでVOCを活用することの成功事例が少しでもできたら、それを横展開して広げていくことが次のStepです。本社部門以外でも、営業現場におけるモデル店舗を設置した試行展開等により、成功事例を蓄積していくことができれば、お客様の「生の声」の質、量を共に高めることにつながっていくでしょう。

「保険商品」を製造、販売し、そしてお客様のアフターフォローをする企業という観点からは、保険会社も決して特殊なビジネス・モデルではないはずです。他の業界と同様に、新商品・サービス開発等に向けて、「お客様の声」を活用する仕組みを整備し、トライ&エラーを繰り返しながら実践していくことが、今後の競争を勝ち抜くための差別化要因の発見につながるのではないでしょうか。

掲載されている情報は2010年12月現在のものです。内容は事前の予告なしに変更する場合があります。
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