掲載月 : 2011年12月
「Chanceプロジェクト※」スキームの一環として、セキュアな環境下で柔軟なプラットフォーム(PaaS)サービスを提供するコミュニティー・クラウド(参加地方銀行5行<以下、参加行>)で共同利用されるプライベート・クラウド環境の「Chanceクラウド」が構築され、2011年8月に運用を開始しました。
Chanceクラウドは、今後ますます増加が予想される分散システム基盤の効率化とコスト削減を目指し、日本IBMのクラウド技術を活用した共同利用型システムの新たなスキームを確立しようとしています。
※株式会社常陽銀行(以下、常陽銀行)、株式会社百十四銀行、株式会社十六銀行、株式会社南都銀行、株式会社山口フィナンシャルグループの地方銀行5行が参画するシステム共同化プロジェクト
分散系システムの共同化を求めクラウドへのアプローチを開始

常陽銀行
執行役員
システム部長
鶴田 明氏
金融業界を取り巻く環境が厳しさを増す中、リテール市場での顧客獲得競争は一段と激しくなっており、地方銀行においてもIT技術を活用した競争力の強化は欠かせません。
Chanceプロジェクトでは、株式会社三菱東京UFJ銀行(以下、三菱東京UFJ銀行)が開発した基幹業務システム(預金や貸付などの勘定系、インターネット・バンキングなどのチャネル系、データ
分析などの情報系)を活用するとともに、参加行のニーズを反映させた多様な新機能を共同開発し、共通基盤の上に実装していくことを基本方針としています。従来の業務単位や参加行単位によるシステム保有から脱却することでITリソースの利用率を向上し、煩雑化の一途をたどる運用管理の簡素化を目指します。
しかしながら、昨今のビジネス環境変化に伴い、システムニーズも大きく変化しています。常陽銀行執行役員システム部長 鶴田 明氏は、参加行を代表して以下のように述べます。
「従来はホスト業務を中心にシステムの共同化を考えればよかったのですが、昨今では分散系システムも含めた検討が必要になっています。同様に、各行が個別に保有している分散系サブシステムも増加の一途をたどっています。これらのシステムの維持・管理のために費やされている作業負荷を軽減し、運用コストをいかに低減していくかが急務となっているのです」
そこで参加行が着目したのが、クラウド技術の活用です。
「分散系システムの領域においても、クラウド・コンピューティングの最新技術をベースとした共通インフラを構築することでコスト低減を図り、さらにエンタープライズ・アーキテクチャー確立を展望しつつ、ますます増加が見込まれる分散系システムも含めた全体最適化を実現していく考えです」と鶴田氏は話します。
コミュニティー・クラウド環境を支えるPaaS型のサービスを提供

三菱東京UFJ
銀行
執行役員
システム部
部長
中森 行雄氏
Chanceプロジェクトにおけるクラウド技術の活用には、これまで基幹業務システムを共通基盤として提供してきた三菱東京UFJ銀行も同じ思いを持っていました。同行執行役員システム部部長 中森行雄氏は、このように話します。
「参加行様、当行、日本IBM様が三位一体となってChanceプロジェクトを発展させていく中で、分散システムへの取り組み強化は喫緊の課題であると認識しています。また、コア・バンキング業務を共同化するChanceプロジェクトならではの特性や、金融機関としての可用性に対する強いニーズを反映したセキュアなサービスをどうやって実現していくのか。クラウド・コンピューティングに関するノウハウの提供や展開を含め、当行の立場からどんな貢献ができるかを模索していました」
Chanceプロジェクトは、今後も増加が予想される分散型システムの効率化とコスト削減を目指し、共同利用型システムの新たなスキームを確立するという方針を打ち出しました。こうして2011年4月に構築を開始したのが、コミュニティー・クラウド環境におけるPaaS(Platform as a Service)型のサービス「Chanceクラウド」です。
ハードウェアやソフトウェアなどのITリソースを、日本IBMの堅牢なデータセンターからネットワーク経由で参加行に提供。使用量に応じて課金するとともに、システム基盤の運用・保守・管理のサービスも提供します。具体的には、下記のような多岐にわたるクラウド技術の統合により構成されています。
- ハードウェア/OS/フレームワーク/ミドルウェアまでのレイヤーを仮想化し、アプリケーション層から分離された標準的な基盤(プラットフォーム)を提供。
- ブレードサーバー(IBM BladeCenter)、アプリケーション・サーバー(IBM WebSphere Application Server)、データベース・サーバー(DB2)など、信頼性の高いIBMテクノロジー製品を組み合わせてインフラを構成。
- 堅牢なIBMデータセンターの活用によるプライベート型クラウド基盤。
- 仮想化テクノロジー(VMware ESX Server)の採用によるフレキシビリティーの確保。
ミッション・クリティカルな「電子記録債権システム」に適用
図 Chance(地銀システム共同
化)プロジェクト2011年8月に運用を開始したChanceクラウドは、三菱東京UFJ銀行より提供されるミドルウェアを標準サポートし、第一弾としてミッション・クリティカルな制度対応業務の1つである「電子記録債権システム」に適用されました。
「金融業界でも前例のなかった地銀共同化クラウドへ初めて取り組む中で、参加行様との意見調整をはじめ、システム可用性を極めて高いレベルで確保するクリティカル・ファクターへの対応など解決すべき課題は山積していました。しかし、それらの苦労を乗り越え、業界に先鞭をつけることができたと自負しています」と、日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業 理事 加藤 洋は話します。
そして現在、Chanceクラウドは、プライベート・クラウドのメリットである高いセキュリティー、パブリック・クラウドのメリットである従量課金、さらには共同利用によるコスト削減という3つの効果を相乗的に発揮させる画期的なスキームのもと、下記のような多くの価値を参加行に対して提供しています。
- Speed(迅速な対応)
OSやミドルウェアなどの各種パラメーターを標準化した上で設定し、それを選択するだけで仮想サーバーを起動できる仕組みを確立。参加行の経営スピードに即した迅速なIT資源提供の実現を図ります。 - Cost(コストの抑制)
仮想化テクノロジーの採用と基盤共通化によってITリソースの利用効率を向上させるとともに、標準化設計に基づいた個別業務単位での設計・開発負荷軽減を図ります。 - Quality(品質の追求)
将来的な稼働アプリケーションの特性・重要度に応じたサービス・レベルを設定し、サービス品質の確保を図ります。 - Flexibility(高い自由度)
提供するITリソースの拡張および縮退への柔軟な対応を実現するとともに、利用度に応じた課金とすることで、参加行におけるIT投資の最適化を図ります。 - Security(堅牢なセキュリティー)
プライベート型のクラウド・サービスとして、日本IBMの堅牢なデータセンターを機軸としたセキュア・プラットフォームをアウトソーシングにて提供します。
より広範な業界クラウドとして間口の広いサービスを展開
Chanceプロジェクトは、2011年10月に株式会社北九州銀行が参画。2012年1月には株式会社もみじ銀行が新たに加わり、7行体制に拡大する計画です。
「そうした中で今回構築したChanceクラウドを、システム共同化における標準環境として持続的に発展させていくことが、Chanceプロジェクトの発展の一助にもなるというのが、参加7行様、日本 IBM様、そして当行に共通する思いです。勘定系を中心とした従来の共同化エリアにとどまらず、新たな分散系サブシステムへChanceクラウドを適用促進していくことが、Chanceプロジェクトの成長に寄与すると考えます」と中森氏は話します。
「三菱東京UFJ銀行様から今後提供される、地方銀行にとっても有効な業務システムについては、効率的かつ迅速にChanceクラウドに実装したいと考えています」と鶴田氏は話します。
また、加藤は今後の展開について次のように話します。
「Chanceクラウドのリリースが契機となって、メインフレームだけでなく、Linuxに代表されるオープン系についても将来の積極的な活用の道筋ができました。将来的にはChanceプロジェクトの枠組みを超える、より広範な業界クラウド(金融機関クラウド)としての利用も視野に入れた展開も考えられるでしょう」
こうして端緒が開かれたChanceクラウドは、参加7行の新たな成長戦略の礎になろうとしています。
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