掲載月 : 2011年12月
インターネットによる社会の変化は今も急速に進んでいます。ソーシャル・メディア(SNS)の影響力が増しているとともに、日本の電子商取引の規模を表すB2C-EC市場規模は、対前年度比10%の伸びを示しています(2009年度。市場規模6.7兆円)。※1 これらが統合して、顧客と企業とのパワーバランスが変化し、その接点は多様化しました。銀行においてもインターネット・バンキングを利用した顧客との関係深耕が図られるべきであると考え、IBMでは銀行顧客の現状意識を把握するためにインターネット調査を実施しました。
Smarter Commerce=顧客と企業のバランスの変化
ソーシャル・メディアが社会に影響力を与えたり、市場規模が拡大していく背景には、インターネットが世界の各地まで入り込み、先進諸国では家庭でも普及し使い勝手も良くなり、さらにはスマートフォンに代表される高機能高帯域小型端末(デバイス)を多くの人が持ち歩くようになってきたことが挙げられます。一方、リーマンショック後の経済状況、エコな社会の探求、日本では東日本大震災などの影響を受け、社会環境も大きく変化しています。これらの変化が融合して、顧客と企業とのパワーバランスが変化し、接点が多様化しました。こうして、顧客が購買活動の中心に立ち、高度化したさまざまなツールを駆使して世の中に溢れるありとあらゆる情報を「賢く」利用するようになりました。
その高度な要望に迅速かつ柔軟に対応することを目指し、IBMは「Smarter Commerce(スマーター・コマース)」というビジョンを掲げています。それは、すべての業務において企業が「顧客中心」の考え方を取り込み、購買行動・履歴から得た洞察をバリュー・チェーン全般にわたって反映させ、迅速かつ柔軟な対応を可能にする、という考え方です。
「賢い」顧客へのアプローチ
図1 どのくらいの頻度でインター
ネット・バンキングを利用します
か?の拡大図
図2 取引銀行からの電子メール
などで表示されるメッセージを
ご覧になっていますか?の拡大図
図3 自分の興味やニーズを銀行
に伝えますか?の拡大図
銀行業における顧客と企業のバランスの変化を調べることを目的として、インターネット・バンキングにおける商品販売についての課題と利用者の期待を把握するために調査を実施しました。調査の概要は次のとおりです。
- 【調査方法】インターネット上でのアンケート
- 【実施日時】2011年8月5日~8月9日
- 【調査対象】全国20~69歳の一般男女(個人)
- 【回答者数】4,016名
調査結果によると、インターネット・バンキング(以下、パソコンで操作するインターネット・バンキング、携帯電話やスマートフォンで操作するモバイル・バンキングを含めてインターネット・バンキングと呼ぶ)を月1~3回以上の頻度で利用するという人は全体の51%であり、年数回程度の頻度での利用まで含めると73%となります。(図1)
年数回以上の頻度で利用する人たちを対象に調査を進めてみると、今後、金融商品購入チャネルとして64%がインターネット・バンキングを検討しているという結果が出ています。その理由としては、「店頭では時間や手間がかかる」こと、「自分のペースで検討・購入したい」ことなどを挙げています。
一方、銀行からの電子メール、インターネット・バンキング・サイト上での個人宛メッセージが読まれている割合は、「すべて必ず読んでいる」、「できるだけ読むようにしている」、もしくは「自分の関心が高いもののみを選択して読んでいる」という人が87%となり、非常に多くの人が関心を寄せているという結果を示しています。
しかしながら「自分の関心が高いもののみを選択して読んでいる」人が37%に上るというのもまた事実です。(図2)
インターネットによる銀行からの情報提供に何を期待するかという問いについては、インターネット・バンキングを年数回以上の頻度で利用する人たちのうち24%の人が「案内される分野や頻度を自分で選択できること」を挙げています。また、「これまでの取引に基づく、推奨商品サービス」を案内してほしい、または「案内される分野や頻度を自分で選択できること」が必要だという人たちのうちの約半数は、「自分に有効な情報を得るためには、積極的に興味やニーズを銀行に伝える」と言っています。(図3)
この調査結果から導けることとして、次の2点が考えられます。
- 顧客へのメッセージの有効性を高めるには、顧客の関心に沿ったメッセージを送ることが必要
- 顧客の関心事項を積極的に尋ねることが必要
顧客の関心をお尋ねするというアプローチ
この2点を実現するためには、顧客へのメッセージを金融商品分野(例えば商品種別の「投資信託」、「外貨」、「住宅ローン」など。さらには投資信託商品を細分化できるとも考えられます)ごとに分割することが必要と考えます。そして、今までの取引内容から得られた情報で年収、職業、性別、家族構成などでモデルを作り、モデルごとに金融商品分によるメッセージを決めています。金融商品各分野のメッセージを顧客の関心分野と一致させ、顧客にインターネット・バンキングのサイト上やメールでメッセージを提示することは、「キャンペーン・マーケティング」と呼ばれてきました。
しかし、この精度をいかに上げていくかが従来からの課題でした。この解決策の1つとして挙げられるのが、顧客の関心分野を自動的に推定する「Webアクセス解析」です。顧客の行動、つまり銀行のホームページやインターネット・バンキングの閲覧状況や取引状況などから、その顧客の関心を推測します。例えば、ホームページトップ上にあるキャンペーンのリンクを押してそこに移り2分間キャンペーンの画面に留まった人は、同じリンクを押して3秒で別の画面に移った人より、そのキャンペーンに関心を持ったと推定されます。また、インターネット・バンキングで残高照会をして、投資信託購入取引に移り目論見書をダウンロードしてログオフした人は、その商品を購入する可能性があると推定されます。このような、顧客の行動に基づき得られたありとあらゆる情報を解析できるWebアクセス解析を通じ、顧客ごとの関心に従って表示するメッセージを変えれば、金融商品購入の最後の一押しになるかもしれません。
ただし、世の中に溢れる情報を活用し購買活動の中心に立つ「賢い」顧客が増えた現代においては、従来の発想では不十分です。前述のように、メッセージに期待を持っている顧客の半数は「自分に有効な情報を得るためには、積極的に興味やニーズを銀行に伝える」と言っています。それを利用し、インターネット・バンキングで顧客の関心分野をいつでも登録変更できる画面を作り、一人一人の顧客の声にお応えした対応が求められるのです。さらには、登録変更できる画面を利用して顧客の関心が変わった時点をとらえ、その時点から新しい分野のマーケティングを開始することも可能です。これらを「インタラクティブ・マーケティング」と呼びます。顧客の動き、反応に応じて、ダイナミックにメッセージ等を変えていく手法です。
Smarter Commerceの実現に向けて
こういった対応がSmarter Commerceのビジョンなのです。そして、実際にこういった対応を実現するソリューションの1つが、ソフトウェア製品「Unica」です。Unicaを用いることによって、複数のチャネルにまたがるマーケティング管理、電子メール配信管理、Webメッセージの管理などができ、顧客の関心を逃さない対応が実現できます。これ以外にもIBMではSmarter Commerceを実現する多くのソリューションを用意しており、既存のシステムにこれらのソリューションを組み合わせて、「賢い」顧客に対応していくサービス展開をご支援いたします。
※1 出典:経済産業省「平成21年度我が国情報経済社会における基盤整備」(電子商取引に関する市場調査)、2010年7月22日
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