掲載月:2006年6月
ソリューション概要
1996年の金融ビッグバン以降、保険業界は顧客行動の変化をはじめとするビジネス環境や行政の変化によって多くの影響を受けてきました。
今後さらに、グローバルな価格透明化や、金融商品の多様化と新規参入者による競争の激化、品質要求の高度化、少子化による既存商品市場の縮小など、保険業界は新たな対応を迫られることになります。
こうした状況下で保険会社の成長を支えるシステム構築の一手法として今、SOA(サービス指向アーキテクチャー)が注目されています。
成長に向けたITの課題と解決の方向性
ビジネス環境の変化に対して、追随するだけでなく先取りし競争を勝ち抜いていくためには、顧客行動の分析や顧客視点による商品価値の再定義、チャネル改革、業務プロセスの効率化が要求されます。
これらはどれも、明確に定義された業務要件に基づいた高度な設計がなされたIT基盤があって初めて実現できるものです。
しかし、保険会社のシステムは、永年の増改築による新旧テクノロジーの混在やシステム間の機能重複、相互作用の複雑化による影響範囲の広範囲化などが起こり、開発効率が低下する状況にあります。すなわち、従来の保守の限界を超えたビジネスサイドの開発要求と、システム自体のアーキテクチャーの改訂という、内外の課題を抱えているのです。
IT部門にとって、ビジネスサイドの要求への体系的な対応は基幹系システムのアーキテクチャーの根幹にかかわることです。現状からすれば、システム改訂ではなく基幹系の再構築を考えるのは当然のことですが、巨体化した既存IT資産の再構築はコスト面あるいは安全性の観点から正当化しにくいのも事実です。
この難題に対する答えは、「ビジネスサイドの要求を満たし続けることができるアーキテクチャーに基づく基幹系を、現行システム外に新たに作ること」、そして、「現行の基幹系はそのまま稼働させ、その機能を新基幹系は自身の機能の一部として利用すること」です。
つまり、アーキテクチャーを革新した新基幹系を構築し、従来どおり稼働する既存の基幹系システムを、新基幹系のシステム機能の提供機構とすることです。この構築を可能とするのがSOAだと考えられます。
SOAが解決策である理由

図1 設計例
ビジネスとシステム構造がシームレスにつながり、ビジネスの要求をシステム化しやすい。
SOAは、システムのサービス(トランザクション・サービス)を部品として用意し、コリオグラフィー(プロセス・サービス)に従って動的にトランザクション・サービスを呼び出すことにより一連のプロセスを実行するという構造です。この構造はビジネスの構造と対応性がよく、しかも柔軟です。
まず業務設計として、ビジネス・プロセスを業務のフローとして設計し、フローの中での一つひとつの業務上のアクティビティーを「何をどうする」という様式で設計します。そこからシステム化対象を識別し、ビジネス・プロセスはコリオグラフィーに、アクティビティーはトランザクション・サービスに写像します。
コリオグラフィーは、動的なワークフロー・システムとして、あるいは効率を優先した静的な(連係編集された)一連のプロセスとして実装します。
アクティビティーは、データ項目とそれに対する操作、つまりオブジェクトとして実装することができます[図1]。
SOAの設計手続きは、業務設計とアプリケーション要件定義のシームレスな接続が図られ、両者の効果的な意思疎通は業務とシステムの設計局面での効率を高め、ビジネスサイドの要求のスピーディーで確実な実装を担保します。
サービス要求とサービス提供が標準化されており、プラットフォームの構成に依存しない。

図2 新基幹システム
SOAの構造は物理的なシステム構成に柔軟さを与えます。
それぞれのサービスが稼働する最適なプラットフォームに載せてESBと呼ばれるサービスバスに接続すれば、見かけ上ひとつのシステムとして機能することになるからです。
SOAの標準に従っていれば、自社内の複数のサーバーや外部のアプリケーション提供業者の機能をそのまま統合してひとつのシステムにまとめることができるのです[図2]。
既存IT資産をサービスとしてラッピングすれば、トランザクション・サービス、ファンクション・サービスとして再利用できる。
SOAのプラットフォームに依存しない構造は、どこに置かれていてもSOAのサービスであれば見かけ上の単一システムの部品として機能できる、ということです。ここで言う「SOAのサービス」とは、標準インターフェースとなるWSDL(Webサービス記述言語)をもってESBにアクセスできる部品のことです。
したがって、既存システム上のトランザクションをSOAのインターフェースを提供するソフトウェアでラッピングすれば、既存のトランザクションが既存システム上に置かれたまま、SOAで構築されたシステムからSOAのサービスとしても利用できることになります。
現行の基幹系をそのまま稼働させた状態で、その横に新基幹系をゼロから設計して既存のものを利用すれば、既存ITシステム上の既存機能を新基幹系で再び作り直す必要がなくなることになります。新基幹系に利用される現行トランザクションは、改訂や保守のタイミングで新基幹系の中の「ネイティブな」サービスとして再作成すれば、新たな投資を最小限にした「遷都方式」の移行が実施できます。
SOAによるアプローチの前提
こうして見ていくと、SOAこそが保険業界を取り巻く課題をIT側から解決する切り札のように思えますが、ビジネスとITのシームレスな連携の前提として、ビジネス要求を定義したビジネス構造モデルが必要です。
この点に関しては、IBMが開発した保険業務の分析・設計のためのフレームワークであるIAA(Insurance Application Architechture)をお使いになることをお勧めしたいと思います。多くの保険会社での実践的使用による洗練を経たIAAは今後のSOA構築の基本的指針になると考えます。
SOAはIAAとの双輪で業務変革の強力な車輪となり、新たな基幹システム構築に寄与します。駆動させるエンジンとなるのは—皆様の叡智にほかなりません。
本事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
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