掲載月:2007年6月

図1 全体の構成
IBMはこのたび、保険のSOAについて「ITレベル」から「ビジネス・レベル」へ、その実現レベルをステージアップするための新たなソリューションとして、WBSF(WebSphere® Business Services Fabric)とCBS(Composite Business Services)をリリースしました[図1]。
WBSF(WebSphere Business Services Fabric)
WBSFはビジネス・レベルのSOAシステム実現のための、総合的な開発および実行環境を提供するミドルウェアです。
そのキー・テクノロジーは二つ。一つは、既存のバックエンド・ビジネス・アプリケーション機能や新規のビジネス・ロジックを「サービス」として取り扱うための、ビジネス機能のメタ・データ管理の仕組みです。たとえば「システム利用者(ユーザー)や商品(種目)による業務プロセスの分岐」といった要素を従来のようにビジネス・ロジック内に分岐ロジックとして開発するのではなく、メタ・データ管理の仕組みに組み込むというのが基本的な構造です。これにより、本質的な業務プロセスと分岐ロジックを分離し、業務プロセスの再利用が可能となることを狙うものです。
もう一つは、サービスを利用する側からの要求に対してダイナミックにビジネス・ロジックの実行システムを振り分けるエンジンです。WBSF自身はビジネス・ロジックを提供するのではなく、どの既存ビジネス・ロジックや新規ビジネス・ロジックの機能を使用するのかを、前述のサービスのメタ・データを基にして制御する役割を担うものです。これにより、既存システムの機能(資産)を生かし、SOAを実現することが可能となります。
WBSFはその他、業務プロセスのモデリングおよびサービスの生成、サービスの構成管理・パフォーマンス管理などの機能を提供する複数の機能群から構成されています。
CBS(Composite Business Services)
CBSは、WBSF上で稼働するためのビジネス・ユーザー側にも理解できる意味を持つ粒度のサービス定義とそのテンプレート群・成果物群の総称です。CBSは、大きなビジネス・エリアの単位でセット化されています。現時点では「損保自動車保険見積」および「損保ホームオーナーズ保険見積」の二つが先行リリースされています。また今後、保険分野では「生保新契約」や「事故受付」などが、さらに銀行などの他の業種に関する拡張も計画されています。
CBSは、前述のように、ユーザーや商品の色を持たない本質的な業務(プロセス)の存在を前提としています。その上でその業務を提供するためのサービスを定義しています。たとえば「自動車保険見積」のCBSは、大きな3つのビジネス・サービスとして「見積処理サービス」、「料率計算サービス」、「申込受付サービス」から成ります。さらにそれらのサービスは粒度の小さな各種の「採番サービス」や「情報取得サービス」、「保存サービス」…といったサービス群から構成されています。
これらのサービスを定義の上、BPEL(Business Process Execution Language)、WSDL(Web Services Description Language)、EAR( Enterprise ARchive)ファイル、WAR(Web Application Resource)ファイルなど、一連のWebサービス標準に基づくアセット群が提供されます。
ただしIBMとしては、これらCBSをベースとしたSOAの開発のみならず、今後日本の保険のお客様に対し、新たにさまざまな他の業務領域についてSOA/CBS的な考え方でのシステム構築をご支援させていただくよう考えております。
WBSFとCBSの意義

図2 従来型との違い
WBSFとCBSを適用したSOAシステムにおいては、「ビジネス・サービス層」という新たなアプリケーション層が構成追加されることになります[図2]。
この層はいわば、システム・ユーザーと、既存アプリケーションや新規ビジネス・ロジックとを、抽象化した「業務サービス」で結び付けるものであり、前述のように本質的な業務プロセスとメタ・データとビジネス・ロジックの関係付けを整理する必要が出てきます。
WBSFやCBSを活用、または参照いただくことによって、そのような新たなシステム構造をより迅速・的確に設計・構成することが可能となり、ビジネス・レベルのSOA構築の実現性を高められるものと期待されます。
またそれによって、従来はIT部門の方でなければ理解が難しかった「サービス」の概念を、ユーザー部門の方にも理解しやすいものとすることが可能となってきます。
「ビジネス・レベル」のSOA
保険業界は今後、ビジネス拡大と競争勝ち残りのための販路/販売チャネルの拡張がますます求められると同時に、業界として「保険」という不可視な商品をこれまで以上に適切に販売することが求められると考えます。ITの果たす役割も重要性を増し、現在よりもさらに量的・質的にビジネスをサポートする力の強化・拡大が求められます。従来のようなユーザー単位・チャネル単位でのシステム構造からの変革も必要となるでしょう。つまり、対象とするユーザーはますます増え、要求されるサービス・レベルも従来とは比較にならないほど高くなるなか、いかに迅速にきめ細かく対応できるようにするかが重要な課題であると考えます。
このような状況において、ユーザー部門にも理解のできる「ビジネス・レベルのSOA」は、取り組む価値のある一つの大きなテーマになり得るのではないでしょうか。ビジネス・レベルで本質的に業務プロセスやサービスを構築することは、それ自身、再利用できる業務機能を作ることに他ならないと考えられます。それは今までのような発想の、「入出力」中心ではなく、「情報と機能」を中心とした「サービス」としてのシステムを設計・構築することとも言えるでしょう。
海外からはすでに、Fireman’s Fund Insurance Companyにおいて、SOAベースのシステム構築により再利用性が大きく高まり、システム・リリースの迅速化が進んでいるという事例が報告されています。是非、ご検討ください。
本事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
本事例中に記載の肩書や数値、固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
IBM、IBMロゴ、WebSpherは、IBM Corporationの商標。
その他の製品名および会社名は、それぞれ各社の商標または登録商標です。
