掲載月 : 2011年6月
クレジット業界では、近年の非常に厳しい経営環境の中、収益基盤の建て直しが急務となっています。売上高向上のためには、適切にリスクを押さえた上での積極的な与信が不可欠ですが、最近、企業におけるリスク・モデルの判別に課題が生じており、保守的な与信対応とならざるを得なくなってきています。この原因として、1つには2010年6月の貸金業法完全施行により、顧客の行動が従来とは大きく変化していることが挙げられますが、もう1つ、近年台頭してきているWEBやモバイルでのサービスを利用する顧客の行動や、高速道路で使用するETCや電子マネーの利用状況などの情報を十分に分析しきれず、リスク管理に生かせていないといったことも考えられます。特に後者については、今後の途上与信管理のあり方にかかわる構造的な課題を示唆しています。
情報の分散化、売上単位でのリスク顕在化への対応の重要性
従来のリスク・モデルから導出するリスク・スコアは、大半の顧客をカバーする目的で、全顧客が共通して持つデータ項目から、全体傾向で見た「良さ」「悪さ」を数値で示します。リスク・スコアには、一時的な要因で上下激変して業務を混乱させないよう、月次集計や平均化したデータを用いています。
このことは、近年の商品サービスの多様化(ETCカード・電子マネー)やチャネルの拡大(WEB・モバイル)によって得られた特定領域に限った付加的な情報はリスク・スコアには反映できない、ということを示しています。個別のショッピング詳細情報(店舗の業種、品目等)も、その有無・粒度・定義が不統一なためリスク・モデルには適用できていません。
つまり、顧客サービスを多様化させればさせるほど、リスク・モデルでカバーする情報の範囲が相対的に狭まるというジレンマを抱えているのです。
また、従来の貸倒パターンは、キャッシング残高がクレジット・ラインに達した後、返済しきれなくなるケースが多く見られましたが、近年はショッピング枠を現金化して突然倒れるケースが増加するなど、月次集計データではとらえづらい、売上単位での動きの中にリスクの芽が潜むようになっています。これも、従来のリスク・モデルでは判別が難しい要素です。
リスク・スコアは、顧客の共通指標として今後もその重要性は変わらないと考えますが、上記のような情報の分散化、売上単位でのリスク顕在化の傾向は今後さらに強まることが予想される中、局所的でもきめ細やかで定常的に行えるリスク分析手法を確立し、迅速に業務ルールで対応する仕組みづくりが急務であると考えます。
異常値検知の活用によるリスク分析の効率化
こういったリスク分析においては、ETCや電子マネーの利用状況、ショッピングの売上単位のデータやWEBサイト上での動きといったモデル未適用情報を中心に、売上単位に近い粒度のデータを用いることを想定しています。また、分析サイクルの短期化も要請されます。
その際に課題となるのが、分析担当者の作業負荷です。通常業務が多忙であり気になる事象の分析に手が回らない、というのが現状です。新たなリスク・パターンを見つけ出す深掘り分析を行うためは、一般的な分析手法やツールでは、担当者の増員が必要になりかねません。
図1 多次元異常値分析の意義そこで、データの異常値(外れ値)が生じている顧客に絞って深掘り分析を行うことが重要となります。特定の顧客層内での平均的なリスク傾向は、概ねリスク・スコアに反映されていると想定されますが、平均から大きくかけ離れたデータを持つ顧客は、当該顧客層とは本質的に異なる特性を持っているものが混入したか、特性が変質してしまっている可能性があります。このような顧客は、リスク・スコアを裏切る可能性も高いと考えられます。つまり、異常値分析はその弱点を補強するのに適した分析アプローチなのです。
ただし、単一変数での異常は特殊事情に基づく可能性も高く、複数データ項目にわたって異常性があり、かつ、分析担当者が業務的な意味で「リスクあり」と理解、説明できるパターンのみが有効になります。(図1)
多次元異常値分析の操作性の高さが特徴の異常値検知ソリューション(EPMS※1)
このような分析では、担当者は何通りもの変数の組み合わせについて、業務上の意味を念頭に置きながら、次々と「試す」作業を繰り返すことになります。危険な気配を感じるパターンはすぐに記録して次を試し、その後の状況は後日一覧で確認して、結果が「リスクあり」と説明できるもののみを業務ルールとして対応する流れになります。気になるパターンをいかに数多く確認できるかがポイントです。
分析担当者の負担軽減のためには、こういった一連の作業プロセスを想定して開発された、操作性の高い多次元異常値分析専用ツールの導入が効果的と考えます。
図2 (EPMSの特長)高度なグラ
フィカル・ユーザー・インター
フェース

図3 (EPMSの特長)ルール(
候補)の該当先一覧化(765KB)EPMSはまさに、異常値(不正)検知担当者の生産性向上のために開発された専用ツールであり、主に診療報酬の不正請求チェックや納税監査、製造業の不良品検査の現場で、多数の導入実績があります。特長としては以下のとおりです。(図2、3)
- 強力な多次元異常値分析機能
- 視覚的にデータ状況を把握しやすい高度なグラフィカル・ユーザー・インターフェース
- スコアリング・ランキング→変数追加→散布図表示・(散布図上で)閾値設定→ルール(候補)登録 というスムーズな流れでの操作性
- 登録したすべてのルール(候補)の該当先一覧化
- ルール(候補)該当時のアラート表示
- セグメンテーション機能を使ったルール抽出
EPMSには、汎用統計ツールにはない高いユーザビリティーがありますので、担当者が分析結果の業務上の意味を考慮して進める作業の効率化に大きく貢献します。
なお、分析の結果抽出された新たな知見は、迅速に業務ルールに反映しなければ、企業として成果を得ることはできません。柔軟な業務ルールの調整のためには、BRMS(業務ルール管理システム※2)の導入とルール・ガバナンスの検討が不可欠だと考えられており、これを併せて検討することが重要です。
※1 EPMS:Entity Profiling and Management System
※2 BRMS:Business Rule Management System
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