掲載月 : 2011年6月
昨今の厳しい経済環境、他業界からの金融サービス進出、企業合併や統合の加速など、金融ビジネス環境はますます厳しさを増しています。そういった環境下では、企業同士が連携することで経営を強化する「ビジネスECOシステム」という考え方が注目されています。ビジネスECOシステムとは、金融機関間で業務を連携させることで、顧客サービスやその処理を強化・拡充することです。これにより、顧客にとって効率的かつ効果的な金融サービスの提供を実現し、金融機関自身の企業体質の強化を図り、より企業の競争力を高めていくものと考えられます。
日本IBMでは、ビジネスECOシステムのコンセプトの具体化に向け実証実験を2009年に行い、他行・他社で提供される、魅力的で競争力のある金融サービスを、自行・自社の顧客に自行・自社の金融サービスとして提供するスキームを実現可能なものとしました。これを「フィナンシャル・プロダクト・ハブ」と呼び、そこではパッケージ「Service Platform for Rapid Enterprise Agile Driver」(以下、「SPREAD」と略)を用いています。
「フィナンシャル・プロダクト・ハブ」によりもたらされる価値
日本全国の個人および法人の顧客に対して継続的に幅広い金融サービスを提供し続けることは、金融機関にとって非常に重要なことです。しかしながら日々進歩する金融サービスやIT環境の下では、対応すべき商品の範囲や種類が拡大し、金融機関にとっての負担が増大してきています。そこで今後の少子高齢化社会やグローバル社会なども鑑みると、“顧客”、また多種多様な先進的なサービスをいち早く取り入れている“金融機関”(メガバンク、海外金融機関など。以下、「商品開発元金融機関」と記載)、そして企業間連携により効果的なサービスを効率的に顧客へ提供したいと考える“金融機関”(地域金融機関など。以下、「商品活用側金融機関」と記載)、この三者それぞれの立場から見た課題として以下のポイントが考えられます。
【顧客】
新しい金融商品やサービスを安心して利用できる環境が、自らが選ぶ金融機関にあるとは限らない
資産運用のポートフォリオを考慮した金融商品のラインナップは今後も変化、多様化していくと考えられ、金融機関において、その選択肢や、検討のための十分な情報提供やセールス活動がなされない場合が想定されます。そして高齢の方や富裕層の顧客に向けては、リレーションの強い地域金融機関において、提供が可能な商品が限定的に提供されてしまう可能性があると考えられます。そこで、広く商品開発元金融機関の商品を商品活用側金融機関にて提供できれば、顧客の利益につながります。
【商品活用側金融機関】
広範囲の商品やサービスを開発・維持し続けるには負担が大きい。
しかし顧客には幅広い商品サービスを提供したい
収益の拡大は見込めても対応に莫大な投資が必要であったり、対応のための要員や組織体制などが十分でなかったりする場合が考えられます。そこで個々の商品やサービスに独自で開発を加えたり、パッケージを購入することなどでかかる投資よりも、迅速に効果的に商品提供を実現できるというメリットがあります。また収益の拡大にもつながります。
【商品開発元金融機関】
投資、開発した(する)商品サービスの取引先を広げ、一取引当たりのコストを低減したい

図1 (ビジネス・モデル概要)
フィナンシャル・プロダクト・
ハブ (620KB)すでに提供している商品や今後開発予定の新しい商品サービスを、連携が可能な商品活用側金融機関に提供することで、投資の効率化や回収の早期化、さらには新たな収益源の確保が可能となります。
この三者三様のニーズをすべて満たすスキームが、「フィナンシャル・プロダクト・ハブ」となります。(図1)
「SPREAD」フィナンシャル・プロダクト・ハブを実現する金融機関商品サービスの連携基盤

「SPREAD」概要 (550KB)日本IBMでは金融機関における新商品・サービス開発、提供の柔軟性向上を目指し、その実現手段をSOA(サービス指向アーキテクチャー)に基づくソリューション群として体系化しています。SPREADもSOAを活用した基盤の上に構築しているため、提携商品やサービスの追加や変更、また提携先の増加などに柔軟かつ迅速に対応できます。そして近年の金融業界と決済システム・インフラでの国際化、標準化の流れに着目し、ISO20022標準を参照して設計開発を実施し、国際標準に準拠する新業務や新しい業務取引に整合性を持った拡張が可能となっています。また、接続する金融機関の負担、チャネル開発対応負担を軽減するため、WEBインターフェースと金融機関のインターネット・バンキングなどのサーバーとの直接接続をも考慮しています。これによりインターネット経由でのチャネルだけでなく、富裕層顧客やご高齢の方にもローカウンターや特定の店舗などでの銀行員応対を
合わせたチャネルの準備が可能となるような基本設計を行っています。
スキーム実現の具体的動向
昨今の為替動向などの影響もあり、また多くの投資、資産運用のアドバイスなどでも、今後の資産運用ポートフォリオの中では外貨での資産運用の割合が増加していくと考えられています。当面は外貨預金がその割合を増加させていくと思われます。しかしながら、例えば地域金融機関で提供されている商品メニューと、メガバンクや海外金融機関などでの商品ラインナップや、その利率、為替レートなどでは差異があり、顧客ニーズとの不一致が起きている場合がある(逆の主張としては、商品サービスを提供すれば反応がある)との観測があり、IBMではここを、フィナンシャル・プロダクト・ハブが活用できるサービス領域のひとつと見ています。またそれに続く領域としては海外送金、外国為替など規制やガイドライン対応、サービス維持に負担の大きいエリアなどが考えられます。このほかに海外での事例としてはCMS、TMSやサプライチェーン・ファイナンス、貿易金融などの領域において、ホワイト・ラベル・サービス(顧客の接点となる金融機関ブランドでのサービス提供)が実施されたり、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を用いた対応がなされたりしています。今後は日本においても、業務領域と、各金融機関様の拠点地域や関連の深い金融機関様グループなどの状況により、経営資源の選択と集中手段のひとつとして対応が進むと想定されます。
ご参考:プレスリリース
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