掲載月:2008年3月
マネー・ローンダリング対策を推進する機関である、金融活動作業部会(FATF:Financial Action Task Force)の対日審査が本年3月に実施され、FATFが国際基準として策定した「40の勧告」への遵守状況の審査が行われました。これを契機に、グローバルな金融機関だけでなく、国内の金融機関に対しても、当局からマネー・ローンダリング対策の強化が求められると予想されます。
IBM グループは、海外でのマネー・ローンダリング対策のトップ・ベンダーとしてのノウハウを日本の複数の金融機関にすでに提供しており、これから対応を開始される金融機関にも、具体的な提案を実施しています。
国内外における規制動向、高まる対応への強化
マネー・ローンダリング対策は2001年の米国同時多発テロ事件を契機に、米国愛国者法(USA Patriot ACT)が施行されるなど、規制が強化されてきました。また、FATFが各国の審査を実施し、取組状況が不十分と判断された国では対応強化の取り組みが行われています。2004年に審査を受けたオーストラリアでは、40の勧告のうち、12しか遵守できていないとの評価を受け、2006年にCTF法(Counter Terrorist Financing法)が制定されました。CTF法では、24時間以内に疑わしい取引の報告を求めるなど、一部にPatriot ACTよりも厳しい内容となっています。
一方、日本の対策は、欧米の金融機関に比べて立ち遅れている感があります。例えば欧米メガバンクでは、疑わしい取引の調査業務に数十人規模の要員が携わっているのに対して、日本の銀行では欧米ほどの態勢にはなっていないのが現状です。すでに大規模金融機関では本格的なマネー・ローンダリング対策が始まっていますが、多くの金融機関は今後の課題と位置づけています。
FATFの審査結果が今後どのようなものになるかはわかりませんが、中長期的には欧米並みの態勢構築が求められるようになるかもしれません。
マネー・ローンダリング対策の全体像

図1 AMLアプリケーション群
マネー・ローンダリング対策を進めるためには、ベンチマークとして、欧米での取組状況を理解することが有用です。
欧米で実践されている典型的なマネー・ローンダリング対策は、以下のように機能別に分けられます。
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リスク・アセスメント
金融機関ごとに、顧客や商品・サービスの観点から、どの部分にリスクが高いかを分析します。この結果は、リスクの高い部分を重点的に管理する「リスク・ベースド・アプローチ」の考え方の基準となります。 -
KYC(Know Your Customer:顧客確認)
本人確認と顧客リスク・スコアリングを行います。顧客リスク・スコアリングは、口座開設時や定期的な見直し時に利用され、スコアに応じた顧客管理が行われます。 -
トランザクション・ブロッキング
ブラック・リストを基に取引を監視・停止させるリアルタイムの処理です。 -
トランザクション・モニタリング
疑わしい取引を事後に見つけ出す処理です。 -
ケース・マネジメント
上記のさまざまな処理結果として発生するアラートを受け、顧客や口座を調査・分析するためのプラットフォームです。 -
届出・報告
調査・分析の結果、疑わしいと最終判断された顧客や口座を、警察庁に紙や電子ベースで報告します。 -
AML※1プログラム
マネー・ローンダリング対策を実践するための組織、業務プロセス、報告体系、文書化などのガバナンス構築を行います。
これらのマネー・ローンダリング対策の中で、現在注目されているものがトランザクション・モニタリングであり、欧米で実績のあるパッケージを日本語化して導入する方法が有望とされています。他社での使用によりパッケージの採用基準を客観化できること、あるいはマネー・ローンダリング対策は収益を生み出す業務ではないため、他社と
の差別化ではなくノウハウや考え方を共通化することで相互にメリットを得ようという考え方がその背景にあります。実際に、欧米ではパッケージが集約されつつあり、主要パッケージがユーザー数を増やしています。
また、パッケージ・ベンダーの方向性として、One Stop Shopping化が挙げられます。KYC、トランザクション・モニタリング、ケース・マネジメントといった各機能を連携させることで、システム導入時のインテグレーション負荷が下がり、データの収集や変換作業も一元化されれば、システム投資の効率化が期待できます。
トランザクション・モニタリングにおける手法

図2 トランザクション・
モニタリング・システムの
分析イメージ
トランザクション・モニタリング・システムで用いられる主要な手法として、ルール・ベースとプロファイリングという手法があります。
「ルール・ベース」とは、マネー・ローンダリングの手口に着目して、手口の一つ一つを "If then else" の形式で記述し、その条件に合った取引や口座を検知する方法です。
「プロファイリング」は、平均値や標準偏差といった統計量を使って、異常な取引や口座を検知する方法です。1つの口座の過去の振る舞いと現在の状態を比較分析する「アカウント分析」と、似た属性の取引や口座をグループごとに分類し、そのグループ内でプロファイリングする「ピアグループ分析」があります。
ルール・ベースは理解しやすく、説明性が高いというメリットがありますが、手口の網羅性に欠ける、ルールのメンテナンスが大変であるといったデメリットがあり、それ
を補完するためにプロファイリングが登場してきた経緯があります。今後は両者を組み合わせた総合的な検知が必要となってくると考えられます。
パーティー分析パッケージ

図3 IBM Entity Analytic
Solutions
KYCやケース・マネジメントに利用できるツールとして、IBM EAS(Entity Analytic Solutions)をご紹介します。
EASでは、同一人物分析(Who is Who)機能と、人物関連性分析(Who knows Who)機能が提供されます。
「Who is Who機能」では、同一人物であっても、異なる読みや異なるつづりとして入力されたデータに対して、同一人物である可能性を問題発見的に分析することができます。また、「電話番号が同一、かつ、名前が似ている」といったルールを設定することで、同一人物分析をすることも可能です。同一人物分析ルールは、多数のデフォルト・ルールがパッケージに内蔵されており、Who is Who機能を使って、犯罪者と顧客との間の高度な同一人物分析が可能となります
「Who knows Who 機能」では、関連者ルールを用いる方法や、関連者の関連者は関連者であるといった分析方法により人物の関連性を分析します。
このような機能を使って、犯罪者との類似性や関連性を分析し、KYCスコアリングやケース・マネジメントでの調査・分析などに活用することができます。
マネー・ローンダリング対策は、ビジネスとシステムの両面での対策が必要です。IBMグループでは、対策のためのロードマップ作成、業務要件定義、パッケージ選定、シス
テム導入といったエンド・ツー・エンドのサービスを提供しています。そして、先行する海外でのノウハウを生かし、日本の金融機関の皆様の個々のご要望に応じた取り組みを
ご支援いたします。
※1 AML : アンチ・マネー・ローンダリング
本事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
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