掲載月 : 2009年3月
中央三井インフォメーションテクノロジー株式会社(以下、CMIT)は、中央三井トラスト・グループの一員として全体最適の視点から投資対効果が得られることを目的に、中央三井信託銀行株式会社の分散サーバー統合バックアップ・システムを構築しました。斬新なアイデアで既存のテクノロジーを効果的に組み合わせたことによって先進性を生み出し、ワークロードの軽減と効率化、無駄なディスク資源の節減を可能にする、汎用性の高い共通基盤を実現しています。
さらなる向上を目指した分散系業務システム
業務の高度化とサービス・レベル向上の要求が高まるにつれ、分散系業務システムが果たす役割はますます大きくなっています。業務の追加要求に応じて導入されてきた各業務システムは、他のシステムと並存する中で異なる成り立ちやプラットフォームを持ちつつ、データ処理量の増大やデータ保全など、より複雑な要求や制約への対応を一様に求められています。
その解決手段の一つとして、業務システム単位のライブラリー環境構築と運用負荷の軽減、そしてリソース集約を実現するバックアップ・システム(以下、「旧システム」と記述)を以前から構築・運用してきました。しかし、取り扱う業務システムが拡充するにつれ、下記の課題が顕在化してきました。
- マルチプラットフォーム接続性の向上
業務システムのアダプターやOS、ソフトウェアの相性による参加対象の制約を緩和し、より汎用的なインターフェースを実現する - リソースの共有化
ドライブ、テープを業務システム専用に割り当てる必要性から、資源が不足しやすい点を見直し、資源の有効活用を図る - 基盤ソフトのバージョン制約からの解放
「旧システム」のバックアップ・ソフトの適合OS条件が制約となり、新たな業務システムへのエージェント導入が困難となっていた点を解消する - コストの低減
対象業務システムの増加に伴い負担となってきたバックアップ・ソフトの購入・保守費等を抑制する
優れたテクノロジーの効果的な組み合わせ

技術統括部 部長
貫洞 明彦氏技術統括部の貫洞明彦部長は、新システム構築について、次のように語ります。
「基盤のデザインで大切なことの一つは、まずは自由にアイデアを創生し、次に冷静に検証するプロセスだと思います。
今回の工夫の一つに業務サーバーとバックアップ・ディスク間の構成が挙げられます。ハード面では、あえてSAN(Storage Area Network)にせず専用LAN接続にして、より汎用的な接続性の向上を実現しました。ソフト面でも、あえてバックアップ・ソフトを使用せずOSコマンドで運用し、業務サーバーとの親和性、コストの圧縮、またメンテナビリティーの向上を実現しました。そして、これらのデザイ
ンを確定するにあたっては、一足早く実機で実現可能性の検討を行いました」
新しく構築した統合バックアップ・システム(以下、「統合バックアップ・システム」と記述)は、OSの機能とバックアップ・ソフト、NAS(Network Attached Storage)とテープ・ライブラリー、ギガビット・イーサネットLANとSAN、テープ暗号化の技術を組み合わせました。その結果、業務データのバックアップ処理の完了とテープへの落とし込みの連続性を実現するとともに、ディスクへの書き込みとテープへのバックアップ処理を明確に分業させ、バックアップ処理による業務への負荷影響を与えない機能を実現しました。

図 統合バックアップ・システム
概要
業務サーバー上で処理が完了したデータを、まず高速な統合バックアップ・システムのNASディスク上へ一時的コピーを行います。その後、業務サーバーから切り離し、安価で大容量かつ遠隔地保管も容易なテープへの書き出し処理を、正副二重に連動して行う仕組みです(Disk to Disk to Tape:以下、D2D2T)(図)。この構成によって、業務システムを拘束する時間の大幅な短縮と、データの冗長化の徹底という要件を両立しています。
接続性の向上とリソース有効活用の実現
業務サーバーとバックアップ・ディスクは、業務LANから独立したギガビット・イーサネットLANで接続されています。これにより、過去のLANでは見込めなかった200GB/時間以上のパフォーマンスを実現する一方、業務システム側での考慮がより少なく済む汎用的な接続環境を実現しています。
また、ディスク装置の機能によって、業務別の論理ボリュームを個別に設定してもハードウェア機能としてディスクを占有せず、有効活用することができました。
テープへのバックアップはライブラリーの制御や、世代管理など一般的なバックアップの要件があるため、バックアップ・サーバーを設置してバックアップ・ソフト(Tivoli® Storage Manager)を運用しています。統合バックアップ・ディスクからテープ装置へはSANで接続。Network Data Management Protocol(NDMP)による直接書き込み機能により、データ量の増大に伴うバックアップ・サーバーへの負荷も軽減しています。さらに従来は専用のハードウェアで行っていたメディアの暗号化も、テープ装置機能で対応することによって機器間の相性の課題を解消するとともに、バックアップ・サーバー上の専用ソフトによって暗号化鍵の管理も容易にしました。
エージェント依存からの脱却

技術統括部
分散技術グループ
サブマネージャ
志村直樹氏業務サーバーからバックアップ・ディスクへの一時コピーは、業務サーバーにおいてバックアップ・ソフトのエージェントを利用せず、NFS(Network File System)などの標準的なファイル・システムを介することで、OSコマンド等の一般的な方法で実現しています。
「ポイントは、テープ形態にこだわらず、業務システムのプラットフォームに左右されにくい方式を追求し、それを実装できるNASを採用したことと、D2D2Tの中間のDをキャッシュ・メモリー的に一時的なストックと割り切ってNASを利用したことです。
この結果、中長期的に同じ方式を継続して使えるという時間的な耐久性や、ディスクというリソースの増強の頻度が少なく済むなど、負担の軽減を図ることができたと考えています」
(技術統括部 分散技術グループ 志村直樹 サブマネージャ)
統合バックアップは一つの業務システムの新規開発と同時並行で構築し、運用を開始しました。簡潔で汎用的なインターフェースを開放していることから、その後の数カ月で早くも複数の業務システムに導入しました。また今後も多くの対象業務システムの追加が見込まれるなど、共通利用の輪が広がっています。
当プロジェクトのプロジェクト・マネージャーを務めたIBM金融第三システム部 アソシエイト・プロジェクトマネージャーの近藤昇久は、次のように語ります。
「NAS、バックアップ・ソフトによるポリシー管理、テープ装置の暗号化機能など、個々に特化したテクノロジーの特徴を運用ニーズにうまく生かして組み合わせることにより、D2D2Tというバックアップ手法のメリットを十分に享受できるソリューションになりました。銀行業務というミッション・クリティカルなお客様環境でご利用いただいていることに、先進性にとどまらない、このソリューションの価値があると考えます」
本事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
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