掲載月 : 2009年3月
株式会社大和総研ビジネス・イノベーション(以下、大和総研ビジネス・イノベーション)は2008年10月、証券会社向け業務システムにおいて画面とオンライン帳票を一新するとともに、「マルチチャネル・トランスフォーメーション/ チャネル統合サーバー基盤(MCT/CIS)」を活用して新サービスに柔軟に対応できる統合基盤をメインフレームで稼働するLinux®(Linux on System z®)上に構築しました。これにより、既存システムの有効活用に加え、開発期間の短縮やコストの削減を実現しています。
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課題は新サービスへの柔軟な対応と既存システムへの影響の最小化
大和総研ビジネス・イノベーションは、証券会社向け業務システムを1985年からASP(※1)サービスとして提供してきましたが、ASP事業の売り上げを伸ばし、新規顧客を開拓したいというビジネス目標に向けて、現行システムはいくつかの課題を抱えていました。
システム刷新の背景について、ITイノベーション事業本部 副本部長の小野智彦氏は次のように説明します。

ITイノベーション事業
本部 副本部長
小野 智彦氏
「サービス開始から20年以上が経過し、画面は更新しても、歴史を感じるようになり、お客様からもそのような指摘が多くなってきました。また、証券会社のビジネスは、従来の業務範囲からFX(※2)、ファンドラップ、SMA(※3)といった新サービスへの参入傾向が強まっており、新たなサービスを始めたいとお考えの証券会社様に、いかに応えていくかが課題でした。一方、既存システムへの影響や付随するコストの最小化も求められ、膨大な既存プログラムを抱えるシステムの作り変えは容易ではありませんでした」
SOAの考え方に基づいた徹底的な仮想化とユーザー利便性の飛躍的な向上
2007年5月、大和総研ビジネス・イノベーションとIBMは、証券会社向け業務システムの刷新に関するプレス・リリースを行い、環境変化に対するシステムの拡張性や柔軟性、他システムやパッケージとの接続性の向上、既存資産の有効活用や基幹系への影響の最小化といった課題に対し、SOA(サービス指向アーキテクチャー)を採用すると発表しました。
「新規セグメント、新規顧客を開拓し、売り上げ増につなげたいという要望に対してシステムを一から作り直す場合には、要員の確保や再構築中に凍結した仕様の追いつきに膨大な作業と開発費が発生します。そして何よりも、処理が正しく行われているかを確認する作業が大変で、リスクは増大する一方になります。業務処理自体は、現行システムで正確に行われており、すべてを作り直すことは逆にデメリットしかない、と結論づけました」と小野氏は語ります。
この解決策としてIBMは既存のアーキテクチャーやシステムに大きな影響を与えない仮想フロントエンドや仮想バックエンドの実現をはじめ、グループおよび外部企業との連携の必要性を提唱しました。
計画フェーズから1年半で画面とオンライン帳票を一新し、ユーザー利便性を向上させること、膨大な現行ホスト・システムに対する修正は最小限にとどめ、レガシー・トランスフォーメーションの考え方でラッピングすること、新規に再作成する機能はSOAとしての再利用を目指しサービス化すること、そしてその結果、これらを実現するマルチチャネル・トランスフォーメーション型の基盤が採用されました。
新規開発部分の移植性を考慮してLinuxを選択、開発言語にはJavaを採用

図 新システム 「Financial
Plate」概要 拡大図
「証券業務システムはここ10年の間でも、1日の出来高は4億株弱から30億株強と、10倍近い変動を見せています。1日の中でも市場で成立した注文が戻ってくる寄り付き、引けのわずか5~10分の間に多量のトランザクションが発生します。また市場性の高い商品に対する投資家からの注文を即時に市場に届けるため、処理の高速性も求められます。証券バックオフィス・システムとして、全投資家の全保有銘柄を評価するという大量のバッチ処理への対応も必要です。このように、高速・大量処理と安定稼働といった要件を同時に満たすのは、CPU使用率が90%以上の高負荷状態でも安定稼働し、一時的なワークロードの増大にもシステム停止せずに能力増強できるIBM System zでした」と小野氏。
Rational® Performance Testerによる高負荷テストでもLinux on System zの安定稼働は実証済みです。フロント、バックの接続基盤としてのMCT/CISはLinux on System zを採用し、既存の証券業務基幹系と同一プラットフォームのSystem z上に構築し、徹底的な仮想化を実現することにより物理的なサーバー数を抑えてい
ます。また、移植性の確保も目指し、開発言語にはJavaを採用しました。印刷基盤のSVF(※4)についても、今回のプロジェクトの中でLinux on System zに対応するとともに、各印刷コンポーネントを再利用可能なサービスとして再定義し、SOA対応にしました。各機能はWebサービスとして提供され、容易に呼び出すことができます。また、必要な機能を要求に合わせて組み合わせ、処理フローを作成できるようになっています。
ASPサービス提供に必要な構造と機能
今回のシステム開発の中心となったのは、証券フロントシステム開発部 部長の増田哲也氏です。
「今回のシステムにおけるチャレンジとしては、ユーザー・インターフェースの一新と同時に、新規に追加したツール・バー、メッセージ機能や印刷基盤が挙げられます」と増田氏。
ブラウザーによる画面の操作性向上を目的として、ツール・バー機能を導入しました。総合メニューのツリー形式表示、ユーザーがよく使うマイ・メニューの登録、画面名や画面コードでの画面検索、個人宛メッセージのポップアップ表示、ニュース・コンテンツ閲覧、他システムへのリンク・メニューの表示等が、どの画面からでもできるようになりました。
MCT/CISは、フロントエンド・コネクター、チャネル共通論理部分、バックエンド・コネクターという構造をとることで、営業チャネルの統合を可能にするとともに、SOAの考え方に基づいて新たなチャネルや新規業務アプリケーションを柔軟かつ容易に構築できる基盤となります。また、チャネル共通ロジック部には権限管理やメッセージ機能等を配置し、認証基盤の統一化やログ管理の一元化等も実現しました。
将来的には、ここに現行の業務処理を配置することも可能であり、段階的な業務処理の再構築も可能となります。接続したいサービスを問わず、実現したい業務の選択肢を増やす、まさにASPサービスを提供するのに必要な構造と機能だと言えます。
相反する課題の克服と新システムによるサービスの拡充
2008年10月、この新システムは「Financial Plate」としてサービス・インしました。今回の刷新により、次世代の金融サービスを支えるIT基盤の条件である、「さまざまなシステムと柔軟に接続しながらも、信頼性を犠牲にしない」という相反する課題を克服し、コンサルティングとITを組み合わせた「ソリューション」の提供という新たな取り組みが始まります。例えば、イベント・ベースド・マーケティング、統合CRMやコンプライアンス・チェック、あるいは他のシステム間とのSOA連携など、柔軟なシステム連携を行いながら再利用性の高いシステムを開発します。そして、お客様が必要とするサービスを必要な分だけ、標準化されたインターフェースで呼び出してご提供できるシステムとなりました。
これからは「多数存在する、数十のユーザーから成るようなニッチなマーケットに向けたサービス」へのシフト、Web2.0、SaaS(※5)への対応や連携も求められます。
「今後もSOAアーキテクチャー、SOAソリューション、SOA製品群に加え、エンタープライズ向けクラウド・コンピューティングである次世代エンタープライズ・データセンター等、IBMに期待しております」と小野氏。目標実現に向けて、大和総研ビジネス・イノベーションの変革は続きます。
※1 ASP:Application Service Provider
※2 FX:外国為替証拠金取引
※3 SMA:Separately Managed Account
※4 SVF:Super Visual Formade ウイングアーク テクノロジーズ(株)が提供する、総合帳票基盤のコア製品
※5 SaaS:Software as a Service
本事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
本事例中に記載の肩書や数値、固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
IBM, IBMロゴ, Rational, System z, WebSphere, z/OSは、International Business Machines Corporationの米国およびその他の国における商標。
JavaおよびすべてのJava関連の商標およびロゴは、Sun Microsystems,Inc.の米国およびその他の国における商標。
Linuxは、Linus Torvaldsの米国およびその他の国における商標。
Adobe, Adobeロゴは、Adobe Systems Incorporatedの米国およびその他の国における登録商標または商標。
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