掲載月 : 2010年3月
世界的な金融危機を切り抜けようとしている今、多くの銀行は、より厳しい規制によって制約された“ダイエット” を含む新たな“フィットネス療法” を始めなければなりません。力強く健全な未来に向けて、「ビジネス・モデルの再定義」、「顧客に対する理解と信頼の獲得」、および「リスク管理の改革」に向けて動き出すことが求められているのです。
新しい収益・利益源の確保へ
経済が回復の兆しを見せ始めている今こそ、銀行が将来に向けた進路図を作成するときです。では、どこから着手すればよいのでしょうか。成長戦略を描き、実践すると同時にバランス・シートを強化することが、銀行にとって最重要かつ緊急課題の1つです。費用を削減するだけでは十分とは言えません。銀行は持続可能な新しい収益・利益源を見つけ出す必要があるのです。

図1 プロフィット・プールの変化
施策1.専門特化に向けたビジネス・モデルの見直し
世界の139の金融機関についての分析は、IBM Institute for BusinessValue※(IBV)の幾多の調査によって示唆されていることを裏付けています。すなわち、「専門特化」が金融ビジネス・エコシステムの中で成功するテーマであるということです。金融危機後の環境下で競争を勝ち抜ける領域を認識するためには、ビジネス・モデルを見直す必要があります。銀行はフォーカスする領域を再定義し、自分たちが効果的かつ効率的に管理できる顧客、市場、商品および販売チャネルに経営資源を集中させるべきでしょう。ユニバーサル・バンクを含む数多くの銀行が、金融危機の打撃を受けた事業部門、経済活動の水準の低下、貸倒損失およびその引当金の増大、手数料に対する顧客の抵抗の増大、利益率に対する圧力の増大といった数々の理由から、収入水準の低下に直面しています。全体的に見るとプロフィット・プール(業界の利益の総額)は変化しつつあり、多くの人々が過去のような利益率はもはや期待できないと予測しています。その中でもユニバーサル・バンクが、最も激しい利益の低下を見せています(図1)。
IBVの調査の中で銀行の収益性を分析してみると、銀行には最適な規模、すなわち「スイート・スポット」があるように思います。これは、規模の経済を実現するには十分な大きさですが、複雑さや非効率性というマイナス効果に見舞われるほど大きくはないという規模です。今後、規模の経済が働かない一部の比較的小規模な銀行は、M&Aの候補になるかもしれません。一方、その大きさゆえに極度に複雑化している一部の大規模な銀行は、事業部門の一部を売却する可能性があります。

図2 信頼感のギャップ
施策2.顧客に対する洞察力を強化
13ヵ国7,000以上の顧客を対象にしたIBVの調査では、銀行とその顧客の間には明確な信頼感のギャップがあることが示されています。顧客の半数以上は、銀行が顧客の利益よりも主として自身の利益のために事業を運営していると考えています。そして実に驚くべきことに、多くの銀行のエグゼクティブもこれに同意しているのです(図2)。
顧客との関係を再構築して再び信頼を得るためには、銀行は、顧客が何を望み、何を必要としていて、どのようなことならば支出もいとわないのかを理解しなければなりません。実現のための1つの方法は、顧客のセグメンテーションです。年齢やライフステージなどの従来の属性ではなく、顧客が価値を置く事柄に基づいたアプローチです。そうしたセグメンテーションは、顧客とのより健全で持続可能な関係、ひいてはより大きな収益を生み出す関係へとつながることになります。
施策3.統合された全社規模でのリスク管理の実現
金融危機により、リスク管理技術の改善の必要性が浮き彫りになりました。多くのプロのリスク管理者は伝統的モデルでは極端な事象が頻繁に発生することを割り引いて考える傾向があり、リスクが過小評価されています。
また、入手可能な情報に基づいて正しく判断し、意思決定をしていくことの難しさも大きな懸念領域の1つであり、次の2つの課題がその主たる要因となっていると考えます。すなわちリスク管理技術の導入が縦割りで行われていることと、銀行のビジネス・エコシステム全体にわたって、リスクに対する体系的な視点が脆弱であることです。この課題解決に向け、銀行は統合された全社規模のリスク管理のフレームワークを導入することが求められています。
力強く健全な未来に向けた成長機会
銀行業界の前途には、成長に向けた素晴らしい機会が広がっています。この機会をとらえ、成功の前に立ちはだかるあらゆる課題を解決するために、銀行のエグゼクティブは健全性の確保やビジネス・モデルの見直しを行い、変革への準備をする必要があります。ビジネス・モデルの適応力を向上させ、重点を顧客洞察とリスク管理に刷新する取り組みは、銀行が力強く健全な未来を確保するために役立つことでしょう。
IBMは、幅広いサービスとテクノロジーにより、以下の3点をはじめとするさまざまな取り組みに対し、引き続き金融機関の皆様をご支援してまいります。
- 新しい商品やサービスを設計する際に、顧客に対する洞察力を強化し、顧客情報の有効活用を実現
- コストを削減し、より迅速、かつ柔軟な対応を実現するためにオペレーションを簡素化し、無駄を一掃
- 金融リスクとオペレーショナル・リスクを最適化し、コンプライアンス・ニーズを充足して、よりスマートな統合リスク管理を実現
※IBM Institute for Business Value(IBMビジネス・バリュー研究所)は、世界各地のIBMコンサルタントを動員し、グローバル規模で注目を集めている問題の研究および分析を行い、上級ビジネス・エグゼクティブ向けに戦略的な洞察をご提供しています。
当記事は、英語版"Fit, focused and ready to fight"の翻訳資料の抜粋を基に作成したものです。
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