掲載月 : 2011年3月
日本では急速に高齢化が進んでおり、2015年には国民の4人に1人が高齢者になると予測されています。また、身体障がい者も年々増加傾向にあり、特に高齢化に伴う肢体不自由者は今後も増加が続くと予想されています。このような状況下、生活上欠かせないサービスを提供している金融機関においては、健常者の方へのユーザビリティーのみならず、幅広い利用者層へのアクセシビリティ向上へ積極的に取り組み、“人にやさしい金融サービス”を実現する必要に迫られています。まさに、金融庁からの要請事項もこのような背景の現れであり、誰もが、情報・サービスに問題なくアクセスし利用できる環境を整備することは欠くことのできない要素となります。
50年以上の歴史を持つIBMのアクセシビリティへの取り組み

図1 IBMのアクセシビリティ
への取り組み (438KB)
IBMのアクセシビリティへの取り組みは、「障がいを持つアメリカ人法(ADA)」が成立する前の1914年、障がいを持つ方を初めて雇用した時から始まりました。以来、雇用機会の公平さに始まり、製品やサービスを誰もが利用できるようにすることへの信念、また研究への情熱にいたるまで、50年以上もの間、アクセシビリティに関して業界内のリーダーであり続けています。主な研究開発の実績としては、1960年代の「音声タイプライター」や、インターネット時代を迎え、Webを視覚障がい者の新しい情報源にするための取り組みとして、1997年に日本で開発、製品化した「ホームページリーダー」などが挙げられます。IBMでは東京基礎研究所をはじめ全世界の8カ所にアクセシビリティ・センターを設置し、企業としての社会貢献に加え、自社製品やサービスをアクセシブルにするということに重点を置き、その時代のニーズを反映した新たな研究開発を行っています(図1)。
金融庁からの要請/監督指針
金融庁は、2010年8月26日、全国銀行協会など金融9団体に対し、視覚障がい者に配慮した金融サービスの提供を要請しました。この要請に記載されている項目は以下のとおりです。
- 視覚障がい者対応ATMの増設と機能の充実
(画面のコントラストの調整や操作方式をタッチパネル式ではなくボタン式にするなど) - 普通預金口座入出金の点字明細の発行推進
- 複数の行員の立会いによる視覚障がい者への代筆および代読の規定化並びに円滑な実施
- 視覚障がい者誘導用ブロック(点字ブロック)の敷設や音声誘導システム(発信器に対応して音声を発する装置)の設置の推進
- 本人確認及び認証システムの開発段階における視覚障がい者との協議
- インターネット・バンキング画面の音声読み取り対応および認知可能なパスワード等の提供
- 識別可能なキャッシュカードの導入
またさらに、2010年12月28日には、障がい者等の金融取引の利便性を向上させるよう、主要行等向け、中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針の一部改正(案)が金融庁から発表されています。
さまざまな顧客接点におけるアクセシビリティ対応

図2 Webアクセシビリティ
向上システム (389KB)
IBMでは、金融庁からの要請事項への対応に加え、高齢者も視野に入れた幅広い観点から、ATM、営業店、Webなど顧客接点全体での金融機関の取組状況を、チェック・リストを用いて一通り確認するとともに今後の改善ポイントを抽出し、改善ポイントの対応案を検討するとともに、その実行計画を策定する包括的な「クイック診断サービス」を提供いたします。
Webサイト関連のソリューションでは、Webサイトが障害を持つ方にも利用可能であることを診断するアクセシビリティ診断や研修、構築支援などのサービスをお客様の課題に合わせて提供しています。例えば、「IBM Rational Policy Tester」は、Webコンテンツの自動スキャンにより、アクセシビリティのみならず、プライバシー、コンテンツ品質などのコンプライアンスに関する問題を特定してオンライン・リスクを軽減する企業レベルでのWebサイトのリスク管理ソリューションです。また、インターネット利用を支援するツールとしては、既に多くの自治体・企業で導入実績のある、「IBM Easy Web Browsing」があります。これは、弱視者・高齢者が閲覧しやすいよう、既存のWebサイトを変更せず、配色や文字サイズ、レイアウトを調整したり、読み上げて支援するソリューションです。さらに、インターネット・バンキング・システムとして多数の金融機関にてご採用いただいている「IBMチャネル共同センター・サービス」においては、今後アクセシビリティを確保したサービス提供を行うために、アクセシビリティに関するガイドラインの作成を予定しています。
金融業界への応用を検討しているものとして、設計/開発から保守/運用までのライフサイクルを通じて包括的にアクセシビリティの確保を支援する「Webアクセシビリティ向上システム」があります(図2)。読み上げソフトで正確に読めないなどの不具合を発見し、既存コンテンツを変更することなく修正を実施し、利用者のアクセスを支援する機能を持ちます。既設のWebシステムやコンテンツを大きく変更する必要がないため、迅速な対応が可能となります。また、このシステムにおいては、問題点報告機能の提供を通じて利用者参加型のアクセシビリティ向上サイクルの構築を可能にすると同時に、障がい者・高齢者自身が修正作業に参画可能となるような作業環境を提供することで雇用機会の創出にも役立てようとしています。
今後に向けて取り組んでいる研究事例としては、東京基礎研究所が研究を進める「ささやきインターフェース」に、センサーデータ解析技術およびテキスト解析技術を組み合わせた、施設内誘導、機器操作ガイダンス等のソリューションを構想中です。例えば、アクセシビリティ対応ATMが判別できないお客様に対し、入店からの振る舞いなどをもとに、その状況(必要な支援やガイダンス)を解析し、対応しているATMに音声ガイダンスで誘導し、目的としている操作をガイダンスする等の活用方法が挙げられます。
高齢化・国際化・多様化に向けたサービス・ビジネスの展開
アクセシビリティに対する配慮を求める潮流は少子高齢化を背景に全世界的なものとなっています。米国では2008年にADAが改正され、欧州でも調達基準にアクセシビリティへの配慮が加わろうとしています。日本では「JIS X 8341-3シリーズ(経済産業省:情報バリアフリー分野の日本工業規格の制定)」において、Webやソフトウェアあるいは事務機器等に対してもアクセシビリティを求める標準規格が整備されるなどしており、その他の国々でも、関心は確実に高まりつつあります。
このような状況の中、アクセシビリティへの取り組みを法令等へ の対応のためだけのものととらえて取り組むのではなく、むしろ、少子高齢化がいち早く進む日本においては、アクセシビリティに対する取り組みから得た知識や経験を、障がい者・高齢者あるいは外国人など多様な人を対象とした今後のサービス・ビジネスに積極的に展開していくことが望まれると考えます。
IBMでは、先行する海外でのアクセシビリティへの取り組み実績を生かし、金融機関のお客様へのお役に立てるソリューションを積極的に展開していきます。
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事例は特定のお客様の事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
ソリューション情報は、すべての場合において同等の効果が得られることを意味するものではありません。効果はお客様の環境その他の要因によって異なります。
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