掲載月 : 2011年3月
世界がますます複雑化する中、企業は、競合他社との優位性を維持または新たに起こすために、さまざまな仕組みを構築しています。そのような環境の下、近年企業内における「アナリティクス(データのアクティブな分析・活用)」への注目が高まっています。企業がアナリティクスという機能をどのように活用し、将来の投資の優先度を決定し、洞察を行動へと転換しているのかをより深く理解するため、IBMはMITと共同で全世界の経営幹部および経営関連情報にかかわる担当者約3,000名を対象に調査を実施しました※。当報告書では、対象者へのインタビュー結果に基づき、長期にわたる優位性を確立するために、企業がアナリティクスに関する能力をどのように強化すればよいかという点について提言しており、それを基に今後の金融サービス業の新たな方向性についても考えていきます。
経営幹部が期待するアナリティクス活用と実現に際しての成功要因は何か

図1 最大の価値をもたらす
アナリティクス手法 (568KB)
多くの経営幹部は、データの背景にある外部状況を正確に把握し、それを基に間違った意思決定を下さない事業運営を望んでいます。例えば、競合他社の予期せぬ参入、事業を展開している地域における自然災害の発生や、顧客が競業他社サービスに切り換えるなどの兆候が生じた際に、短期的な損益に与える影響や中長期のビジネス状況シミュレーションに基づき、実行すべき最善策について即座に指針を得るような場合が想定されます。また、多岐にわたる複雑な経営指標や随時更新される情報に基づき、何が最適な解決策であるかを理解し、即座に対応することができればとも考えています(図1)。
こうした期待に応えるためには、アナリティクスを経営戦略と密接に関連させ、企業内の利用部門にとって理解しやすい業務プロセスに組み込み、定常的な活動の中で適宜対応できるものとしなければなりません。
企業の成長戦略へアナリティクスを最大限活用させていくには、ある程度の経験とノウハウの蓄積が必要ですが、企業運営の枠組みにおいての効果を適正に見極められれば、アナリティクスの活用の初期段階であってもさまざまな経営目標を達成するために有効であることがわかりました。
企業がアナリティクスを活用しようとする際に直面する障壁は、データそのものやその活用技術というよりも、むしろ経営幹部自身や企業文化に起因するところが最も多いという事実も判明しました。当アンケートによれば、約4割の回答者が障壁の原因を、アナリティクスをいかに活用しビジネスの向上を図るかを理解できていないことである、と指摘しています。経営幹部はデータの持つ意味を即座に理解し、それに基づいて行動を起こすことができるように、複雑な洞察を導ける、より効果的な方法を求めているのです。
アナリティクスから期待どおりの成果を上げるための方法
図2 アナリティクスで
成果を
上げるための5つのポイント
IBMは、今回の調査結果、国内外での複数プロジェクトの経験、またケース・スタディーや専門家へのインタビューから、アナリティクスを中心とした経営手法の導入とその効果を享受できるまでの期間を短縮するための新しい切り口として、5項目を特定しました(図2)。
1.最も効果が期待できる領域にフォーカスする
アナリティクスを企業の重要な課題に適用することにより、さまざまな課題の克服が容易になります。逆に戦略的な事業方針がないまま、アナリティクスに取り掛かるべきではなく、そのような取り組みは途中で頓挫する可能性が高いといえます。
2.データではなくビジネス課題から始める
最初に、重要なビジネス目標の達成に必要な洞察と問題点を定義した上で、答えを得るために必要なデータを明らかにし、アナリティクスを実施すべきです。これによって、洞察から明らかにされたデータの必要性と特定プロセスの改善に向け、反復しながら徐々に適用水準を高めることが可能となります。
3.アナリティクスで得られた洞察を実践し、顧客に価値を提供する
導かれた洞察は、実際に顧客に価値を提供できるビジネス・アプリケーションとビジネス・プロセスに具体的に組み込むことで意義を成します。
4.既存の能力を維持しながら新たな能力を加える
個々の事業部門や職能でアナリティクスの価値を理解した企業は、より広範な能力を求めると同時に、既存の能力をより高度に活用することを目指すようになる傾向があります。
5.インフォメーション・アジェンダ(情報戦略実現へのシナリオ)を作成して将来の計画を立てる
ビジネスとITの両方の目標の整合を図ります。さらに将来を見据えたインフォメーション・アジェンダを指針としてアナリティクス基盤を構築します。つまりビジネスの科学的な解決方法とそれを実現するテクノロジー基盤を計画することです。
金融サービス業へのアナリティクス適用の観点とは
金融業界では、既に顧客へのマーケティングを端緒に、データを分析し、ビジネス戦略につなげていくことは定常化しています。
しかしながら、昨今金融機関を取り巻く環境変化のスピードが増し、その度合いも大きくなってきている点を鑑みると、戦略仮説を立案し、実施後の効果を迅速に評価し、より柔軟に戦略を変えていくという、従来以上にダイナミックなアナリティクスが求められてきているといえます。
こういった観点で、例えば、より効果的なチャネル戦略の立案の遂行として、以下のようなアナリティクスの可能性を一例として挙げることができます。
- 来店顧客の動向を分析することにより、カスタマー・エクスペリエンス(Customer Experience:顧客経験価値)を向上させた次世代営業店(Next Generation Branch)形態の展開
- SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)等の情報ネットワークを介しての効果的な広告や宣伝の可能性検討
また、アナリティクスのもう1つの可能性として、外部環境の変化の経営へのインパクトを、より迅速・現実的に試算することもできるようになることが挙げられます。例えば、
- 既存ポートフォリオが晒されているさまざまなリスクの複合的なインパクトを分析し、定量的に試算する
- モデル化されたリスク・シナリオに基づいてのリスク対応策を検討する
なども想定されます。
私ども日本IBMでは、アナリティクスという観点で先行している海外での豊富な事例を基に、個々のお客様の現在・将来のニーズに合致したサービスをご提供すべく、各種方法論・ソリューションを用意しております。
※「アナリティクス:ビジネス価値創造への新たな道」は、企業が情報活用と先進的な分析について理解するのに役立てるため、MIT Sloan Management ReviewとIBM Institute for Business Valueが共同で、約100カ国における30以上の業界に関わる経営幹部、マネージャーおよびアナリティクス担当者約3,000名を対象とする調査を実施したレポートです。
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