掲載月 : 2010年6月
リスト照合システムの整備が、金融機関における重要な課題と認識されるようになってきています。その背景として、(1)顧客本人確認(KYC:Know Your Customer)の厳格化の動きがあること、(2)監督指針にて既に反社会的勢力リスト対応要件が示されていること、(3)全国銀行協会が中心となり、反社会的勢力との関係を断ち切るための動きが強まっていること、などが挙げられます。
FATF対日審査結果による影響
2008年10月末に公表されたFinancial Action Task Force(FATF)対日審査の結果が極めて厳しい結果であったことを受け、AML(アンチ・マネー・ローンダリング)関連の法制化の動きが予想されています。特にKYCについては低い評価を受けた項目であり、対応措置が求められる可能性も高いと見られます。今後、リスト照合システムが未整備のままだと、金融機関として社会的信用の失墜といった極めて大きな経営的インパクトが発生する可能性があり、早急な対応が必要であると考えられます。
対応方法検討における5つのポイント
金融機関がリスト照合システムの整備を検討するに当たっては、次の5つのポイントが挙げられます。
1.実績のあるパッケージの利用
リスト照合自体は、他社との差別化の必要のない非戦略的業務であることから、業界で実績のあるパッケージを利用してそのノウハウを活用し、要件定義・設定にかかる時間を節約することが可能です。また、実績のあるパッケージであれば、パフォーマンスなどの性能が分かっており、非機能要件の観点でも安心感があります。
2.既存システムの有効活用
口座開設時のリスト照合では、既存の勘定系システムとの連携を考慮し、新規システム化範囲を絞り込むことで、システム投資のROI向上と、営業店オペレーションへの影響を最小化することが重要です。
3.高い検知精度
反社会的勢力リストとの照合項目は、漢字・カナ、アルファベット双方のあいまい検索機能を実現することが必要です。日本語としては、漢字氏名・カナ氏名・生年月日を主たる項目として、あいまい検索照合により検知精度を高めることが重要です。
4.照合後の業務プロセスの検討
口座開設時のリスト照合では、営業店への照合結果の提示方法、提示後の業務フローなども、システム導入に合わせて検討することが必要です。リスト合致可能性の高い顧客取引には警告メッセージによる、口座開設の中断や、責任者への報告等のフローが考えられます。
5.将来的な拡張性の考慮
口座開設時に加え、預金・送金、融資などの各取引時の可否判断にも将来活用するか否かを考慮し、システム方針を検討することが必要です。
リスト照合エンジン:IBM GNR

図1 IBM InfoSphere Global
Name Recognition(GNR)

図2 人名の構造: GNRの人名
モデル
リスト照合システムにおいてエンジンとなる、IBM InfoSphere
Global Name Recognition(GNR)についてご紹介します(図1)。
IBM GNRは、20年間以上、18文化圏およそ10億件の人名の統計的・言語学的な分析を基にした、文化圏ごとの名前分析に関するノウハウが詰まったソフトウェア製品です。誤判定(フォールス・アラート)が少なく、信頼性の高い名前分析が可能となっております。主な機能について説明します。
1.名前の分析(図2)
入力された名前が帰属する文化圏を推定するとともに、性別、相対的頻度が高い国を知ることができます。
例えば“ Masakazu Ikeda”を入力すると、文化圏は日本、性別は男、国は日本、ブラジル、ペルーなどという答えが得られます。“Naomi Campbell”を入力すると、文化圏はアングロ、女性、国は日本、バハマ、イギリスなどが返ってきます。このように“ Naomi”は日本の名前であると同時に、アングロサクソン文化圏の名前でもあります。また、名前を構文解析することで、文化圏ごとの違いだけでなく、データ入力過程で名前の区切り位置やフィールドの順序も分析します。
例えば、東洋人の名前は姓と名の順番が逆転して入力されることがありますし、中東人の名前で接頭辞を伴ったものは、欧米の「ミドルネーム」と取り違えられて入力されることがあります。名前の分析により、人名か組織名なのかを推定し、その後の分析を容易にすることができます。
2.名前の類似度スコアリング
名前の分析で得られた名前の文化圏に基づいて、2つの名前の類似度スコアを計算します。例えばアラビア語圏ではQadafiとKadafiの違いは大きくありませんが、日本では伊東と伊藤は別人です。このように、文化圏によって違いの重要性が異なるため、名前の文化圏を正しく認識することが重要です。
入力された名前と類似度の高い名前を大量のリストから見つけ出し、類似度スコアの高い順に表示する機能もあります。

図3 JNRによる日本語人名の
サポート
3.IBM GNR用 日本語拡張モジュール:JNR※(図3)
日本語人名を扱う際には、日本文化固有の課題があります。例えば、漢字・読みの多様性があります。「さいとう」という姓には、斉藤、斎藤、齊藤、齋藤など多数の漢字表記があり、どの「さいとう」が正しいかは身分証明書を確認しなければなりません。日本語人名の姓名の分割、漢字名の読み仮名付与、およびローマ字変換、異体字や類似文字を考慮した人名の類似度評価などが可能なGNRの拡張モジュールを開発し、お客様にご提供しています。
4.高速検索について
照合の対象となるデータをメインメモリーに保持しておくことにより、すばやく検索結果を表示することができます。
リスト照合システム導入の効果
リスト照合システムを導入したある企業では、多文化に対応した名前照会を間違いなく効率的に実施するという課題がありましたが、IBM GNRの活用により、ゼロからのシステム開発ではなく短期間で導入することに成功し、課題を解決しました。また、マーケティング・システムと連携することで、カスタマー・サービスの向上による顧客定着率の向上といった効果ももたらされています。
IBMは、海外での豊富な実績に基づくコンサルティング・サービスから、リスト照合システムの計画・導入、そして、運用保守までのサービスを一貫してご提供することにより、金融機関の皆様の社会的信用維持の実現を技術・ビジネスの両面よりご支援してまいります。
※JNR:Japanese name adapter for global name recognition
掲載されている情報は2010年6月現在のものです。内容は事前の予告なしに変更する場合があります。
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