掲載月:2007年9月
欧米の金融機関では、アルゴリズムを使ったトレーディング手法「アルゴリズム取引」が脚光を浴びており、日本でもすでにその動きが現れ始めています。
アルゴリズム取引とは
アルゴリズム取引とは、ある数理分析モデルをもとに、コンピューター・プログラムによって注文執行する手法で、これまでのトレーダー仲介型の注文執行方法を変えるものと予想されます。日本の金融市場においては、2009年に東京証券取引所の次世代システム稼働を控えており、取引所システムの高性能化を契機に、証券会社におけるトレーディング手法のあり方に大きな影響を与える可能性があります。
普及に向けた3つのドライバー
アルゴリズム取引が普及するためのドライバーとして、「コスト」「規制」「スピード」の3つの要素があると考えます。
- コスト
市場の電子化に伴い、投資家は豊富な市場情報の入手および自ら取引が可能となったことで、仲介取引に高額な手数料を支払わなくなると考えられます。そのため、証券会社は執行コスト低減策として、従来のトレーダー仲介型のビジネス・モデルを見直さなければならなくなるでしょう。 - 規制
欧米においては、Reg NMS※1やMiFID※2といった規制および、PTS※3の普及に伴い、投資家にとって、より良い注文を執行するために、複数取引所のデータを保持し、注文を早く正しく執行することが求められます。今後、日本でもPTSの台頭などにより、東京証券取引所だけでなく、他の複数取引所からリアルタイムにデータを取得・保持することが必要となる可能性があります。 - スピード
アルゴリズム取引の世界では、どのプレーヤーが一番に市場に到達できるかが大きな競争優位条件になります。そのため、絶え間ないスピードの高速化を目指す競争は、アルゴリズム取引の普及をさらに促進させることになるでしょう。
※1 US Regulation National Market System(全米市場システム規制)
※2 EU Markets in Financial Instruments Directive(金融商品市場指令)
※3 Proprietary Trading System(私設取引システム)
取引を優位に実現するための3つの要件

図1 アルゴリズム取引の全
体観
アルゴリズム取引全体を考える上で、取引を優位に実現するための要件として、狙いどおりの取引を「正確に」「早く」「連続的に」実行できること、この3つの能力が重要と考えます。
- Shoot Straight(正確性)
適切な市場に適切な銘柄を、適切なタイミングに執行する能力で、主にアルゴリズム・エンジンに依存する部分です。アルゴリズム取引があまり普及していない日本においては、まずこの能力を実現させることが必要となります。 - Shoot Fast(高速性)
スピードの遅れは、最初に注文を出した者が最良な価格を得るだけでなく、後続で注文を行った者が計画どおりに取引を執行できなくなるリスクを増大させる要因となります。従って競争優位に立つためには、レイテンシー(市場変化に対応し取引を執行する時間)を極限まで低減させる能力が重要となります。 - Shoot Often(連続性)
正確かつ高速に注文を執行できても、大量の処理容量に対して継続的にオペレーションできなければ、持続的競争優位に立つことはできません。また大きなロットの取引を、市場への影響をできるだけ極小化し、なおかつトレーディング戦略を隠蔽できるようスケジューリングされた、より小さなロットに細分化する能力が必要となります。
WebSphere Front Office for Financial Markets
IBMマーケット・データ配信プラットフォームのご紹介
IBMは、Wall Streetのお客様のご要望にお応えするべく、アルゴリズム取引を優位に実現するためのフロント・オフィス・ソリューション、WebSphere® Front Office for Financial Markets(WFO)を開発しました。WFOは金融機関のお客様向けのソフトウェア製品であり、フロントとミドル/バック・オフィスとのマーケット・データ連携の基盤ミドルウェアとして稼働します。
アルゴリズム取引の実現に向けて

図2 WFO(WebSphere Front
Office for Financial Markets)
の機能概要
WFOは、各種マーケット・データをロー・レイテンシーで、アルゴリズム・エンジンなどのアプリケーションに対してマルチキャストし、VWAP※4などの算出や品質チェックも同時に実現します。また、イスラエル ハイファのIBM研究所で開発されたリライアブル・マルチキャスト・メッセージング(RMM)を実装することで、ロー・レイテンシーと高信頼性を実現します。
なお、各機能の特徴は以下のとおりです。
- フィード・アダプター・フレームワーク
- 高速配信を実現するティック・フォーマットを採用
- 複数のデータ・ソースを統合
- VWAPなどの計算、品質チェック、キャッシング機能
- ストリーミング・データ・プロセス・エンジン
- RMMによるロー・レイテンシーの確保
- ストリーミング/非同期配信マルチキャスト
- 二重送信の検知
- イン・メモリー・データ・ストレージ
- フレームワークAPI(Application Program Interface)
- Java™、C++アプリケーションの統合をサポート
- 単純化したAPI により、アルゴリズム・エンジンなどのアプリケーションと統合
- ユーザー管理
- ユーザー・アクションを含む認証機能提供により、データ・アクセスを管理
- モニタリング/計測
- ユーザー/アプリケーションへのフィードをトラッキング
- イベントの収集/保管
※4 Volume Weighted Average Price(出来高加重平均価格)
IBMは、激変する金融市場において、お客様のイノベーションの実現へ向けて、当ソリューションをご提案いたします。
本事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
本事例中に記載の肩書や数値、固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
IBM, IBMロゴ, WebSphereは、International Business Machines Corporationの米国およびその他の国における商標。
Adobe, Adobeロゴは、Adobe Systems Incorporatedの米国およびその他の国における登録商標または商標。
JavaおよびすべてのJava関連の商標およびロゴは Sun Microsystems, Inc.の米国およびその他の国における商標。
