掲載月:2007年9月
テレアンダーライティングは、1980年代半ば、米国の生命保険会社が引き受け査定のためのリスク・データ(医学的情報)の収集を、非対面型である電話を用いて行ったことを発端としています。テレアンダーライティングという言葉は正式には定義されていないものの、コンサルティング会社・米Celent社のレポート※は、「新規契約のためのさまざまな情報収集を電話を通して行うこと」と定義しています。この定義をあてはめると、Personal History Interview(PHI)と呼ばれる、すでに申込時点で告知された内容の確認を電話で行う会社から、質問を階層的に設計し、ルール・ベース化したエンジンを回して査定を行う会社までが含まれ、米国における実に多くの会社がテレアンダーライティングを取り入れていることになります。
※ Phoning It In:Teleunderwriting Comes of Age by Celent December 2004
世界で活用が広まるテレアンダーライティング
テレアンダーライティングの活用により、保険会社は主に以下に挙げたメリットが得られます。その活用は米国のみならず欧州にも広がりを見せており、近年ではアジア各国や豪州でも活用開始されています。
テレアンダーライティングのメリット
- 危険選択のための情報収集を、良く訓練されたインタビュアーが行うため、必要な情報が過不足なく、比較的短時間で収集できる
- 申込書類への記入漏れや不備を確実に減らし、事務の効率化とコスト削減が期待できる
- 申し込みから契約締結までに要する期間を短縮できる
- 病歴などの機微情報を扱う作業を営業職員から切り離すことにより、個人情報保護とコンプライアンス順守を確保できる
- 営業職員の事務作業負担が軽減されるので、保険の販売に集中でき、また新商品が出た際にも、それに伴う新事務を覚える必要がないため、新商品への対応が早まる
- 電話で面接が行えるため、保険申込者の利便性が向上する
日本におけるテレアンダーライティングの活用例としては、数年前からNTTドコモ社のFOMAのTV電話会議機能を活用し、面接士との面談を遠隔で行うサービスを提供する保険会社が現れ始めており、今年に入ってからはインターネットTV電話の活用により、医師の診査も遠隔で受けられるサービスを提供する保険会社も出現しました。
利便性の向上と高付加価値商品の販売強化に貢献
非対面型交信ツールへのニーズの高まりを受け、IBMはテレアンダーライティングへの取り組みとして、本年8月に「遠隔診査システム」のプロトタイプを完成させました。このプロトタイプは、主に以下の3点をコア機能として兼ね備えており、遠隔での医師診査を可能とし、保険申込者や営業の利便性を高めるのみならず、保険会社にとっても利益率の高い、高付加価値商品の販売比重を高めるのに活用いただけます。
図1 システム構成
「遠隔診査システム」プロトタイプコア機能
- Workplace Forms™を使用した帳票の電子化、ならびに帳票の画面共有機能
- Lotus® Sametime®のビデオ・チャット機能を活用した、画像と音声による双方向コミュニケーション機能
- 血圧測定結果の端末への取り込みならびに、遠隔地にある端末への転送機能
このシステムの特徴は、まず電子フォームをWorkplace Formsで作成していることが挙げられます。Workplace Formsは、フォーム自身がXML(Extensible Markup Language)をベースとしているため、Webサービスなどを経由して他システムとの連携も容易です。例えばWorkplace Formsで作成したフォームをサーバー側で必要な部分だけ抽出してワークフロー・エンジンや、冒頭で述べた査定ルール・エンジンに渡して連携する、といった一連の処理を自動的に行うことが可能となり、生産性を大幅に向上させることができます。また、Lotus Sametimeは、ユーザーの権限を各社のセキュリティー・ポリシーに準拠して詳細に設定することが可能で、柔軟かつ強固なユーザー管理ができます。そのほか、通信されるデータは暗号化されるため、高いセキュリティーを保ち、データの機密性を保持することができます。また、Java™ベースで開発されたWebアプリケーションであり、申込者から得たデータはローカル端末ではなく、すべてセンター側のサーバーにアップロードし管理されるため、万が一端末を紛失した場合で
も情報の漏えいを防ぐことができます。
今後は上記のコア機能に加え、電子パッドとペンを使用して署名された自署をWorkplace Formsで作成した電子帳票に取り込む機能の追加を予定しています。この電子帳票と電子署名の機能の組み合わせにより、告知書のみならず、申込書や契約意向確認書など、保険申込者の自署を必要とする書類を電子化し、ペーパーレス化することが可能となります。
経営戦略実現への貢献に向けた今後の展望
このように、IBMではこの「遠隔診査システム」プロトタイプを出発点として、その適用範囲を医師診査にとどめず、申し込みから契約締結に至るまでの一連の事務処理を電子システムにより自動化し、一貫処理ができるシステム構築を視野に入れています。単に従来の営業職チャネルを強化・補完し、事務を効率化するだけでなく、例えば前述の自動査定システムとの組み合わせにより、POS(Point Of Sales)で査定判定することを前提とした新規保険商品の開発など、市場シェアの拡大と新規ビジネスの獲得を促し、保険会社の経営戦略実現に貢献できるソリューションの提供を目指します。
さまざまなサービス・スキームの提供に向けて
図2 テレアンダーライティン
グサービス・スキーム全体
図(例)
銀行窓販の全面解禁を今年12月に控え、来店型店舗が次々と新設され、インターネットやコールセンターを通じたダイレクト販売の売り上げの割合が高まっていくなど、今後チャネルの多様性はますます高まることが予想されます。そのような状況において、システムのアクセシビリティー、すなわちどの金融機関、どの店舗においても利便性の高いツールを活用した顧客サービスが提供できる、といった能力を持つことが非常に重要となってきます。そういったニーズに応えるべく、IBMでは保険会社のお客様などに向けて、システムの提供のみならず、その周りで必要な人的資源、人材教育、コールセンター基盤、センター運営、ネットワーク敷設と監視、それらの保守、などの提供を同時に行うことにより、安定的かつ安心してご利用いただける、サービス・スキームの構築も検討しています。また、金融機関の窓口や来店型代理店を想定した場合、複数の保険会社の商品を乗り合いで販売することから、このスキームを元受である複数の保険会社と販売チャネルである複数の金融機関や代理店にて共同で活用いただくインフラとしてのサー
ビス形態の構築計画も進めております。
本事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
本事例中に記載の肩書や数値、固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
IBM, IBMロゴ, Lotus, Sametime, Workplace Formsは、International Business Machines Corporationの米国およびその他の国における商標。
Adobe, Adobeロゴは、Adobe Systems Incorporatedの米国およびその他の国における登録商標または商標。
JavaおよびすべてのJava関連の商標およびロゴは Sun Microsystems, Inc.の米国およびその他の国における商標。
