掲載月 : 2009年9月
豚インフルエンザ由来のH1N1新型インフルエンザは、WHO(世界保健機関)が2009年6月に世界的大流行を意味するフェーズ6を宣言し、日本でも5月に最初の感染者が確認されて以来、その数は増え続けています。7~8月には学校が夏期休暇中にもかかわらず感染が広がり、厚生労働省は8月21日、全国的な流行期に入ったと発表しました。既に感染者は数万人に達すると言われ、今後のビジネス面での影響も懸念されています。
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豚インフルエンザ騒動からの学び
5月に始まった第一波において、国内企業の多くは、H5N1鳥インフルエンザ由来の強毒性新型インフルエンザを想定したBCP(事業継続計画)を実行したことと思われます。日本政府の対応も同様で、国内発生の初期にはH5N1想定での対策が実施され、6月中旬には対策を弱めるアナウンスがなされたものの、当時はかなり混乱がありました。水際対策や感染疑い者の隔離などは、今となっては賛否両論があり、正確な情報の入手や何を基に判断すべきか迷ったことで、必要以上の対策をした企業も多かったのではないでしょうか。WHOや米国CDC(疾病予防管理センター)など海外からの情報と日本政府や自治体からの情報を併せて判断することが求められましたが、予めどのような情報を基に何を判断するかを決めておく必要があることが分かりました。
新型インフルエンザ対策と発動のトリガー

図1 対策発動の考え方(例示)
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(図1)はBCPで定めた各対策をどのタイミングで実施するかを示した例です。海外や国内各地で事業を展開されている金融機関では、その地域での発生状況を考慮した判断が必要です。地震の場合は全国一斉には発生しない想定のため、本部での取りまとめも可能でしたが、新型インフルエンザは各地で発生するため、各地域でのBCP発動に関する権限委譲が求められます。
新型インフルエンザの毒性や感染力などの特徴は発生初期には分かりづらいため、特徴が明らかになった時点で実行中の対策の見直しが必要です。何を基に判断するのかを検討しておくと、情報収集も効率的にできます。例えば、各企業や部署ごとに感染状況の統計をとることは、全国民を対象にした政府や自治体で発表される感染状況の統計よりはるかに有効と考えられます。また、新たな感染者が1週間確認されていない部署では、最後に感染した人が回復し、部内では全員稼働可能な状況が想定できます。このような状況では、感染防止策は継続するものの、その他の対策の縮小を検討するタイミングでもあります。もちろん再度感染者が確認された場合は対策を再開する、あるいは感染力や毒性なども合わせての
判断が必要です。
新型インフルエンザは、まず海外で発生し約2週間で国内に持ち込まれ、最初の国内発生から4日前後で他の地域にも感染が広まると想定されています。この2週間や4日間を有効に使い、対策の最後の確認作業や試行を兼ねた訓練を行うことをお勧めします。地震や火災の場合は、たまたま訓練した直後に発生しない限り、このような入念な準備はできません。新型インフルエンザという脅威を理解して賢く対応したいものです。
パンデミック発生時におけるIT サービス継続の重要性

図2 IT部門での影響分析
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営業拠点は各地での感染状況により、営業の縮小など決められた対策の実施を判断しますが、出張や集合しての会議を控えるために必要な電話会議やパソコン会議などは、ITインフラが稼働していることが前提となります。在宅勤務には、自宅からアクセスできるシステム環境と、問題が発生した時の問い合わせ窓口が必要になります。また、パンデミック発生時には対面で行っている業務をメールやコールセンターに誘導することも考えられるため、IT依存が高まり、システムの安定稼働が強く求められます。
ところで、IT関連業務には、本番システムの運用のほかにも、企画、システム保守、アプリケーション開発、システム管理、システム利用者へのヘルプデスク・サービス、帳票・メディア(媒体)の授受などがあります(図2)。これらの業務には、パンデミック時に停止しても問題が少ない業務や、継続を求められるが欠勤率が高くなった場合は支障がある業務などさまざまです。システム安定稼働を優先に不要不急の業務を控えることで、他の重要業務への要員シフトを検討します。欠勤率が高くなり、要員が少ない状態で行った開発や変更作業はトラブル発生に、新しいアプリケーションのリリースはヘルプデスクへの負荷につながる恐れがあります。開発作業など、多数の要員が1ヵ所に集まって行う場合は、感染リスクも高まることから、一時休止することも検討します。帳票類の発送(封入封緘を含む)やメディアの授受は、人手のかかる作業であり、欠勤率が高くなると業務継続に影響がある一方で、縮小するには社内ユーザーや顧客との調整も必要になってきます。作業の代替要員の確保ができるか、発送頻度を減らすなどのサービス・レベルの見直しが可能かどうかを検討します。
システム部門内でできる検討に加え、業務部門がパンデミック時にも稼働を求める重要アプリケーションの確認もします。重要アプリケーションの運用に関与しているIT要員やキーマンは感染防止のためにチームを分かれての作業を検討したり(スプリット・オペレーション)、自宅からも最低限の指示や状況共有ができるインフラを検討します。情報システム部門に起因する問題で、感染の少ない地域の業務に影響が及ぶことを防ぐためには、幅広い対策が必要と考えます。
IBMは、パンデミック発生時の業務継続をサポートするITサービスについて、診断・コンサルティングから設計、実装まで幅広いソリューションをご用意しております。例えば、「デスクトップ・ビデオ」は一般的なPCをはじめ多様な端末から利用でき、在宅による業務の継続や非対面での顧客サービスの提供など、パンデミック時のコミュニケーション機能の維持・強化に向けたソリューションです。やがて来る冬に向けて、新型インフルエンザ対策の再考が望まれています。IBMは、パンデミックに負けない社会を願い、ITを使って金融機関の皆様をご支援してまいります。
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