掲載月 : 2010年9月
日本生命保険相互会社(以下、日本生命)は、環境負荷低減の取り組みの一環として、データセンターの省資源・省エネルギー化(グリーン化)に着手しました。IBM独自のシミュレーション技術を駆使した「データセンター空調最適化ソリューション」によって温度や気流の分布を可視化し、空調機の運転台数や風量をきめ細かく策定。その結果、新たに設備投資をすることなく、診断から3カ月でデータセンターの空調機の年間消費電力を約24%、CO2換算で年間約610トンの排出量削減に成功しました。※1
全社的に取り組む地球環境保護の一環としてデータセンターのグリーン化に着手
日本生命は、CSR(企業の社会的責任)の観点から地球環境の保護に向けた積極的な取り組みを重ねてきました。
例えば、1992年から植樹・育樹活動に取り組んでいるほか、2000年に環境委員会を立ち上げ、地球環境保護への取り組みを全社規模で展開するとともに、2001年5月に環境憲章を制定。オフィス内における省エネルギー、省資源、リサイクルを積極的に推進し、同年12月に大阪本店ならびに東京本部において環境マネジメント・システム規格ISO14001の認証を取得するなど、継続的な環境配慮に努めています。近年でも、プロ野球の「日本生命セ・パ交流戦」の照明で使用される電力分の『グリーン電力証書』を購入。3年間で累計100万5,000キロワット分を各球団に寄贈するといった活動でも高い評価を得ています。

新統合推進部
コンピュータ
センター長
太田 浩史氏
そうした中で、同社が新たなテーマとして注力しているのが、データセンターにおける消費電力の削減です。同社新統合推進部のコンピュータセンター長を務める太田浩史氏は、次のように話します。
「大量の電力を消費するデータセンターのグリーン化は、もはや社会からの要請となっています。データセンターが現状でどの程度効率性を達成しているのか、Power Usage Effectiveness (PUE:電力使用効率)の数値を基に、通信事業者などが運用する最新のデータセンターと比較を行った結果、当社のデータセンターには環境面でもコスト面でも改善の必要があることがわかりました。もちろん、データセンターのグリーン化は、電源設備や空調設備などのファシリティーに依存する部分も大きく、長期的な視点で取り組んでいく必要があります。しかし、まずは私たち情報システム部門自身が主体となって実践可能な対策もあるのではないか、そんな自発的な思いから今回のプロジェクトは始まりました」
データセンター内の温度や気流の分布を精密な実測とシミュレーションで可視化

データセンター内の温熱分布を
コンピューター・シミュレーショ
ンしたイメージ
日本生命がデータセンターのグリーン化を推進していくにあたり、そのパートナーとして選んだのがIBMです。
「当社はメインフレーム時代から長期にわたるIBMとの付き合いがあり、システム構築や運用はもちろん、主要データセンターにエンジニアが常駐した保守体制など、さまざまな場面で密接なサポートをいただいています。そうした信頼関係から、今回のグリーン化に関しても協力をお願いすることになりました」と太田氏は説明します。
依頼を受けたIBMは、豊富な実績を通じて培ってきたITファシリティー管理のベストプラクティスに基づく「データセンター空調最適化ソリューション」を提案。20年にわたり、さまざまなデータセンターでのサポート経験を持つグリーン・ファシリティー部門の専門家が、導入サービスを担当することになりました。
具体的には、データセンター内のIT機器の吸気温度分布・穴開きタイルの位置や空調機の稼働状況などに関して現状を細かく調査し、大和研究所の最新サーマル・シミュレーション技術により温度や気流・圧力の分布を可視化した上で、機器の安定稼働や効率的な空調環境などの観点から、最適な空調機の運転台数や風量を策定し、データセンター内に適用しました。使用したツールでは大和研究所の研究により、精度を高めた解析を実現することができました。
「構想の初期段階では多くのベンダーから話を伺いましたが、IBMほど精緻なレベルで計測やシミュレーションを行い、実施すべき改善策ならびに必要となるコスト、その結果として達成する目標値までを明示し、プロジェクトの全体計画をリードしてくれた提案は他にありませんでした」と、太田氏は高く評価しています。
予想を上回るCO2、コスト削減を実現。見える化はレイアウト計画にも効果

「IBM Smart Data Center Energy
Efficiency Award」を受賞した
プロジェクト・チームの皆さん
日本生命におけるデータセンターのグリーン化は、第一弾として2009年10月から約3カ月間かけて作業が実施され、2010年1月に試験運用を開始しました。
結果として明らかになったのが、電算室の年間空調電力を約24%削減できるという効果です。これは年間172万キロワットにも及ぶ消費電力の削減であり、CO2換算で年間約610トン※2の排出量削減に相当します。金額換算では、年間7,500万円かかっていた電算室の空調電力費用のうち、1,800万円を削減できることになります。※1
「提案時に示された削減の期待値は年間1,500万円程度でしたが、社内では『本当に実現できるのか?』と、懐疑的な声も多く聞かれました。ところが結果は、当初の予想を大幅に上回るものだったのです。電源や空調などの新たな設備投資や増強を一切行うことなく、フロア内の気流管理を改善するだけで、これほどまでに消費電力を下げられるという事実は驚きでした。短期間で成果が出たことについてもとても満足しています」と太田氏。また、副次的な効果について、言葉を続けます。
「これまで二十年来、部屋全体を冷却すれば安全だし経済的だという観点で空調をしてきました。気温測定は広い室内の数カ所のみで、そこさえよければ問題ないという認識でした。しかし、実際はサーバーの吸い込み口のところの気温が肝心だという点に気づかされたり、空気や熱の流れを『見える化』することの大切さを実感することができました」
さらに、効果は将来的なレイアウト計画にも及びます。日本生命では従来、新サーバーの設置は各システムの担当チームごとに行っていましたが、今後はデータセンター全体として一貫したガバナンスのもとで、空調効率を考慮しながら進めるよう、見直しが行われています。
なお、今回の取り組みは、今後の大規模基幹系データセンターの模範となる極めて優れたものであり、IBMは日本生命に対してエネルギー効率化において顕著な成果を上げたユーザー企業を表彰する「IBM Smart Data Center Energy Efficiency Award」を贈呈しました。同賞の受賞は世界中でもまだ数社のみで、大規模基幹系データセンターにおいて、日本生命は国内で初めての受賞となりました。
さらなる省エネルギーを推進するため、「ダイナミック空調コントロール」についても検討中
より効率的で省エネルギーなデータセンターを追求し、日本生命は引き続き検討を進める予定です。そこでは、IBMの「ダイナミック空調コントロール」のコンセプトも参考となります。これはデータセンター内で動的に変化する各所の温度情報をIT機器や温度センサーで収集し、空調の給気を自動制御するものです。「現状の仕組みのもとでは、空調装置は常に一定の出力で運転を続けています。しかし、実際には各サーバーの稼働率は曜日や特定時間帯によって増減があり、発熱量も変わってきます。費用対効果の検証が前提になりますが、この発熱量の変化に合わせて空調の出力を最適化することで、余分な空調エネルギーを制御することができれば、さらなる省エネルギー効果が得られるものと期待します」と太田氏は話します。
また、これと並行して日本生命では、仮想化技術をベースとしたサーバー統合など、ITリソースの利用効率を向上することでワット比パフォーマンスを高める、すなわち相対的な観点での消費電力を削減していくといった施策も積極的に推進しています。
こうした取り組みの先に見えてくるのが、世の中で最先端レベルとなる大規模基幹系データセンターのグリーン化です。
「現在、データセンターのグリーン化に対する社会的な評価は、PUEの数値が大きなポイントとなりつつあります。私たちとしても一つの通過点として、できるだけ早期にPUE数値で1点台後半を達成したいという目標を持っています。IBMにも協力をいただきつつ、さらに省エネ効率を高める努力をしていきたいと思っています」と太田氏は、意気込みを新たに語りました。
※1 自社データに基づいて算出。
※2 関西電力による2008年度CO2排出係数「0.355kg−CO2/kWh」に172万kWhを掛け合わせたもの。
掲載されている情報は2010年9月現在のものです。内容は事前の予告なしに変更する場合があります。
ソリューション情報は、すべての場合において同等の効果が得られることを意味するものではありません。効果はお客様の環境その他の要因によって異なります。
製品・サービス等詳細については、弊社もしくはIBMビジネス・パートナーの営業担当員にご相談ください。
IBM、IBMロゴ、ibm.comは、世界の多くの国で登録されたInternational Business Machines Corp.の商標です。他の製品名およびサービス名等は、それぞれIBMまたは各社の商標である場合があります。現時点での IBM の商標リストについては、http://www.ibm.com/legal/copytrade.shtml(US)をご覧ください。
Adobe, Adobeロゴは、Adobe Systems Incorporatedの米国およびその他の国における登録商標または商標です。
