掲載日:2009年4月2日
日本IBMでは、IT企業という立場から都道府県CIOフォーラムに協賛しています。2009年1月29日から30日に開催された、第6回 春季会合では、公共事業CTO 技術理事である長島哲也が「エンタープライズ・クラウドの活用でITコスト削減、産業振興なども実現」というテーマで講演を行いました。
日経BP社 ITpro 都道府県CIOフォーラム 第6回 春季会合
日本IBMでは、自治体のシステム共同化に向け、イントラネット・SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)モデルを提案してきました。エンタープライズ・クラウドをその発展系として位置づけ、自治体で利用されるだけではなく、地域のIT産業振興に役立てたり災害対策などでも活用することを提案いたします。
いろいろなクラウド・コンピューティングの形態
地方財政が厳しさを増す中で、ITコスト削減の切り札としてクラウド・コンピューティングが注目を集めています。自前で業務システムを持つ代わりにインターネットやイントラネット上にあるサーバーや業務アプリケーションを利用するクラウド・コンピューティングによって、コンピューター・リソースを必要なときに必要なだけ調達できるのでITコストの削減が期待できます。
自治体だけでなく、民間企業の間でもクラウド・コンピューティングに対する関心は高まっています。ただ、「クラウド・コンピューティングを利用すれば近い将来、自前でITシステムを持つ必要がなくなる」とか、「インターネット上のサービスだけで自治体のシステムができてしまう」という声を聞きますが、これは誤解です。
エンタープライズ・クラウドも利用し業務によって使い分け

エンタープライズ・クラウドの取り組みのイメージ図
クラウド・コンピューティングの代表例とされるGoogleやAmazonのサービスは、「パブリック・クラウド」と呼ばれ、クラウド・コンピューティングの一形態にすぎません。ほかに、データセンターや庁内に自治体専用のクラウド・システムを構築して利用する「エンタープライズ・クラウド」と呼ぶ利用形態があります。
エンタープライズ・クラウドもパブリック・クラウドと同じく、サーバーやディスク装置、ネットワークなどを仮想化し、その上でSOA、SaaSやWeb2.0で作成したアプリケーションを動かす形態です。庁内にクラウド環境を持つことで、パブリック・クラウドで懸念される情報漏えいといった不安も解消できます。
すべての業務システムをパブリック・クラウド上に構築することは現実的ではありません。パブリック・クラウド環境と庁内に構築したエンタープライズ・クラウド環境、およびエンタープライズ・クラウドへ移行前の自前システム環境をうまく連携しながら使い分けていくのがクラウドの賢い使い方です。
クラウド・コンピューティングの実現には、サーバーやディスクなどの仮想化に加え、コンピューター・リソースを管理するワークロードの監視・管理機能、リソースの割り当てを決めるプロビジョニング機能などが必要です。これらの機能を備えることで、通常1件/ 秒のトランザクションを処理するシステムが瞬間的に1000件/ 秒の処理能力を必要とした場合でもコンピューター・リソースをダイナミックに変更して対応できるし、翌日から1万件/ 秒のシステムを稼働するといった事態に直面してもアプリケーションが稼働する環境を短時間で構築できるのです。

IBMが目指すエンタープライズ・クラウド・コンピューティングのイメージ図
日本IBMでは、従来から培ってきたミッションクリティカルなトランザクション処理技術やセキュリティー技術、AjaxなどのWeb2.0実現技術をベースに、仮想化/プロビジョニング/サービス・リソース管理(IBM Tivoli Service Automation Managerで既に実現)などのクラウド・コンピューティング技術を利用した次世代エンタープライズ・データセンター(NEDC)という新しいITビジョンを提唱しています。
この技術はIBMが世界各国で展開を始めている「クラウド・コンピューティング・センター」でも利用されていますが、自治体独自で構築する「エンタープライズ・クラウド」構築支援サービスも提供し始めています。
災害対策やIT産業振興にも有効
自治体にとってクラウド・コンピューティングのメリットはITコストの削減に限りません。「必要なリソースを短時間で提供する」というクラウドの特徴を地域のIT産業の振興に役立てることも可能です。
具体的には、自治体がクラウド・データセンターを構築し、地元のIT企業が必要なときにコンピュータ・リソースを使い、開発環境やテスト環境として利用する、といったことが考えられます。開発プロジェクトが終わったらリソースを返せるので、地元企業は新たなハードウエアなどの調達コストを抑えられます。既に中国の無錫市はシステムエンジニア育成のための開発環境としてIBMのクラウド・センターを採用しています。また、九州大学大学院システム情報科学研究院が学生の研究用に日本IBMと共同でクラウド・データセンターを構築したように、IT技術者の養成にも役立ちます。
BCP(事業継続計画)に不可欠な災害対策の実現にもクラウド・コンピューティングは威力を発揮します。現在、オランダのiTricityがIBMと共同で進めているクラウドを使った災害対策の実証実験はその好例です。
災害対策に必要なバックアップシステムはコールド・スタンバイ状態で運用しているので、通常時はシステムリソースが無駄になります。しかし、クラウドを利用すれば、その無駄は省けます。例えば、2つの県がそれぞれクラウド・データセンターを構築し、互いが災害対策サイトになるようにしておけば、仮に1つの県で災害が発生してシステムが停止しても、もう1つの県のクラウド・データセンターは瞬時にリソースを割り当てて災害対策を実現できるのです。
クラウド・コンピューティングの活用次第で、自治体経営は大きく変わる可能性があります。
関連資料
過去に都道府県CIOフォーラムで行った講演につきましては、こちらをご覧ください。
- 「真の自治体共同化実現に向けて—イントラネット・SaaS構築のための最新技術—」 都道府県CIOフォーラム 第6回 年次総会でIBMが講演
- 「SaaSを視野に地銀・中小企業の事例から学ぶ自治体共同化の方向 」 都道府県CIOフォーラム2008年春季会合でIBMが講演
- 「公式文書のプロセス管理におけるSOA適用例」 第5回都道府県CIOフォーラム年次総会でIBMが講演
- 「強固なセキュリティーを実現するアーキテクトアプローチ」 都道府県CIOフォーラム2007年春季会合でIBMが講演
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