掲載日:2009年10月5日
2009年8月27日から28日に開催された、都道府県CIOフォーラム 第7回 年次総会では、公共事業CTO 技術理事である長島哲也がクラウドの適切な使い分けについてご提案いたしました。
日本IBMは、動作特性の異なる2つのクラウドで、クラウドコンピューティングに全方位で臨んでいます。プライベート・クラウドの領域には、クラウド専用インフラストラクチャーのIBM CloudBurstを、パブリック・クラウドでは、包括的ソリューションのIBM MCCSやSaaS型コミュニケーションツールのLotusLiveをご提供しています。
クラウド・コンピューティング向きの処理とは?
さまざまな解釈が存在する「クラウドコンピューティング」。その本質は“ITを「保有/所有する」から「共有/使用する」環境(=シェアリング・エコノミー)への変革”ととらえられます。ただ、シェア(共有)の単位は、世界中の企業/官公庁/自治体を対象とした規模、1部門/1事業の規模、1企業/1省庁/1自治体の規模、あるいは全企業グループ/全中央省庁/全自治体の規模などが想定されます。
まずは、クラウドという言葉を世の中に普及させた「インターネット規模の資源共有を実現」しているクラウドと、「企業・省庁・自治体規模でデータセンター内資源の共有」を目指しているクラウドを例にとり、その処理できる情報の違いを明確にすることが肝心です。
先のインターネット型クラウドでは、それに見合う巨大な処理能力を確保するために何十万台の超並列データ処理を用います。一方、データセンター型クラウドでは、インターネット型のような超並列処理は不要で、数台~数十台の並列処理(スケールアウト)で実現するのが一般的です。
このような並列処理の規模の違いは、処理できる情報に違いを生じさせます。情報処理においては、一般に、Consistency(一貫性)、Availability(可用性)、Partition(分散性)の3つのうち同時には2つしか実現できないことを、カリフォルニア大学バークレイ校のエリック・ブリューア教授がCAP定理として証明しています。
超並列型のクラウドでは、CAP定理のCを犠牲にしてAとPを実現します。これは何十万台という超並列(P)の可用性(A)は実現しながらも、銀行の口座処理や官公庁・自治体の国民・住民処理などの基幹業務では欠かすことのできない一貫性(C)を犠牲にして成り立たせています。具体的には、一時点でその口座・国民・住民を表すデータが複数存在することを許し(=一貫性の犠牲)、必要な時に一つにまとめる処理をすることによって正しい結果を求める仕組みです。
確かに、機能的にはこの方式でもITを構築できるかもしれません。しかし、現実には99.999%の稼働率や数千件/秒の処理性能、1秒以下のレスポンスなどの非機能要件が求められる銀行口座処理のような基幹業務に先の処理方式はそぐわないと言えます。一方、データセンター規模のクラウドでは、CAP定理の分散性(P)を犠牲(スケールアウト・レベルの分散に留める)にして、一貫性(C)と可用性(A)を実現しています。
つまり、超並列型クラウドは「一回の書き込みと多くの参照」に特化した情報を扱う処理には適していますが、「書き込み・更新・削除・参照」が頻繁に行われる処理にはあまり適しません。一方、データセンター型クラウドはその逆です。このように共有の規模により、扱う情報に向き・不向きがあることを認識し、クラウド処理方式を選択することが重要です。
プライベートもパブリックも。IBMの全方位クラウド戦略
IBMでは、クラウド立ち上がりの時期ということもふまえ、超並列を必要とするクラウド処理方式よりも、データセンター型クラウドに多くのソリューション・製品を提供しています。IBMが資源を提供するタイプをパブリック・クラウド、お客様自身が資源を確保するタイプをプライベート・クラウドと分類し、全方位で「IBMスマート・ビジネス・クラウド・ポートフォリオ」(図1)に基づいたソリューションを展開しています。

図1:IBMスマート・ビジネス・クラウド・ポートフォリオ
このうち、クラウド環境を構築するためのターンキー・ソリューションである「IBM CloudBurst」は、ブレードサーバー、ストレージ、ネットワーク機器といったハードウェアに、クラウド環境構築用のソフトとサービスをパッケージ化した新しいサービス指向型のソリューションです。「時間とコストをかけず、クラウド環境をすぐに構築したい」と考えるお客様の要求に応えて、コンポーネント化された製品を適切に組み合わせ、必要な時に必要なサービスとして提供することができます。
IBM CloudBurstでは、利用者がWebベースの構成指示画面からCPU数、メモリー容量、ディスク容量、OSの種類と仮想化方式や必要な期間を要求します。これに基づき資源プールからハード資源を、仮想イメージ・リポジトリーからソフト資源を取得して稼働用仮想環境を自動作成(プロビジョニング)するため、容易なクラウド環境構築・管理が可能となっています(図2)。対象がWebアプリケーションサーバーの場合は、専用機のWebSphere CloudBurstを使うとさらに手間が省けます。

図2:「IBM CloudBurst」クラウド環境構築
このほか、テスト/開発クラウド、デスクトップ・クラウドを展開中で、今後、ストレージ・クラウドや情報分析クラウドなどへの展開を予定しています。
また、パブリック・クラウドでは新たにIBMマネージド・クラウド・コンピューティング・サービスを発表しました。アウトソーシング契約のお客様に対して、CPU処理能力、メモリー容量、ディスク容量を従量課金制で提供します。情報系では、電子会議・SNS・ブログなどを含むIBM LotusLiveをSaaSの形態で提供しています。
さらに、資源を時間貸しするIBMコンピューティング・オンデマンド(CoD)、お客様のデータを、IBMのセンターに自動的にバックアップ・保管するデータ保護サービスも提供しており、今後、ソフトウェア開発用のテスト/開発クラウド、クライアント環境用のデスクトップ・クラウドなどを順次展開する予定となっています。
関連資料
過去に都道府県CIOフォーラムで行った講演につきましては、こちらをご覧ください。
- 「エンタープライズ・クラウドの活用でITコスト削減、産業振興なども実現」 都道府県CIOフォーラム 第6回 春季会合でIBMが講演
- 「真の自治体共同化実現に向けて—イントラネット・SaaS構築のための最新技術—」 都道府県CIOフォーラム 第6回 年次総会でIBMが講演
- 「SaaSを視野に地銀・中小企業の事例から学ぶ自治体共同化の方向 」 都道府県CIOフォーラム2008年春季会合でIBMが講演
- 「公式文書のプロセス管理におけるSOA適用例」 第5回都道府県CIOフォーラム年次総会でIBMが講演
- 「強固なセキュリティーを実現するアーキテクトアプローチ」 都道府県CIOフォーラム2007年春季会合でIBMが講演
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