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官公庁業務の特性にあったIT基盤構築に向けて

官公庁業務にSOAの手法を取り入れコスト削減を

官公庁業務の特性にあったIT基盤構築に向けて

掲載日:2009年4月10日

この記事は、「行政&情報システム」(社団法人行政情報システム研究所 刊)2008年12月号に掲載された、弊社寄稿記事を許可を得て転載したものです。

官公庁業務の特性にあったIT基盤のあるべき姿

現在、政府は先に策定された最適化計画に基づいて、業務・システム最適化の実施・評価を推進し、効率的な電子政府の実現を目指しているところと認識しています。また、業務・システム最適化の実施においては、最新の技術動向を踏まえた、PDCAサイクルによる改善も継続検討されています。このような状況において、システム開発・運用にかかるコストの大幅な削減は、政府全体を通じた共通の課題と考えます。
本稿では、オープンな技術を最大限活用し、かつライフサイクルコストを最小に抑える事が可能な「官公庁業務の特性にあったIT基盤(アーキテクチャー)のあるべき姿」について考察を行いました。

アーキテクチャー検討のポイント

システム開発・運用にかかる大幅なコスト低減を実現するためには、どのようなアーキテクチャーが必要となるのか。この課題を考えるときに、わたしたちはシステム開発を「ものづくり」として捉えることにしました。世界的な競争を勝ち抜くために、絶えずコスト低減に取り組み続けている製造業界において、昨今の潮流となっているのは「プラットフォーム化」と「コンポーネント化」によるものづくりといえるでしょう。
たとえば、世界的な競争の優位にたっている自動車業界を例にとると、複数の車種で共通に使用するプラットフォームと車種毎に異なるボディーとに分離した構造で作成されています。また、ある車種用のプラットフォームやボディーの内部構造をもう少し詳しく見てみると、コンポーネント化された部品(エンジン・コンポーネントや座席コンポーネントなど)が、ある程度取替え可能に設計されています(プラットフォームの例としては2500ccと3500ccのエンジンコンポーネントを交換可能。ボディーの例としては、廉価版・普及版・高級版の座席コンポーネントが交換可能など)。
このようなアーキテクチャーをとることによって、同一箇所で使用される部品を、最適な品質・コストで提供出来る(異なる)ベンダー製品を組み合わせて、多品種な自動車を低コストで市場に投入することを可能にしています。さらにこの取り組みは、販売開始後のアフターサービスへの迅速な対応(故障時の修理時間の短縮など)や、比較的大幅な仕様変更であるマイナー・チェンジへの迅速な対応などにも大きく寄与しています。

ITのコンポーネント化とサービス化

その潮流はIT産業においても例外ではありません。従来は業務ごとに必要なデータや機能、ユーザーインターフェースを定義し、それぞれを緊密に結合させてモノリシックなシステムを開発していました。このため、硬直的で柔軟性のないシステムとなってしまい、業務の変更にあわせたシステム変更が困難でした。
そこで、変更に柔軟に対応するため、アプリケーションによらず共通な部分(自動車のプラットフォームに相当)とアプリケーション毎に異なる処理が必要な部分(自動車のボディーに相当)に分けます。さらに、これらの共通部分と個別部分の内部は、プログラムを再利用できるよう「コンポーネント(部品)化」します。最近ではこのコンポーネント技術をベースに「サービス」化して、疎結合することによって、より柔軟性の高いシステムを低コストで開発できるようになりました。これが、いわゆるSOA( Service Oriented Architec-ture:サービス指向アーキテクチャー)です。
このSOAはIT産業にとって、大きな産業構造の変革であるのと同時に、利用者側にとっても、業務とシステムの関係を考える上で大きなパラダイムシフトであるといえます。特に、制度改正や組織改変が頻繁に行なわれる官公庁における業務プロセスの見直し等(自動車産業の販売開始後のアフターサービスやマイナー・チェンジに対応)に対し、サービス部品群の組み合わせで構築することで、システム改修の影響を最小化し、開発・運用にかかるコストの低減が可能となります。さらに、従来型のITシステムにおいて懸案であったシステム稼動後の高額なシステム改修コストの削減に寄与し、ライフサイクル・コストの低減効果をもたらします。

官公庁業務の特性にあったアーキテクチャーとは

この考え方に基づいて、私達は、官公庁においても府省の壁を超えて流用可能である「共通部分」と個別業務がそのまま投影される「個別部分」とに分けられるのではないか、と考えました。この仮説を元に、官公庁の基幹業務を支えるITにこの考え方を適用する検討を始めました。
各府省の役割は、「政策を立案する」「国民からのさまざまな申請や質問に対処する」などです。しかも、これらの処理をスムーズに間違いなく遂行するために「公的文書」を介して業務を遂行しています。言い換えれば、官公庁の基幹業務は「公的文書処理・管理」であると言っても過言ではないでしょう。それを支える基幹ITシステムは「公的文書処理・管理システム」であると言えます。
従来の方式で開発されたシステムの概念図
popup図1 従来の方式で開発された
システムの概念図
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また、中央省庁や地方自治体で稼働中の公的文書を扱う比較的先進的なITシステムを棚卸しすると、その多くは、利用者情報管理や認証、システム運用といった基本的な「共通処理」と、それぞれの業務目的に従って文書を処理する「個別処理」の2層構造になっていることが分かりました。しかも、個別処理部分は、文書の種類ごとに構築されているのです。
なぜなら、例えば交通費精算の書類と補助金申請の書類を比べると、書式がまったく異なるため、システムも個別に構築した方が効率良さそうに見えるからです。その結果、同じような構造を持つITシステム(図1参照)をいくつも構築・運用してきたことがコスト高の一要因になっていると言えます。

官公庁業務の特性にあったITアーキテクチャーの概念図
popup図2 官公庁業務の特性にあった
ITアーキテクチャーの概念図
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しかし、書式が異なるそれぞれ個別のように見える文書処理を、書式の観点ではなく、そこで発生する書類処理の観点から分析してみると、申請者が「申請する」、申請された書類を「受け付ける」、それを自・別部門で「審査する」、審査結果に基づいて上長の「承認をもらう」、これら全ての処理が完了したら申請に基づく処理を「実行する」、という処理パターンは同一であることが分かります。(図2参照)
つまり、申請−受付−審査−承認−実行という状態管理の観点で、共通する処理をくくることができれば、書式の異なる書類も共通のシステム基盤で処理することができます。この様に抽出された処理パターンを、型紙として標準化し、新たな業務をシステム化する際には、「型紙の一致度合い」を調査する事で共通処理可能か否かを判断出来る様になりました。この手法を用いていくつかの官公庁業務をベンチマークした結果、数百の物理的な書類を対象としたITシステムにおいても、数十の処理パターンに集約出来そうな感触を得ています。
さらに、書類そのものをXML(eXtensible Markup Language) で表現できれば、書類検索や書類検査、書類保存などの「文書そのもの」の操作部分も共通処理として括り出すことが可能であると考えました。
図2で示した新アーキテクチャーでは、図1の旧アーキテクチャーにも存在する「利用者管理」「認証」「システム運用」の共通処理に加えて、従来「個別処理」として構築されていた部分に、追加共通部分として「共通状態管理」「共通文書操作」が新たにくくり出せることを説明しました。次のページでは、これらの機能を低コストで実現する為の工夫を示します。

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