自動車業界をはじめとする製造業では、品質問題によるビジネス・インパクトが拡大する一方、グローバル化によって企業活動、とりわけ品質マネージメントが複雑化しています。IBMは最先端のデータ・モデリング技術に支えられた品質マネージメント・フレームワークによって、お客様のスマートな意思決定とパフォーマンスの最適化を推進します。
重要な意思決定を促すのは…インテリジェントな情報か、直感と経験か?
企業はグローバル化によって組織が複雑化し、ビジネスを取り巻く膨大で多種多様な情報は、最適化されないまま蓄積しています。多くのビジネス・リーダーは、必要で正しい情報に基づいて判断を行うことが困難になり、インテリジェントな情報ではなく、ほとんど直感と個人的な経験をもとに重要な意思決定を行っています。
IBMが提供するBAOは、最先端のデータ分析技術と最適化技術を活用して、膨大なデータからビジネスに有用な情報・知見を導き出すサービスです。BAOは最適化されないまま蓄積された企業の情報や、外部ソースの情報を最先端のデータ分析および最適化の技術によって、ビジネス・チャンスや脅威を事前に予測し、事実に基づくインテリジェントな情報・知見としてお客様に提供することができます。
自動車業界における品質
自動車メーカーにとって品質とは企業の価値そのものであり、品質に支えられたブランド・イメージは、市場競争力の源泉です。ところが、バリュー・チェーンには「品質」というボックスはありません。それぞれのプロセスの中に品質マネージメントが織り込まれているため、自動車の品質はとても広い領域にまたがっています。IBMでは、自動車の品質を大きく次の9つの領域に分けて考えています。
【自動車の品質 9つの領域】
- 設計・開発品質
設計図に代表される設計・開発段階における品質 - 生産品質
設計された通りに生産ラインで製造する品質 - サプライヤー品質
サプライヤーから購入する部品の品質 - 販売業務品質
自動車を販売する際のサービス品質 - アフター・セールス(サービス)業務品質
販売後の、修理・整備におけるサービス品質 - 市場品質(使用品質)
自動車の実使用環境における品質 - 製品感性・魅力品質(企画品質)
製品の感性や魅力の品質に着目した企画品質 - ワランティー・マネージメント
品質と密接に関連する製品保証、および求償のマネージメント - コーポレート品質マネージメント
上記全体をコーポレートの品質として捉えるマネージメント
これら品質管理業務に対して、「マネージメント改革」、「プロセス改革」、「情報活用改革」を通じてCS向上やクレーム件数低減などのKPIを達成し、品質競争力やブランド・イメージの保持向上を目指すことが、企業価値の向上につながるとIBMは考えています。
品質問題によるビジネス・インパクトの拡大
品質問題がビジネスに与えるインパクトは拡大しています。その理由には、次のような環境変化が考えられます。
- 世界戦略車の本格展開
一つのモデルが全世界で販売されることにより、1枚の設計書が全世界の自動車の品質問題へと波及する。 - 部品共有化
部品の共通化が進んでいるため、一つの部品の問題が複数のモデルをまたいだ品質問題へと波及する。フルモデル・チェンジ時に現行車種からの部品共有率は25%~30%だが、一部の車種では50%を超えている。 - 自動車の寿命の長期化
自動車の平均寿命が13年と延びたことで、経年劣化によって起きる品質問題の時間軸的スコープが広がっている。 - 電子化・電動化(多機能化・高機能化)
電子部品の比率が増加し、同様にコストに占める割合も増加している。2020年には電子部品比率は40%を超えると予想されている(すでに50%に達しているモデルも存在)。 - 複雑化するグローバル調達
グローバル化によってサプライヤーが増加し、外部調達品の品質マネージメントが難易度を増している。 - 市場シフト(新興市場の急速な成長)
新興市場の急速な成長によって加速する市場シフトに、品質マネージメントが追いついているか。 - 情報に対して敏感になった市場/ユーザーへの対応
SNSの普及など情報化が進み、買い手であるユーザーは口コミを含むさまざまな情報を入手している。最近では売り手よりも商品知識を持つ場合もあり、販売店などユーザーに接する担当者は、より豊富な情報を入手しなければならない。
図1 不具合の初報からリコール
届出までの期間の長期化傾向
図2 品質問題の早期発見/
早期対策の効果品質問題について、多くのお客様が早期発見・早期対策が最重要課題だと言われます。国土交通省のデータでは、自動車の不具合初報からリコール届出までの期間は、2008年度は平均で17.2カ月だったのに対し、2009年は20.4カ月と長期化する傾向にあります。品質問題への対応は、企業の情報収集能力、峻別能力、高度な分析・解析能力、組織連携能力、およびそれらすべてのスピードが問われます。問題の認知、原因の究明、具体的な対策という一連の流れを、いかに迅速に実行できるかが、その後のビジネスに大きく影響します。
品質問題への迅速な対策は、単にお客様への迷惑度を早期に軽減するだけではなく、問題のある部品を組み込んだ自動車の生産流出台数の軽減、その結果として既販車両に対する保証費などの削減にもつながります。逆に対策が遅れると、ブランド・イメージや社会的信頼が低下するなど企業価値の損失につながります。IBMの試算では、品質問題対策プロセス全体のリードタイムを平均2週間早期化できれば、年間で50億円の保証費コストの削減につながります。つまり、品質とは、CS、財務、ブランド・イメージ、CSRなどさまざまな分野にインパクトを与える大きな課題なのです。
広がる情報・複雑化する問題への対応
個々の領域ではきちんと品質をマネージメントされていらっしゃるのですが、企業全体の目線では十分な管理が進んでいないお客様もいらっしゃるかと思います。グローバル化によって多拠点での設計・開発・生産が増え、組織が複雑化する中で、個別の品質マネージメントだけでは十分とはいえないと考えます。
これまで販売店からの品質報告書やワランティー・クレーム情報、あるいはコールセンター情報に着目していれば、品質問題は概ね把握できると考えられていました。しかし、現在では国交省やNHTSAの情報、場合によっては、他社のリコール情報や苦情情報から、自社の問題を発見する必要に迫られています。自動車を買ったユーザーが、自身のブログやインターネット・サイトに書き込むコンテンツも無視できない影響力を持っています。一人のユーザーがYouTubeに衝撃的な映像を掲載したことで、一気に問題が大きくなったこともあります。このように多種多様な情報ソースを、日本だけではなくグローバルな視点で収集して分析していかなければならないのです。
また、地域の特性に適合した品質保証基準を、どのようにマネージメントしていくかも課題です。
今後の品質マネージメントには、多種多様で膨大な情報を収集・分析・解析し、問題の早期発見/早期解決を実現することが求められます。
品質マネージメント・フレームワーク「Smarter Quality Framework」
品質を適切にマネージしていくためには、将来の計画を立案してロードマップを描き、「品質インフォメーション・アジェンダ」を策定するべきだとIBMでは考えます。このアナリティクスへの取り組みは、当初から企業全体を包括的な視点でとらえることが非常に重要です。その策定には、次の6つのポイントがあります。
- 全体品質管理として必須のデータ、コンテンツを明確にする
- いつ、どこでどのようにそれらの品質情報を収集し、活用するのかを明確にする
- 品質に関するデータ管理プロセスとガバナンス実務を決定する
- 最も見返りの大きな品質領域における情報活用プロジェクトを明確にし、優先順位をつける
- 品質マネージメント目標と企業戦略の方向性を合わせる
- 直近および将来ニーズの双方を満たす品質情報インフラストラクチャーをデザイン・構築し展開する
さらに、品質に関連するあらゆるデータを、アプリケーションや業務プロセスを超えて利用できる情報資産に転換し、品質マネージメントの高度化を実現する仕組みとして、品質マネージメントのフレームワーク「Smarter Quality Framework」を推奨しています。Smarter Quality Frameworkは、組織の複雑化と情報の多様性に対応した品質マネージメントを実現することを目的としています。
スマーター・クオリティ仮想データ統合
図3 Smarter Quality Data
Modelによる仮想データ統合Smarter Quality Frameworkを支えるITの仕組みとして、IBMでは「スマーター・クオリティ仮想データ統合」を実現します。設計に関する情報、生産に関する情報、販売店からの情報、ワランティー・クレーム情報に加え、コールセンター、当局情報、インターネット、プローブ・データなど多岐に広がりを見せる情報を収集し、データ・モデリングによって仮想的にデータをつなげ、ユーザー目線で自動車のライフサイクル全体に渡る品質の情報を提供することができるようになります。多様で膨大なデータをつなぐのは、最先端のデータ・モデリング技術です。また、製品の良し悪しを評価するため、品質を数値化して分析するなど、品質マネージメントに必要なビジネス・アナリティクスにも支えられています。
スマーター・クオリティ仮想データ統合によって、ユーザーがコールセンターに挙げたクレームに対し、同じ車種で問題はおきていないか、部品を共有化している別の車種で問題が起きていないか、あるいはクレームに関連して、どのようなワランティーが挙げられているかなどを即座に知ることができます。さらに、販売店からの関連情報やインターネットの情報など幅広い情報を活用することで、品質問題の早期発見や解決を可能にします。
もちろん、データ統合が簡単に実現できるわけではありません。たとえば、ワランティーのデータモデルを持っているお客様は多いのですが、NHTSAの情報を扱うデータモデルを持っているお客様は多くありません。ましてや、インターネットのブログの情報や、プローブ・データを扱った経験のあるお客様は、さらに少なくなります。情報はそれぞれの組織や業務にひも付いており、利害関係があります。たとえば、北米にあるコールセンター・ログをすぐに見たい、新興国の代理店に類似の問題報告がないか調べたいと思っても、現実に実現するには超えなければならない壁がたくさんあります。しかし、その難しさにお客様と一緒に挑戦するのも、私たちのミッションだと考えています。
最後に意思決定を行うのは「人」である
今回紹介した以外にも、さまざまなソリューションでお客様を支援しています。企業の扱うデータの80%はテキスト・データなどの非構造化データだと言われていますが、IBMではテキスト・マイニング技術によって、これまで簡単には分析できないと思われていた構造のデータも分析可能になってきています。ただし、最後に品質をみて判断し、意思決定を行うのは「人」であることは、今後も変わらないと考えています。多様で膨大なデータから有用な情報へと置き換える作業をITが担当し、それに人が知見(インテリジェンス)を加え、新たな視点・知見を見出し、今起こりうる問題に挑戦する。本当に人にしかできない部分だけを人が実行する、そんな仕組みをお客様に提供していきます。
より詳しいご説明を希望されるお客様や、自社での導入の相談を希望されるお客様は、当ページ右上にございますお問い合わせフォームより、お気軽にご連絡ください。
著者ご紹介
日本アイ・ビー・エム株式会社
ビジネス・アナリティクス・アンド・オプティマイゼーション
オートモーティブ・ソリューション
インダストリー・コンサルタント
高野 善隆
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