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2003年10月、業界で名のある融資銀行が、国策により目覚しい経済業績を上げている4カ国をまとめて、BRICと名づけています。ブラジル、ロシア、インド、中国のことで、頭文字からとられています。1 どの国も大幅な経済成長が予想されている事では共通していましたが、その中であまり表舞台にでることのなかった国があります。ブラジルです。
ブラジルにはそうなる理由がありました。BRIC国が台頭してきた当初は、中国およびインドは、世界中を巻き込んだ大論争の当事国であったことです。海外生産と海外アウトソースの2大問題です。したがって、その問題ではマスコミもその2国に集中することになったのです。一方、ブラジルの経済回復といえば、BRIC諸国に比べれば、遅れをとり、国内生総産高も低く、インフレーションも高い状態でした。2
しかし、当初の様相はあらゆる点から変わり始めています。ブラジルの財政は安定の兆しが見え、過去に経済発展を妨げてきた要因も取り除かれ始めています。この状況は、2005年7月に通過した新しい「Innovation Law」3 を含むブラジル政府の経済的拡大への公約とともに相乗効果を生み、ブラジルをイノベーション指向のビジネスにとってますます魅力的な国にしているのです。
ところが、ビジネスウィーク誌は、ブラジルのIT産業が、2000年以来年率10%で成長していることから、「新興技術のインキュベーター」と呼んでいます。ハイテク製品およびサービスの輸出は、2004年の5億ドルから、2007年には20億ドルに拡大すると見込まれています。4 内情に通じている関係者にとっては、少々驚くべきことです。ブラジルIBMグローバルサービスのバイスプレジデントであるロバート・ペインは、「ブラジルでは、既存のインフラストラクチャーによる制約が比較的ありません。その結果、あらゆる面でオンデマンド環境への移行態勢も整っているといえます」と述べています。
事実、ブラジルのビジネス社会からイノベーションは生まれないと見られていましたが、現状より、もっと評価されてくるはずです。この国のビジネスで最重要な部門をしめる農業が繁栄した理由として、農家がローテクの問題に対して、ハイテクのソリューションを必死になって見い出そうとしたことも寄与していると、IBMブラジルでゼネラル・マネジャーを務めるロゲリオ・オリベイラは述べています。例えば、農業において今や、GPSを用いて天気と土壌の状態をモニターすることが普通に行われ、これにより農家は、灌漑、肥料、種まき、および収穫のサイクルを生産目標に合わせて微調整できるのです。このようなテクノロジーにより、農作物の収穫量が大幅に上がります。いまや、農業はブラジルの国民総生産(GDP)の10%、労働力も20%を占めるまでになり、マクロ経済からも重要な産業です。5
ブラジルには、過去、農業生産物を創意工夫して応用しようとした経緯があります。1970年代に始まったオイル危機の時、ブラジルは、豊富なサトウキビを原料に、代替燃料としてエタノールを生産し始めました。80年代半ばまでには、ブラジルで販売される新車の大部分はエタノール車になり、今日では、エタノールは、国内の燃料消費の40%を占めています。6
農業以外の産業で、前向きの発想が成功した例としては、航空機製造があります。1995年にEmpresa Brasileira Aeronautica、通称エンブレア社は、倒産寸前でした。当時の新任CEOであったマウリシオ・ボトロ氏は、同社の危機的状況は、顧客ニーズを予測しきれなかったのが原因であるとの結論を出しました。航空業界は当時、中小都市間の定期便を増発するという再編成の過中であると察知し、エンブレア社は、50席の地方便用ジェット旅客機の製造を推し進めました。販売予想台数は、400機でしたが、実際には、2005年の第1四半期までに900機を販売しています。エンブレア社は、この成功を元に、JetBlue社と別航空機モデル、201機の契約を結びました。契約額は、60億ドルにのぼります。7 |