少ない投資では、効果も期待薄
革新的な企業は、安全策を選択するばかりではない
型破りの発想がイノベーションを推進するというならば、失敗する自由を認めることはどのくらい難しいのでしょうか。
Richard Tanner Pascale氏とJerry Sternin氏は、ハーバード・ビジネス・レビュー誌で次のように述べています。*1「イノベーションはすべて、安全だから受け入れるということではなく、革新的な企業は、基本的にハイレベルのリスクを受け入れる必要があります」2人はさらに探究をすすめ、次のことに気がつきました。「解決への道筋が損失の可能性やほかのリスクによって閉ざされているため、問題は未解決のままになっていることが多いのです。未知の領域に足を踏み入れることは、リスクが伴うことだと認識をせざるを得ないのです」
たとえば、部外者に門戸を開き、研究開発などの大切な分野で協業できるようにするのは、大部分の企業にとって、大きな社風の切り替えです。従来の成果主義に衝突する管理方法を捨て去ることは、経営者の意向を試すものです。さらに、社員が同一組織内でも枠組みを越えてコレボレーションしようとするには、特別な努力と強固な意思が必要です。社風を変更することが簡単だという人はいないでしょう。
さらに気が重いことですが、イノベーションコンサルタントDoblin Groupは、「イノベーションを推進しようとしている企業のうち約96%が投資効果収益の目標を達成できないと予測しています。利益を生み出す革新的なアイデアは何かを見極める原点となります」*2
イノベーションの実現は、個人や組織によるリスクテイクに依存します。したがって、この恐れを知らずに変革を進めようという人たちを、育成し、彼らを保護することが必要になります。実際、経営者からの精力的なサポートが不可欠です。なぜなら、失敗が許されるということは、自由に未知の領域に足を踏み入れ、未開拓の市場を開拓できるということであるからです。
もちろん最大のリスクは、何も成果を残せないという場合もありえます。グローバルな視点から、IBMのテクノロジー戦略およびイノベーション担当バイスプレジデントであるアービング・ラダウスキー・バーガーは、競合の観点から次のように自問しています。「まだ、やり残しているイノベーションは何だろうか?」
ブレークスルーにつながるビジネス機会の追求をやめるとき、私たちは何を失っているのでしょうか?殿堂入りしたアイスホッケー界の偉人でありNHL史上最大の得点王であるWayne Gretsky氏は、次のように簡潔な意見を述べています。「リスクをおかさないシュートは100%はずれるものです」
<アービング・ラダウスキー・バーガーとジョン・パトリックのインタビュー>
ジョン: リスクをとることは、イノベーションを推進する上で重要な部分です。それなしでは、ビジネスで成功するための計画をつくることはできません。新しいアイデアが必要です。新しいアイデアをつくるプロセスをもたなければいけません。
アービング: 企業には選択肢があるという前提で、企業が危険を冒してまでイノベーションを推進するのかという質問は、とても興味深いものです。
ジョン: ほとんどの新しいアイデアは、偶然から生まれたものです。アイデアは、予想外の過程から生まれることがあります。「う〜ん。考えていたようにはうまくいかないなぁ。でもまてよ、これって新しいアイデアじゃないか」という風に。
ジョン: 多くの企業では、こんな姿勢で臨んでいます。ビジネスの95%を成功させなければならない。すべてのアイデアを使って品質向上につとめよう。本当にすぐれたアイデアだけを実行しよう。しかし、そのような意識を持っていては、人々はリスクを冒すことをしません。そして誰もがリスクを冒さないのあれば、イノベーションを進めることはできないのです。
| *1: |
Harvard Business Review、2005年5月号 |
| *2: |
ビジネスウィーク誌、2005年8月1日号 |
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