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イノベーションの復権

新たな成長の波を起こす原動力

はじめに
経済の最悪の時期は終わりを告げ、いまこそ、再び成長の軌道に戻る時です。

ビジネスのイノベーションが再び活発化しつつあります。それは、オンデマンドな企業が新規顧客を獲得するための新たな手段を見つけ出すチャンスでもあります。以下のインタビューでは、IBMのコーポレート・ストラテジー担当バイス・プレジデントであるマイケル・ジスマンと、オンデマンド・イノベーション・サービス担当バイス・プレジデントであるペギー・ケネリーが、新たな波が企業にどのようなメリットをもたらすかについて語っています。
イノベーションの再発見
企業は、どうすれば生産性にとらわれている現状から、イノベーションの段階へのシフト・チェンジを開始することができるのでしょうか?

ジスマン:まず、いま企業が直面している状況を踏まえて考える必要があります。すなわち、現在は景気低迷の状態から脱しつつあること。経済はグローバル化に向かって突き進んでいること。この二点を認識すべきです。つまり、私たちの周辺のさまざまな場所で変化が起こっているのです。その上で、企業は次のような疑問を投げかけています。「私たちが属している業界の将来は? バリュー・チェーンはどのように分解されバラバラになってしまうのか? 私たちはどのような役割を担うべきか? どの分野でバリュー・チェーンにおける差異化を発揮すればよいのか? どこに力を注げば、本当の意味で付加価値を提供することができるのか?」

イノベーションを生み出すことが、企業にとって重要なのはなぜでしょうか?

ジスマン:新たな挑戦を試みもしないで、成長を手に入れることはできないということは誰もが気づいています。恐ろしいのはそれだけではありません。数多くの調査が示すところによると、ほとんどの企業は、いったん成長が止まると、せいぜいインフレ率と同程度しか成長できないといわれています。これらは、成長を持続することはとても難しいということを表しています。私たちの選択肢は前進するか、後退するかのどちらかしかありません。その場にとどまることはできないのです。このような状況のなか、経営者が今日直面している課題は、企業の成長をどこに求め、その成長を可能にするプラットフォームは何か、ということにあります。そして多くの場合、テクノロジーは手段のひとつとして挙げられています。重要なのは、新しいビジネス・モデルを開発し、新たな領域に移行するために、どのようにテクノロジーを活用するかということです。

ITイノベーションとビジネス・イノベーションを、どのように調和させたらよいのでしょうか?

ジスマン:過去20年間、IBMのビジネスおよび社内業務において、多大な努力がITイノベーションに注がれてきました。現在では、真の価値創造を求める分野に着目するならば、個々のビジネス課題を解決するためにITをどのように応用するかが重要になってきています。つまり、ITイノベーションを核としつつ、それをビジネスと関連づけ、ビジネス課題に焦点を合わせることが、ビジネス・イノベーションにつながる道となるのです。

次なる破壊的なテクノロジーは何でしょうか?

ジスマン:破壊的テクノロジー(disruptive technology)は、主流ではなかった領域から出現して、人々を大いに驚かせます。インターネットもその一例です。私たちは、これからもITイノベーションを経験し続けることでしょう。ITはすでに成熟しているという類の考えは、とても愚かであると私は思います。

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グッド・アイデアを越えて
イノベーションとグッド・アイデアとの違いは何でしょうか?

ジスマン:多くの人々がイノベーションと発明を混同しているのではないでしょうか。両者は全く異なるものです。あるIBMの施設の壁一面には、IBMが取得した特許のリストが掲示されています。それが発明です。これらの発明をイノベーションに転換できなければ、それこそ私たちにとって恥ずべきことです。発明を現実の問題に適用することがイノベーションなのです。

イノベーションの担い手はどこが違うのでしょうか?

ケネリー:イノベーションの担い手にとってカギとなる特性は、他人と異なる発想を持ち、型にはまった考え方に陥らず、事実であると知っている事柄や過去の経験によって発想を制限しない能力です。これにより、一見すると不可能なことでさえも検討する姿勢が身につきます。いま不可能なことも、いずれは可能になるのではという疑問を持つことが重要です。そして、イノベーションを生み出すためには、これにとどまらずに考え続けることが必要なのです。

近い将来、イノベーションはどのようにして起こるでしょうか?

ジスマン:イノベーションは次から次へと変化し続けるでしょう。かつては、CPUとディスクドライブがイノベーションでした。その後、イノベーションは通信、そしてインターネットのことを指すようになり、さらにはアプリケーションのことになりました。まさに、ビジネスとテクノロジーの交差点において次々とイノベーションが生み出されていくのです。このことから、私たちはこれからも過去の様相が移り変わる様子を目にし続けていくのではないかと考えています。私たちは、イノベーションの意味をビジネスとITのコ・エボリューション(co-evolution: 共進化)であると捉えています。ビジネスもITもそれぞれ孤立したままでは進歩することができない段階にまで達しているからです。両者はお互いの存在なくしては成り立たないのです。
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オンデマンドの世界におけるイノベーション
オンデマンド・ビジネスにとってイノベーションはどのような意味があるのでしょうか?

ケネリー:企業の部門間の壁が解消されるとともに、社内のビジネス・プロセスや部門を横断するコラボレーションが促進されます。問題点に対して異なる視点を持ち、異なるスキルを持つ人々が接することは、イノベーションをいっそう促進し、よりよいアイデアの発案につながります。それは、私自身の所属している組織、オンデマンド・イノベーション・サービスにおいても実践されている事柄のひとつです。

コ・エボリューションとは何でしょうか?

ジスマン:コ・エボリューションは生物学に由来する言葉です。コ・エボリューションとは、2つの生命体が共同でしか繁栄することができないこと、一緒に成長することしかできないことを意味します。それは、私たちの世界においても100%あてはまります。企業はITを活用し、そしてITは企業の要求に応えて開発し発展します。例えば、銀行や航空会社などの業種について考えてみてください。果たして、これらの業種がITの力なしで、今日あるような形で存在することができたでしょうか。答えはもちろん、ノーです。ITなしで航空会社が業務を運営することが想像できますか? ITなしで銀行業務を遂行することが想像できますか?今後も、このようなビジネスとITの存在が二人三脚の関係で前進していくことになるでしょう。

いま、最も興味深いイノベーションはどこで起こっていますか?

ジスマン:本当に興味深いイノベーションは応用のレベルで次々に起こるものと考えています。そのイノベーションがどこで起こるかを理解するためには、業界についての深い専門知識が必要です。
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象牙の塔の住人からの脱却
IBMのオンデマンド・イノベーション・サービスとは何でしょうか?

ケネリー:オンデマンド・イノベーション・サービスの主要な目標のひとつは、当社の研究者が外に出てお客様と緊密に協力し、最も難しいと考えられるビジネス課題を解決することです。

私たちは、研究者に現実に起こっている問題に取り組む機会を与えているのです。彼らは新しいアイデアや発明をイノベーションとして携えて行き、お客様のシステムに適用します。このような業務形態を採用することにより、研究者は現場での経験を活かして次世代の革新的なプロジェクトを促進することができるのです。

私たちは、IBM ビジネス・コンサルティング・サービス部門の持つ高度な業界専門知識、IBMリサーチが所有する先進のテクノロジーや高度な科学技術の知識、そしてそれぞれの業界のエキスパートであるお客様の知識、こうした3つの異なる視点と各グループの人材を結集して問題を解決するのです。そして、私たちはお客様が過去には思いもよらなかったユニークな発想や仕事の仕方を実現することができるのです。

研究成果はオンデマンド・イノベーション・サービスにどのような付加価値をもたらすのでしょうか?

ケネリー:オンデマンド・イノベーション・サービスの最も大きなメリットのひとつは、IBMリサーチを幅広く活用する能力を備えていることです。私たちはひとつの組織として、難しいビジネス課題を抱え、その解決を望んでいるお客様を支援することができるのです。私たちは、IBMの研究所全体を見渡し、必要なものを見つけ出し、適切な能力を持った人材を見つけ出す機会と能力を備えています。そして、お客様個々の問題にこれらのリソースを適用するとともに、IBM ビジネス・コンサルティング・サービス部門のコンサルティング・チームの能力を必要に応じて補うことができます。
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ケース・スタディー
ジルファムの場合

ケネリー:私たちは、土地所有権の移転を扱うフランスの行政機関であるジルファムと仕事をした経験があります。フランスの人々が土地の売買を行うとき、今日のプロセスは手作業がほとんどです。そして、その自動化を進める過程で、フランス側は裁判官の署名のセキュリティーに対する懸念を抱きました。セキュリティーとプライバシーを担当するIBMの研究員は、長期間にわたり裁判官の署名のセキュリティーを確保するアーキテクチャーを開発することができました。

ここで重要なのは、私たちがこのセキュリティーの問題を解決するまで、事態を進展させることができなかったことです。科学者が研究室にこもってアイデアを出し、しかる後にそのアイデアをこのビジネス課題に適用することができたからこそ、プロセスを前に進めることができたのです。

ノーウィッチ・ユニオン社


ジスマン:テクノロジーの活用といえば、これまで積み上げてきたやり方を根底からひっくり返した経験の格好の例として、ノーウィッチ・ユニオンという英国企業があります。この企業は自動車保険を手掛けていましたが、ドライバーの自動車にブラック・ボックス(実はそれはGPSなのですが)を設置し、ドライバーが運転する時間帯や場所、運転時間に応じて保険料を徴収するという新しい試みに取り組んでいました。例えば、そのドライバーが1日あたり5マイル、郊外で運転するだけなら、事故のリスクはあまり大きくないので、保険料率も低く抑えることができます。これはテクノロジーによってはじめて成し遂げられる根本的な変化であり、ここでのキーポイントと思われるのは、運転する頻度や場所、時間帯を実際に知ることができないものかという発想からです。さて、ここで利用されたテクノロジーは破壊的テクノロジーといえるでしょうか? いいえ、GPSはずっと以前から存在していました。無線通信もずっと以前から存在していました。肝心なのは、このビジネス課題に対して、これらのテクノロジーを中心に用いることで、新しいやり方へと踏み出してはどうかと提言したことです。これは、まさに柔軟な価格設定の一例です。このような価格設定は、いつの日か市場に溢れるのではないでしょうか。たとえば、青いワイシャツの売れ行きが好調で売り場に残り1枚しかなかったとします。そこで普段より高い価格を設定します。また、閉店間際にたくさんのレタスが売れ残っていたとします。このようなときには、レタスの価格を安く設定するのです。
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略歴
マイケル・D・ジスマン博士はIBMのコーポレート・ストラテジー担当バイス・プレジデントです。ストレージ・システム・グループに所属するとともに、IBMの社内ベンチャーであるストレージ・ソフトウェアのゼネラル・マネジャーを務めていました。また、ロータス・ソフトウェアのCEOに加え、マサチューセッツ工科大学(MIT) スローン経営学大学院の教授会メンバーを務めた経歴があります。

ペギー・ケネリーはオンデマンド・イノベーション・サービス担当バイス・プレジデントです。1977年にシステム・エンジニアとしてIBMに入社、その後IBM ビジネス・コンサルティング・サービス部門でバイス・プレジデントを務めたほか、販売、販売管理、金融の各部門でキャリアを積んできました。
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