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企業は何のために存在するのか、危機の時こそ社会との関わり方について考える
「ファイト!小児がんプロジェクト」を支援する「ワールド・コミュニティー・グリッド」(WCG)は、公的な非営利組織のみが人道的研究に利用できるコンピューティング・グリッドです。2004年に構築され、これまでに経済原理の壁に阻まれている多くの研究プロジェクトを支援してきました。
なぜ、WCGのような公的グリッドをIBMが構築したのか—。その背景には、CSR活動に取り組むIBMの理念があります。
21世紀になって日本でも企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility:CSR)への関心が高まってきました。かつて江戸時代の近江商人が”売り手よし、買い手よし、世間よし”の「三方よし」を唱えたように、時代や地域ごとにCSRは考えられてきました。しかし、1990年代に入って欧米を中心にCSRへの注目が高まってきた背景には、次のような要因が考えられています。
- 地球環境問題=公害などの環境汚染問題に加えて、オゾン層破壊による地球温暖化問題がクローズアップ。1992年にブラジル・リオデジャネイロの第1回地球環境サミットを機に地球温暖化防止に向けた取り組みが始まった。
- 経済格差問題=1989年のベルリンの壁崩壊によって東西冷戦が終結し、東西格差は是正され始める一方で、南北格差が深刻化し、貧富の差が拡大してきた。
- 法令遵守と企業統治=90年のバブル崩壊後、日本では金融・証券不祥事が相次ぎ、日本経団連が91年に企業行動憲章を制定。その後も耐震偽装事件や産地偽装事件などで企業への信頼感が揺らいでいる。2001年のエンロン事件を通じて内部統制の課題が浮上してきた。
- SRI(社会的責任投資)=企業に対する評価を株主への配当だけで行うのではなく、全てのステークホルダー(利害関係者)と良好な関係を築いているかどうかで評価する投資家が増えてきた。
- 企業への社会的監視の強化=インターネットの普及で企業の情報公開が進む一方、オンブズマンなどによって企業を監視する動きが活発化してきた。
日本では1980年代に、企業としてフィランソロピー(慈善活動)やメセナ(文化・芸術支援活動)に取り組む動きが活発化し、企業の社会貢献活動に位置づけられました。IBMでも、フィランソロピーやメセナを積極的に展開した時期があります。しかし、90年代以降、世界のさまざまな国や地域で噴出してきた経済・社会・環境問題に対して、いかに企業として問題解決に貢献するか—が重要になってきました。
IBMではCSRを次のように位置づけています。
「ステークホルダーとの信頼関係をバランスをとりながら構築・維持し、企業が持続的に発展していくための取り組みである」
これを実現するには、順法経営やリスクマネージメントによって社会との信頼を構築する「守りのCSR活動」に加えて、社会ニーズを先取りし、新しい価値を創造していく「攻めのCSR活動」が必要となっています。
IBMでは、社員ひとり一人の技術、能力、知識、経験をイノベーティブな方法で活用して、いま世界が抱える経済・社会・環境問題に取り組むことで、IBMers Valueの一つである「私たち、そして世界に価値あるイノベーション」を社会に示していきたいと考えています。ワールド・コミュニティ・グリッドを通じて小児がんの治療薬開発を支援するプロジェクトは、そうした取り組みの具体的な事例のひとつです。また、新興国はもちろん先進国でも大きな課題となっている科学・数学への理解を育む、あるいはキャリア開発に役立つ教育支援といった活動も全世界で展開しています。
紹介
中川原 章
千葉県がんセンター センター長
(2009年5月現在)
昭和47年九州大学医学部を卒業後、外科に入局。医学生時代に自然退縮する神経芽腫(小児がん)を知り、これをライフワークと決めた。一般外科、小児外科臨床の中で、がん患者と向き合い、がん研究の重要性を強く認識。43歳で臨床から基礎への転身を決意し、神経芽腫の分子生物学・ゲノム研究のため、米国へ再留学。平成7年より千葉県がんセンター。
略歴
- 2002-2006 国際神経芽腫学会(ANRA)・理事長
- 2005 第21回日本小児がん学会・会長
- 2008 第13回国際神経芽腫学会(ANR2008)・会長
- 2009 平成20年度高松宮妃癌研究基金学術賞・受賞(基礎研究部門)
専門・担当領域
川嶋 輝彦
日本アイ・ビー・エム株式会社
社会貢献担当部長
(2009年5月現在)
略歴
- 1989年4月 日本IBM入社
- 1990年1月 広報部配属、対外広報を担当。
- 2001年1月 (社)経済同友会出向。代表幹事の広報を担当。
- 2003年1月 日本IBM広報部に帰任。会長の対外広報を担当。
- 2008年4月 社会貢献担当に着任、現在に至る。
