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プロセス・モデリングからBPMの実装までのシームレスな開発

IBM/SAPハイブリッドSOAソリューションのご紹介【第10回】

ビジネス・プロセス・マネージメント(BPM)は継続的な業務改善活動

本連載の第4回で、激しく変化するビジネス環境において競争力を維持していくためには、業務のやり方を常に改善していく必要があり、ビジネス・プロセス・マネージメント(BPM)はそのための有効な手法です、ということを述べました。

  1. 業務視点のビジネス・プロセス・モデリング
  2. IT視点のプロセス設計、実装、実行
  3. モニタリング

ステージ1:業務視点のビジネス・プロセス・モデリング

業務視点からプロセス改善を検討する場合、改善前の業務の流れと改善後の業務の流れを、対比的に検討、説明する資料や文書を作成し、業務の流れを可視化します。そのような資料や文書を、ワープロやプレゼンテーションツールを使って作成することも可能ですが、書き手によって、観点の違いや詳細度の違いが現れてしまい、全体としてみた場合に整合がとれない状況が発生してしまうことがよくあります。また、これらの資料や文書を、継続的に維持管理し、分析に活用するのは、容易なことではありません。 BPM用のモデリングツールは、業務の流れ、つまりビジネス・プロセスを、グラフィカルに、統一された表記法で一覧性のある状態で記述することができます。モデリングツールを使うと、以下のようなメリットがあります。

業務視点のビジネス・プロセス・モデリングに活用するツール

業務視点のビジネス・プロセス・モデリング用のBPMツールの例として、IDS Scheer社のARISという製品とIBM WebSphere® Business Modelerという製品を取り上げます。 
まず、ARISでは、SAP ERP用のARISモデルが提供されています。また、SAPのSolution ManagerからSAPで定義されたビジネス・プロセス・テンプレートを、ARISモデルとしてインポートすることも可能です。ARISでのモデリング結果をSAPのSolution Managerに同期させることも可能です。このように、ARISは、SAPシステムと密接に連携をとって活用できるため、SAP ERP用のビジネス・プロセス・モデリングの標準ツールとして位置づけられています。

ツールによるビジネス・プロセス・モデリングの例−ARIS−

ARISでモデリングを行う際には、まず、モデリングコンベンションと呼ばれる表記規約を設定します。ARISには、非常に多数のモデルテンプレートがありますが、表記規約の設定を行うことで、モデリングの粒度をそろえ、一貫性をもたせることができます。 ARISモデリングでは、企業構造と企業活動を ARIS Houseと呼ばれるモデルで整理します。ARIS Houseは、5つのビューで構成されており、企業構造を表す「組織」、「データ」、「機能」、「製品・サービス」という静的なモデルと、「プロセス」という企業活動を表す動的なモデルで表現する記述方法です。各ビュー毎に、必要なモデルテンプレートが用意されており、業務設計担当者は、ARIS HouseをIndexとして、モデリングを進めていきます。


ARISを活用したSAP ERPとの連携


ツールによるビジネス・プロセス・モデリングの例−WebSphere Business Modeler−

インダストリー・コンテンツ・パックとして、WebSphere Business Modeler用の業界別の標準的なビジネス・プロセス・モデルも提供されています。WebSphere Business Modelerでは、これらをテンプレートとして、モデリングを行うことが可能です。


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モデリング表記の標準化の動き−BPMN(Business Process Modeling Notation)−

業務プロセスの書き方として、業務設計担当者にもシンプルでわかりやすい標準的な表記法としてBusiness Process Modeling Notation(BPMN)がObject Management Group(OMG) (IBM外のWebサイトへ)によって制定されています。ARISやWebSphere Business Modelerにおいても、BPMN表記もサポートするようになってきており、BPELにも変換できます。 次期SAP NetWeaver BPMという製品は、BPMN表記のグラフィカルツールでビジネス・プロセス設計を行います。これからモデリングツールの活用を検討する場合は、統一された表記のモデリング資産を蓄積できるように、BPMN対応もツール選択の考慮点です。

企業戦略や経営目標を達成するためのあるべきビジネス・プロセスへの変革

業務視点のモデリングでは、作成されたビジュアルなモデルを活用して、企業戦略や経営目標を達成するためのあるべきビジネス・プロセスに変革させていくための検討を行い、モデルを洗練させていきます。検討の例としては、以下のような項目が挙げられます。

モデリングツールによっては、モデル中の各タスクに、処理時間とか、処理工数やコストなどを属性として持たせることが可能です。モデリングツール上で、ビジネス・プロセスを擬似的に動作させ、ビジネス・プロセスを処理するのに必要な、推定の処理時間や工数を割り出したりすることができます。ビジネス・プロセスの変革に伴う影響を、直接ビジネス・プロセスを変更するのではなく、シミュレーションによって、把握することが可能ですので、変更のリスクを軽減することができます。

多くのモデリングツールで、作成したモデルをチームで共有することが可能になっています。ブラウザからモデルを参照して、業務設計担当者間で、業務改善のディスカッションに活用できます。また、モデルを文書化したり、シュミレーション結果のレポートを作成することも可能ですので、ツールを使うことにより、BPMを効率よく進めることができます。

ステージ2:IT視点のプロセス設計、実装、実行

業務プロセスをITシステムに実装するには、ビジネス・プロセス・モデルをIT視点のプロセス・レベルに詳細化する必要があります。BPM用のモデリングツールは、ビジネス・プロセス・モデルをBPEL(Business Process Execution Language)に変換する機能をもつものが、多くあります。また、最近のSOA対応開発ツールでは、BPELをグラフィカルに表示して、編集し、サービスとの統合を行い、プロセス設計を実装につなげることができるようになっています。IT視点のプロセス設計では、これらのツールを活用して、業務プロセス・モデルをBPELに自動変換します。生成された業務設計が反映されたBPELモデル、つまりITプロセス・モデルを実装レベルに詳細化していきます。 業務プロセス・モデルをITプロセス・モデルに詳細化するには、以下のような情報をITプロセス設計ツールで付与していく必要があります。

IT視点のプロセスから呼び出されるサービスの実装

IBM/SAPハイブリッドSOAソリューションの考え方では、多くの企業で標準的な機能は、長年の利用実績があるSAP ERPパッケージが提供するサービスを利用し、パッケージでは実現が難しい各企業特有の業務機能をカスタム開発のサービスと連携させることで、企業のニーズにあわせた最適なビジネス・プロセスを実現します。

ERPの既存サービスを活用
SAP ERPパッケージのサービスであるSAP Enterprise Service(ES)に関しては、本連載の第9回で説明していますように、サービス・リポジトリとレジストリの機能を使って、要件に合うサービスを検索して、該当するサービスがあれば、それを利用することになります。

企業独自のサービスを開発
既存のサービスが要件に合致せず、カスタムのサービスをゼロから開発する場合においては、UML(Unified Modeling Language)モデリングツールがよく使われます。UMLモデリングツールを使えば、GUIでUMLのエレメントを簡単に編集できます。UMLの各種ダイアグラムを一括管理できる上、UMLクラス図から実装コードにシームレスに変換することも可能になってきていますので、開発工数の削減にもつながります。UMLモデリングツールの例として、IBM Rational® Software Architectによる実装コード変換の詳細な手順は、関連リンクをご参照ください。


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IT視点のプロセスとサービスとの統合の実装、実行を行うツール

ARISを利用した場合のサービス機能とプロセスの結合
ARISのEPCモデルに、サービス呼び出しの定義情報を付与して、BPELに変換することができます。このARISのBPELモデルをSAP NetWeaver PIやWebSphere Process Serverに取り込む事が可能です。SAP NetWeaver PIは、BPELの設計・開発と実行環境を有しますので、ARISから取り込んだBPELモデルをSAP NetWeaverのPIでITシステム実装に詳細化し、SAP NetWeaver PI上で実行することができます。

WebSphere Business Modelerを利用した場合のサービス機能とプロセスの結合
WebSphere Business Modelerで作成されたビジネス・プロセス・モデルは、WebSphere Integration Developer(WID)というBPEL設計・開発環境にインポートすることが可能です。WID上でITプロセス・モデルに詳細化して、サービス呼び出し実装と統合し、WebSphere Process Serverにデプロイして実行させることが可能です。


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IT視点のプロセスとサービスとの統合の実装についての考慮事項

モデリングツールを使って変換したBPELがどのBPELエンジン製品上でも実行可能というわけではありません。標準技術を採用することにより、接続性は向上していますが、製品によって、BPELのベンダー独自拡張機能があり、適用にあたっては、注意が必要です。
モデリングツールによってBPELに変換される際、モデリング・エレメントの名称は、BPELにそのまま変換されます。モデリング・エレメントの名称が日本語の場合、BPEL変換後の日本語名称が、BPELエンジン製品上で解釈できないことがありますので、ITプロセス・モデルで英語名称に変換しておく必要があります。

IT視点のプロセス・モデリングにおけるSAP ERPとの連携

前述のベンダーによるBPELの違いのため、WebSphere Business Modelerで作成したBPELを、現在、SAP NetWeaver PIで実行することはできません。業務機能の大部分にSAP ERPパッケージを適用し、SAP NetWeaver PIを実行基盤とする場合は、ARISでモデリングしていきます。業務機能にSAP以外のアプリケーションが多く、WebSphere Process Serverを実行基盤とする場合は、WebSphere Business Modelerでモデリングを行った方が、WebSphere Process Server向けのBPELを生成できるので、実行系との親和性が高くなります。

SAP NetWeaver BPMという製品も、プロセス実行エンジンですが、主にHuman Task系のプロセス実行基盤です。システム間プロセス連携を得意とするSAP NetWeaver PIと、使い分ける必要があります。WebSphere Process ServerではHuman Task系ワークフローもシステム間プロセス連携も一つの実行基盤に統合することが、可能となっています。

ステージ3:モニタリングによるビジネス・プロセスの改善

ビジネス・プロセスの実行によって、モニタリングした結果は、経営者が迅速な判断ができるように必要な加工を行って表示する必要があります。BI(Business Intelligence)に取り込んで分析対象にすることも行われます。モニタリングしたビジネス実績値が目標値に届かない場合は、アラートをあげ、オンデマンドな対応処理を組み込むこともできます。更なる継続的なプロセス改善のために、収集した実績をビジネス・プロセス設計時のビジネス指標設定に活用します。


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まとめ:ツールを活用したプロセス・モデリングから実装までのシームレスなBPM

実装されたサービスのWSDL情報をBPELのビジネス・プロセスに組み合わせて、BPELエンジンで実行させることにより、ビジネス・プロセス・モデリングから実際にITで動くビジネス・プロセス開発までを連携させることができます。 ビジネス・プロセス・モデリングにおいて、達成すべきビジネス指標を決め、あらかじめITプロセス設計にモニターすべきイベント定義とその処理を組み込んでおくことが必要です。モニタリングツールによってプロセス実行時にイベント監視を行い、必要なビジネス実績データを収集し、実績データとビジネス指標を比較して達成度を判断して、ビジネス・プロセス・モデリングを見直します。

以上のように、BPMを推進する際には、BPMの各ステージの結果が、次のステージに確実に反映できるようなしくみを導入しておくことは重要です。その際、BPELやWSDL、UMLのようなプラットフォーム非依存の標準的な技術を使うことで、実装技術の変化の影響を受けにくくすることができます。

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