
今回は、これまでのポータル基盤の課題と次世代ポータル基盤を活用したフロントエンド・アプリケーションの変革によってユーザーの業務生産性の向上につながるソリューション、それを支えるIBM/SAP製品や最新の技術動向を、第6回/第7回の2回に分けてご紹介します。
これまでのフロントエンド・アプリケーションの課題

これまでのフロントエンドアプリ
ケーションの課題 拡大図現在、多くの企業では自社内システムへの入り口としてWebによるイントラネット環境を構築しています。また、イントラネットの基盤として各社より提供されている所謂ポータル製品を利用されている事例も多数あります。
しかしながら、依然としてユーザーの生産性に課題を感じておられる企業が多く見受けられます。
例えば、以下のような経験を持つユーザーはどこの企業にも多いでしょう。
- 一連の業務プロセスを実行するために、個別のアプリケーション、電子メール、電話などいくつものツールを操作しなければならない
- アプリケーションが追加される度に従来と全く異なる操作方法の習熟に時間がかかる
- 業務判断に必要な電子文書をどこに格納したのか探すのにかなりの時間を使った
ITの利用が浸透し、業務遂行に欠かせない存在になっている反面、その複雑さがかえって業務の効率を落とす要因にもなっています。
今回は、ビジネス生産性向上につながるフロントエンド・アプリケーションを実現するために、企業ポータルに必要な機能やその具体的な実現イメージをデモ・アプリケーションを交えてご説明していきます。
企業ポータルを取り巻く環境
従来の企業ポータルについて、単なる情報のリンク集になっている、情報の鮮度が低い、インタラクティブ性に欠ける、結果として業務処理の時間短縮につながらない、などの反省点が指摘されるようになって来ました。これらの反省点の原因としては、企業内ポータルの活用が「情報の集約と提供」に限定されていた点を挙げることができます。
一方でこれらの反省を踏まえ、情報の鮮度やインタラクティブ性を向上させるために、Web2.0技術を企業ポータルに適用する試みがあります。Web2.0の持つ特徴についてはさまざま挙げることができますが、主な特徴として3つ挙げることができます。
- Webサービスを経由したサービスとしてのソフトウェア
- BlogやSNSを利用した集合知の活用
- アプリケーション機能の統合としてのマッシュアップ

Web2.0技術は、ビジネス・ユース
の課題を解決できるか? 拡大図これらWeb2.0の技術要素を企業内ポータルに適用する動きとしてEnterprise 2.0という概念が提唱されています。具体的には、企業内Blogや社内SNSなどを活用して企業内に散在する知恵を集合知として活用することで生産性を向上させることを狙いとしたものです。Enterprise2.0は、「情報の集約と提供」のみに留まっていた企業ポータルの利用形態に、「社内の知恵の発掘と活用」にフォーカスしたナレッジ・マネージメント的な側面を重要な示唆として提供しているといえます。
Web2.0やEnterprise2.0は、非常に魅力的な技術や概念ですが、業務の生産性向上を実現するには十分とはいえません。
関連情報
- The Impact of Information Technology(IT) on Businesses and their Leaders (US)
Enterprise 2.0については概念の提唱者であるAndrew McAfee氏のブログをご参考ください。
- エンタープライズ Web 2.0
Enterprise 2.0についてITアーキテクチャー面からの意味付けについては、上記のページをご参考ください。
次世代ポータル基盤に求められる機能

ユーザーの生産性向上のため
に必要なポータル機能 拡大図フロントエンド・アプリケーションをよりユーザーの生産性向上に寄与するように変革するためには、ユーザーとの接点となる企業ポータルに必要となる機能を再考する必要があります。ポータル画面を構成する複数の画面構成要素(portletやiView)の裏に各種の基幹システムの機能を結びつけ、それらのビジネス機能がフロントエンドのポータル画面の中で連携させることで、ユーザーの一連の業務効率を格段に向上させるフロントエンド・アプリケーションを構築できるようになります。次世代ポータルに求められる機能を以下にまとめます。
ビジネス・プロセス連携機能
ユーザーとこれらバックエンド・システムとの架け橋となるポータルには、多様なバックエンドシステムへの接続性が求められます。具体的には外部サービスの連携として、Webサービス連携や既存のアプリケーション資産をポータル上の構成要素としてマッシュアップする機能が該当します。
また、業務処理を行う際には何らかの判断が必要になります。企業ポータルには、ユーザーがビジネス状況を適切に判断し迅速に決定を下すための支援を行う必要があります。判断材料を提供するためにビジネス状況のグラフィカルな表示や例外発生時のアラート表示などを行うダッシュボード機能、業務の関係者との連絡・相談・報告などのコラボレーションを支援する機能、ユーザーの役職や権限に応じた形で提供すること、などが求められます。
自由度の高いユーザー・インターフェース
ポータルの持つパーソナライズ機能などを利用した画面配置の自由度やワークスタイル変化に合わせた多様なユーザー・インターフェースを提供することが次世代ポータル基盤には必要です。

ビジネスユーザーの生産性向上
を実現する次世代ポータル基盤
拡大図
エンタープライズ品質
企業内のシステムとしてポータルを利用する場合には、拡張性や可用性などの側面だけではなく、ユーザーごとのシステム操作権限やデータ参照権限などのセキュリティー面を十分に考慮する必要があります。また、個別アプリケーションの作り込みなどでセキュリティーを担保するような仕組みにしてしまうと属人的なシステムとなります。運用面での保守性やガバナンスも考慮したポータル環境が必要となります。
上記に挙げたこれら次世代ポータル基盤に必要な機能は、これまでの「企業内の情報の集約と提供」機能やWeb2.0/Enterprise2.0の目指す「企業内の集合知の発掘・活用」と組み合わせることで次世代ポータル基盤の機能として表現することができます。
関連情報
- Java Community Process Program (US)
Portletは、JSR(Java Specification Request)によって規定された標準規格です。
Portletに関する規格としては、JSR168(Java Portlet Specificationバージョン1.0)やJSR286があります。詳細については上記のページをご覧ください。 - 第二回 SAPを活用したコンポジットアプリケーション
iViewを利用したアプリケーションの具体例については、上記ページをご覧ください。
- SAP Help PortalのiViewに関する記述 (英語)
iViewは、SAP社のポータル製品であるNetWeaver Portal上の独自の画面構成アプリケーションです。iViewを利用したWebアプリケーションのサンプルとしては、上記の本連載「第二回 SAPを活用したコンポジットアプリケーション」にてご覧いただけます。
次世代ポータル基盤の活用による業務効率の向上

次世代ポータル基盤利用による
業務効率の変革 拡大図従来の業務の進め方と次世代ポータル基盤を活用した業務の進め方を比較してみます。
従来の業務の進め方
従来、ユーザーが業務を行う際には、ITシステムのバックエンドに基幹として複数存在するシステムごとのアプリケーションを利用してきました。
問題になるのは、バックエンド・システム間のバッチ連携によるデータの鮮度の低下やユーザーが何種類もの個別のアプリケーションの利用をしなければならない点にあります。
ユーザーがひとつの業務処理を行う際にいくつものアプリケーション画面を切り替えながら操作することは業務の生産性を落としますし、データ鮮度の低下は、全体としてのビジネス・プロセスのパフォーマンスを低下させる原因となります。
また、場合によってはビジネス上の判断を行う際の関係者間のコミュニケーションが必要な場合には電話や紙ベースの申請書などビジネス・プロセスの途中で分断が発生していました。プロセスが途中で分断されることで業務生産性向上は阻害され、ビジネス・プロセスのリードタイムを短縮できない結果となっていました。
次世代ポータル基盤を活用した業務の進め方
次世代ポータル基盤は、バックエンドのシステム機能をサービスの形で取込み、画面構成要素としてユーザーに提供します。
具体的には、ユーザーが業務上の判断を行う際に必要な情報などを参照したい場合があります。これは、ポータルの持つポートレット間の連携機能を利用することで実現が可能になります。
ユーザーが選択した業務処理に応じて業務上の判断に必要な情報を複数のポートレットを連携させることでコンポジット・アプリケーションとして利用することが可能です。例えば、顧客からの注文を処理する画面で顧客を選択すると、該当する顧客の与信情報が自社の与信管理システムから取得されて隣の画面に表示させることなどができます。つまり、点在するバックエンドのシステム機能をポータルの中で有機的に連携させることが可能となります。
ビジネス・プロセスの実行環境としてプロセス制御エンジンを利用している場合には、ポータルはサービス化されたプロセス制御エンジンの機能をユーザーに提供する役割を担います。
ビジネス・プロセス実行中に人間の介在が必要な処理があります。例えば、受注の承認を行ったり、承認の在庫数量が基準値を下回った場合に発注処理を行う、などの処理に対して、ポータル基盤はユーザー・インターフェースを提供します。ユーザーによって実行された処理は、プロセス制御層やESB層を通して最終的なバックエンド・システムでデータが更新されます。
次世代ポータルは、SOA化されたバックエンド・システムのサービス機能のユーザー・インターフェースとしての役割を担うことになります。
このように、次世代ポータル基盤を活用することで、ユーザーは、バックエンドに存在するSAP、Javaシステム、メインフレーム、Lotus Notes®などに点在するアプリケーションの種類や個別インターフェースに惑わされずに業務を行うことが可能になります。
IBM, IBMロゴ, Lotus Notesは、International Business Machines Corporationの米国およびその他の国における商標。
JavaおよびすべてのJava関連の商標およびロゴは Sun Microsystems, Inc.の米国およびその他の国における商標。
他の会社名、製品名およびサービス名等はそれぞれ各社の商標。
