※本プロジェクトは通信・放送機構様から委託を受けて行われました。
次世代バリアフリーシステムについて
身体障害者本人が利用しやすいパソコンへの入出力環境をいつでも簡単に設定できるようにするバリアフリーシステムの研究開発プロジェクトです。対話型障害レベル自動判定システムと障害支援アプリケーション配信・適合システムの2つのシステムから構成されています。
次世代バリアフリーシステムの概要
身体障害状況にあわせてパソコンのシステム環境を変えるということ
自分が使いやすいようにパソコンが変わってくれたら、せめて使えるように調整できたら、身体障害のためにそんな思いをされている方々に、必要なアシスティブ・テクノロジーが何かをアセスし、そのアシスティブ・テクノロジーでパソコン環境を適合するシステム作りが課題でした。
ポイント
そんな自動システムがあれば夢のような話だと思われる方がいるかもしれません。でも反対にそんな自動システムは恐ろしいという声もあったのです。しかし、身体障害にあわせてパソコン利用をなんとか叶えたいと思っている教育の場、就労の場、相談センター、展示場、あるいは家庭で、即適合できるようなツールが望まれていたのも事実です。そこでプロジェクトでは独断的に判断しない、双方向で情報を出していく方法を考えました。
ポイント
身体障害とパソコン機器利用について知識や経験をもつ専門家に実践の場での状況やシステム作りに対するアドバイスをいただき、これらをプロトタイプに作りこみながら改良していきました。大前提としてつぎのことが指摘されました。
- 一人一人状態が違うのでグループ化ではなく個別化対応が必要
- 個人の意思を反映すること
- プライバシーが守られること
これまでの方法は?
プロジェクトが始まる前にもリハビリテーションセンターや特殊学校、あるいは相談センターなどで、または大学や研究機関等での研究でも取り組まれていました。経験に基づき障害を分類し、対応すべきソリューションはある程度体系化されていました。何が必要かを導くためにフローチャートなどの手法も取られていました。委託研究などではあるパラメーターを取得するための実験等も行われていました。
判定をシステム化するのに採用したアプローチとは?
「障害者にとってパソコンが使えるためにどんなアシスティブ・テクノロジーが必要なのか」という命題に、主な観点として「利用する人の立場」、「アシスティブ・テクノロジーの知識の度合い」、「カバーするパラメーター」の3つ項目からアプローチしました。
ポイント
利用する人の立場としては本人、家族、学校の先生、職場のITコーディネーター、相談所、リハビリテーションセンターのOT,PTおよびリハ・エンジニアの方々を想定しました。
ポイント
アシスティブ・テクノロジーの知識の程度としては「身体障害の特性もアシスティブ・テクノロジーもよく知らない人」「身体障害の特性はある程度理解しているが、アシスティブ・テクノロジーはよく知らない人」「身体障害の特性は知らないが、アシスティブ・テクノロジーはある程度知っている人」「両方ある程度知っている人」を想定しました。
ポイント
両方知らない人にとっては、わかりやすくナビゲートしていくうちに必要な情報がとれるようなシステムが望まれると考えました。実際、学校の先生や職場でもどのように対応して良いかわからず、わかったとしても適合するのに時間がかかるという話をよく耳にしました。
始めにこれまで世の中で研究されてきたアシスティブ・テクノロジーを身体障害情報からマッチングはできないものか調査しました。しかし、障害名や等級からパソコンを適合するようなデータベースがありませんし、個人の障害情報を基にアセスすることはプライバシーを侵害することになります。
そこで、適合するパラメーター項目とパラメーター値をWindowsのシステムとユーザー補助から洗い出し、またアシスティブ・テクノロジーを調べ、経験による身体障害の特性と結びつくような設計にしました。そして本人から障害情報をとらなくても、現在使われている入力方法、出力方法を質問と簡単な操作テストで確認していく標準コースを設定しました。
ポイント
障害の特性をある程度知っている場合、すべての項目について確認していく必要がないときもあります。そのような場合には視覚障害、聴覚障害、肢体不自由という大きな分類の中で、必要な情報をとるクイックコースを設定しました。
この分野の専門家が必要な情報をとる場合、ある項目だけを選択して調整する方法が良いときのためにカストマイズコースを設定しました。
これらの3つのコースを用意したことで使う人の立場、アシスティブ・テクノロジーの知識の有無、カバーするパラメーターに判定コースの実現を目指しました。
キーボードパラメーターの判定について
ポイント
あまり身体に負担をかけずにパラメーターが取れるようにヒューリスティックなアプローチを採用しました。方法は目標とするキーを押せるかどうかを「F」「J」を交互に6回押す操作テストを採用しました。6回のキー操作の全部について、正しいキーを押している時間、正しくないキーを押している時間を測定し、バウンスやディレイ値を決定しています。
キーの押し方をシステムは次の観点から見ています。
- 目標としたキーが1回確実に押されているかどうか
--->通常のキーボード利用 - 目標としたキーだけが数回押されたかどうか
---->「バウンス設定」で利用できるかどうか - 違うキーが数回押されていても目標とするキーがより長く押されているかどうか
--->「ディレイ設定」 - 上記1.2.3での対応が困難であるかどうか
--->通常のキーボード代替
また、順次入力(同時に複数キー入力)ができるかどうかについては[shift+F][shift+J]を2回押してみて、押せない場合はユーザ補助機能の利用を奨めるようになります。
実験の結果、このテスト内容(操作方法、操作時間)では身体への負担は少なく、判定結果(ユーザー補助の利用の適用)は妥当と実証されました。
実証結果を分析すると、キー押下時間の分布は平均値はしきい値である300mSecよりも小さく、300mSecよりも長く押した被験者は全体の17%でした。

マウスパラメーターの判定について
ポイント
マウスの利用についてはマウスを動かすことが可能か、マウスクリックができるかを5通りのマウス移動操作テストで見ていきます。
本システムでは利用者の負担をできるだけ軽くしながら、利用者の操作の特性を調べられるようにテスト条件を意図して少なくしています。
マウスカーサーの移動には近距離、中距離、長距離の3種類の操作テストを行い、操作にかかる時間から分析します。デフォルトの速度を50%として、特性により速度の加減による調整を可能にしました。

画面出力のプロパティーについて
ポイント
キーボードやマウスを調整するときはデフォルト状態からパラメーターの調整をしていきますが、画面の見え方に困難がある人や視力のない人にとってはデフォルト画面ではアセスすること自体がアクセシブルではない問題があって、初めから最低限のシステムのバリアフリー化が必要でした。
その一例として、クイックコース・視覚障害コースの画面は黒地に白字で大きめのフォントで作成されています。
ポイント
調整する項目としては画面拡大ソフト・画面読み上げソフト、ユーザー補助、画面のプロパティでの対応を用意しました。
また、実証実験にご協力していただいた方からの声も併せて以下の項目を追加しました。
- サウンドのプロパティの取り組み
- 壁紙、スクリーンセーバーのオンオフ

その他の要望項目としてはデスクトップ上のアイコンの整列等自分用の設定ができる項目がありました。
適合情報記録媒体
ポイント
判定システムでアセスされた適合に必要な情報があれば、いつもと違う場所でパソコンを適合するときに便利なので、その情報を媒体に記録しておくことにしました。今後の利用が注目されているICカードへの記録を実験しましたが、ICカードが利用できない場合を想定して、ディスケットやデスクトップやノートパッドへの保存も選択できるようにしています。

適合システム
ポイント
適合情報がはいったICカードを置くだけでパラメーターが自動的に調整され、アシスティブ・テクノロジー アプリケーションが起動されるシステムです。

プロジェクトの詳細はPDF Fileをご参照ください。
プロジェクトの詳細PDF Fileのテキスト版は以下の通りです。




