タブの始まり
視察ツアー: 直島産業廃棄物処理施設見学と地中美術館鑑賞
シンポジウム開催翌日の11月2日、地域の優れた環境先進事例を視察するツアーが行われました。昨年は北の大地 北海道で、寒冷地特有の気候や生物資源を活用した取り組みを見学しましたが、今年は瀬戸内海に浮かぶ美しい島、豊島(てしま)と直島へ。
産業廃棄物の不法投棄事件で有名となった豊島はいま、地域行政や企業、市民が叡智を結集し、環境再生への道を切り拓いています。また、直島では豊島廃棄物処理を含むリサイクル事業や環境調和型のまちづくりが進むほか、「自然と人間との関係を考える場所」をコンセプトとする地中美術館をはじめ、文化事業でも注目を浴びています。
瀬戸内は豊かな自然に恵まれているだけでなく、循環型社会を目指す知恵や工夫、今後の自然と人間との共生について考える、多数のヒントがありました。では、ツアーの模様を簡単にご紹介しましょう。
視察地(下図参照)
午前
豊島
廃棄物不法投棄現場(船上から見学)
直島
三菱マテリアル直島製錬所内、有価金属リサイクル施設および香川県直島環境センター 豊島産業廃棄物等中間処理施設を見学
午後
直島
ふるさと海の家「つつじ荘」で昼食
地中美術館、ベネッセハウスを見学
先端技術で環境の再生と循環型社会を目指す
豊島、廃棄物不法投棄現場(船上から視察)
秋晴れのさわやかな朝、風もほとんどなく穏やかな瀬戸内海。ツアー一行60名はチャーター船で高松港を出発。一路、豊島に向かいます。
豊島は小豆島の西側3.7kmに浮かぶ小さな島。もともと農業を主産業とする緑豊かな島でしたが、1980年代に戦後最大級の産業廃棄物の不法投棄事件に見舞われます。およそ13年間、50万トンを超える膨大な量の産業廃棄物が持ち込まれ、あたりには野焼きによる黒煙が上がり、海はその色を黒く変えたといいます。地元住民は美しい島の原状回復と原因解明を追及。長い戦いの末、1997年に漸く県との中間合意が成立、廃棄物の撤去が約束されます。2000年には直島が豊島の産業廃棄物の受入処理を表明して公害調停が成立。豊島の産業廃棄物を船で輸送し、直島で処理する事業が始まりました。
豊島の視察は船からのみでしたが、現場では次のような処理が行われています。まず、周囲への汚染拡大を防止するため、海岸線に沿って長さ360m、深さ2~18mの遮水壁を設置。廃棄物層は廃棄物の飛散を防止し、雨水等の流入を排除するため、透気・遮水シートで覆っています。そして、遮水壁によって流出を防いだ地下水、浸出水はポンプでくみ上げ、高度排水処理施設で浄化。一方、廃棄物は中間保管・梱包施設に運び、コンテナトラックに積み込まれ、専用輸送船「太陽」によって直島に運ばれています。

豊島の廃棄物不法投棄現場。廃棄物
層を覆う透気・遮水シートが見える。

左の建物は、掘削現場から運ばれた廃
棄物等を一時保管しコンテナトラックに
積み込む、中間保管・梱包施設。右は
高度排水処理施設。

輸送船「太陽」。1回の航行で18台のコンテナトラックを搭載、豊島・直島間を1日2往復して約300トンを運ぶ。豊島・直島間は漁業が盛んであり、漁場への影響を考慮し、波が立ちにくい船体構造となっている。
直島産業廃棄物処理施設
つづいて直島へ。古くは漁業や製塩業、大正以後は銅製錬の島として発展してきましたが、船はその中心である三菱マテリアル(株)直島製錬所の専用桟橋に到着。ここでは、金属精錬の先端技術をごみリサイクルに活用した「エコアイランドなおしまプラン」の事例について視察しました。

三菱マテリアル直島製錬所内、
有価金属リサイクル施設内で説明を受ける。
香川県および直島町では、大量生産、大量消費、大量廃棄型社会への反省から、リサイクルを中心とした循環型社会への変換を目指す「エコアイランドなおしまプラン」を策定し、自然環境と調和したまちづくりを進めています。このプランはソフト事業とハード事業の二つの柱から成り、ソフト事業ではごみの減量やリサイクルの推進、環境教育の場作りの活動などが行われています。ハード事業では、これまで埋め立て処理されてきたシュレッダーダストや溶融飛灰など、有価金属を含有する廃棄物を「都市鉱山」と捉え直し、直島製錬所の製錬技術を使って再資源化し活用する、まったく新しいリサイクルシステムを構築しています。
視察では、県が行う「豊島廃棄物等中間処理施設」と、三菱マテリアル直島製錬所内に新設された「有価金属リサイクル施設」と「溶融飛灰再資源化施設」の処理工程を中心に説明を受けました。

具体的なリサイクルの流れですが、直島から輸送されてきた廃棄物は直島町の一般廃棄物もあわせて破砕・選別され、その後、溶融設備で高温分解されます。中間処理施設では、溶融処理に伴い発生する飛灰やスラグ等の副成物を再資源化し有効利用するほか、余熱を回収し電気に変換したり、プラント排水等も再利用しています。また、排ガス中の有害物質等に関しても厳しい基準値を設定し、徹底した排ガス処理が行われ、その情報はすべて公開されています。なお、豊島の廃棄物すべてを処理するために要する時間は約10年、総経費は施設の建設費やランニングコストを合わせて約490億円と見込まれているとのことでした。
参加者からは、「最終的に無害化し、ほとんど資源にできるとはすごい」と驚きの声が上がっていました。豊島・直島の取り組みが島の環境再生だけでなく、今後の循環型社会形成に向けた新たなモデルになることが期待されます。
参考URL 香川県 環境森林部廃棄物対策課 資源化・処理事業推進室 豊島問題ホームページ 三菱マテリアル(株)直島製錬所
豊島廃棄物等中間処理施設(直島環境センター)。1日200トンの廃棄物等を焼却・溶融する。完全循環型の施設で、処理に伴い発生する副成物のほか、プラント排水や雨水も再利用している。
リアルタイムで処理状況がモニターに表示・公開される。現在の溶融炉の温度は1,345℃。ダイオキシンはほぼこの段階で分解される。

回転式表面溶融炉を興味津々に見上げる参加者たち。直径約11mの外筒が1時間以上をかけてゆっくりと回る。縦型の溶融炉としては国内でも最大級の処理能力をもつ。
製錬の副成物として発生するスラグは安全性検査と品質検査を経た上で有効利用される。写真はスラグを混ぜたコンクリートの模型。海砂の代替物として現在、公共事業で使用されている。
人の手で新しい環境を創り出す
ふるさと海の家 つつじ荘
処理施設見学の後、ツアーはバスで直島の北部から島の南端へと移動。琴弾地海岸沿いにある、町営の、ふるさと海の家つつじ荘に到着。美しい海岸線と瀬戸内海を眺めつつの昼食となりました。
青く澄んだ海と静かな潮の音。この美しい日本の景色を私たちの手で守らなければ・・・。
地中美術館、ベネッセハウス
午後の視察は午前中とは一転。直島の別の一面である、文化発信の拠点、地中美術館とベネッセハウスを訪ねました。これら直島の一連のアートプロジェクトは、現ベネッセコーポレーション代表取締役会長兼CEOの福武總一郎氏の「島全体を文化の島にしたい」という強い思いを発端とするもので、建物の設計は安藤忠雄氏が行っています。
地中美術館は「自然と人間との関係を考える場所」をコンセプトとする美術館で、名前のとおり、建物は丘の中にすっぽりと埋まり、島の風景に溶け込んでいます。コンクリートの打ちっぱなしでかたちづくられた長いアプローチの先には、クロード・モネの大作「睡蓮」をはじめ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・ダレルという、自然と向き合って制作する3人の作品を収蔵。建物自体がそれぞれの作品のために設計され、四季折々、刻々と表情を変える自然の光と影が織り成す静謐な空間で作品を鑑賞することができます。
参加者たちは、建物およびまわりの自然を含めた独特な空間を体感しつつ、「日ごろはあまり考えることのない、空気や光、海や空の美しさに改めて気付いた」と話していました。また、ベネッセハウスでも屋内外に展示された現代アートの作品を巡りながら、会話に花を咲かせていました。
安藤氏は昨日の記念講演で「日本人は古くより自然と共に生き、感性に長けた民度の高い民族だった」と語り、自然を見つめ直すべきことを強調されていました。
1日という非常に短い時間でしたが、自然の美しさを体感し、再生の知恵を学び、私たち自身が自然を生み出していくことについて考えさせられたツアーとなりました。

地中美術館の外観。建物は文字どおり、地中に埋まってい
る。もとは塩田跡地の丘だったが、その丘の上には木が植
えられ、やがて緑に覆われることにより、山へと戻される。
写真提供:地中美術館 撮影:藤塚光政
「自然・建築・アートの共生」をコンセプトとするベネッセハウス。
