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ボランティア活動事例 井立 廣美さん

森林保全と子どもたちへの森林環境教育を目的に学生主体のNPO法人で理事として活躍

井立廣美の顔写真
井立 廣美さん

2006年10月
整備前の奈良市水間町の里山


2007年3月整備後
ボランティアを中心に間伐が行われた
奈良県在住の井立廣美さんは、「次世代に環境を守る大切さを伝えたい」という思いから、2005年に奈良県で里山林休耕田畑機能回復整備事業と、森林環境教育活動を行うNPO法人「きゃんす家」を立ち上げ、理事長に就いています。
メンバーは17人で、奈良女子大など県内の大学生が主体です。

「日本の森林保全というのは、実はCO2削減を目的とした植林よりも、災害防止のため間伐が急務。木は多すぎても根がやせ細り、地面にしっかりと根を生やすことができず、大雨が降った時に木が根こそぎ流される恐れがあるのです。奈良県でも数年前に被害がありました。そこで、きゃんす家では、里山林機能回復整備事業として、奈良市水間地区や、萩町の里山を個人から借り受け、間伐を行っています。プロでも危険が伴う伐採作業を、もっとも向かない女子学生がやることで、一人でも多くの方が森林保全に関心を持ってくれたらと思っています」。
他の森林保全活動団体や当日ボランティアの協力を得て、これまでに約2.2ヘクタールの里山林機能回復を行ってきました。

里山で開く森林環境教育イベントは地元の子どもたちに大人気

子どもたちを招いて行った隠れ家づくりのイベントの様子
お金はかけないけど、手を抜かない
それが私たちのモットー(笑)
楽しみながら、環境を守ることの大切さをレクチャーしているのです


奈良県にはこうした森林保全活動団体がいくつかありますが、きゃんす家の活動がユニークな点は、整備した里山やその周辺に子どもたちを招き、イベントを開催して「森林環境教育活動」にも重きを置く点です。これまでに奈良市の施設「はなはなビレッジ」にて、廃材を使っての「隠れ家作り」や、伐採した竹を使った「竹バームクーヘン焼き」などのイベントを大小合わせてこれまでに15回開いています。

「お金はかけないけど、手を抜かない。それが私たちのモットー(笑)。『隠れ家作り』では、子どもたちに実際に絵を描かせ、廃材を使って、その通りに作らせるんです。専門家を呼んでツリーハウスを作るより夢があると自負しています。『竹バームクーヘン焼き』は、うちのメンバーの知人でレストランのシェフがレシピを作ってくれた本格派。とてもおいしいと評判です。そうやって楽しみながら間伐した現場を見せ、環境を守ることの大切さをレクチャーしているのです」。

イベントは毎回定員の4倍もの応募があり、抽選を行うほどの人気。きゃんす家の活動が地元に根付いていることの証明でもあります。
2008年は活動範囲を「食育」にまで拡大。県所有の平城宮跡地の約700坪もの休耕田を利用し、休耕田を開拓して畑を作り、野菜を育てようという、名付けて「ならっ子畑プロジェクト」が始まりました。ただ今、野菜の苗を子どもたちに植えてもらうイベントに向けて、畑の畝づくりの真っ最中。そこで2007年に、コミュニティー・グランツで購入した「小型耕耘機」が「とても役立っている」と言います。

「土を10cmほど耕耘機で耕し、その土をシャベルで積み上げ畝を作る、という作業を3~4回繰り返して、高さ40cmの畝を作っています。それがここでさつまいもを育てるのに適した高さなんです。延べ5~8人/8回この行程を実施して、まずは300坪の畑を完成させる予定です。今のところ、80%の作業が終わりました。もしも耕耘機がなかったら、この10倍の労力がかかり、メンバーの学生たちも、あまりの重労働に一日で音を上げていたかもしれません」。

苗の植え付けに必要な網なども、「もったいない精神」で廃品を利用するなど環境にも配慮。また、この畑に育てられる野菜は、除草剤などを使わない予定です。
「子どもたちにはおいしい野菜を育てる体験から食べ物を作る大変さを学び、ひいては『安いから良い』わけではないという食べ物の適性価格、賢い消費者のあり方にも興味を持ってもらいたいと思っています」。
そして、残り400坪の土地には、「景観の保全」のためにコスモスを植える計画です。

メンバーの学生たちには、きゃんす家を通し、法人運営も教えたい

きゃんす家メンバーと井立さん
学生たちが知識と経験がないがゆえにやりたいことがなかなか実現できないのを見て、手助けをしたいと思ったんです。
自分の仕事は、学生たちにアドバイスを与え、やりたい事を実現できるよう道筋を作ってあげること


きゃんす家は井立さんが理事を務めるものの、「学生主体のNPO法人」です。実際の企画・運営にあたるのは、メンバーの学生たち。井立さんは「個人的には、きゃんす家で若いリーダーを育成したい」という思いがあり、「自分の仕事は学生たちにアドバイスを与え、やりたい事を実現できるよう道筋を作ってあげること」と言います。
「きゃんす家の発足前、あるボランティア団体のお手伝いを通して知り合った学生たちが、知識と経験がないがゆえに、やりたいことがなかなか実現できないのを見て、手助けをしたいと思ったんです。きゃんす家では、学生たちに組織運営をOJTで教えたかった、という側面もあるのです」。

メンバーの「スキルアップ」も大事な活動の一つで、これまでJICAのプロジェクト・サイクル・マネージメント(PCM)法を用いた計画作りの会議を開き、やりたい事を実現するためのリーダーシップ教育なども行ってきました。

こうしたレクチャーには「IBM時代の経験がとても役立っている」と言います。「PCM法はIBMでいうカスタマー・プランニング・セッション(CPS)という手法に近いですし、私が日々営業でやってきたこと。それをそのまま学生たちに教えているというわけです(笑)」。

井立さんの指導を受けた学生の中には、そのPCM法を後輩に伝授しようと、在学校の奈良女子大学の理事へ、集中講座「参加型計画立案手法入門・演習」と題したセミナーを提案する者、きゃんす家で経験したことを実際の施策に生かそうと、奈良市食育委員会の民間委員、奈良県の消費者啓蒙冊子の編集委員などへ活動の範囲を広げる者も出てきました。

「発足から2年半。とてもたくましくなった学生たちを見ていると、喜びを感じます。他にも、卒業後に全国に散らばった学生が、きゃんす家の理念を持っていき、いろんなテーマでNPOを作ろうとしています。そのうち起業する学生も出てくるでしょう。中には自分の子どもをきゃんす家に入れたいと言う学生もいて、嬉しくなりますね」。

ボランティア活動は、「できることを、できる人が、無理のない範囲で」

「ならっ子畑プロジェクト」のため、平城京跡地を耕耘機で耕すメンバー
新しく活動を始めたい方へのアドバイスは、「まずは小さな一歩から始めましょう」ですね


「きゃんす」とは滋賀地方の方言で、「おいでなさい」という意味。たくさんの人が集まって交流できる場を提供したい、との思いから名付けられました。その名の通り、各イベントでは世代を超えた交流が行われています。井立さんの経験と知識を30人の学生が受け継ぎ、今度は彼女たちがそのノウハウを使い、イベントに参加した400人の子どもたちに環境を守る大切さを伝えていく——。世代間のサイクルがうまく回り、井立さんのボランティア活動は、世代を超えて効果を上げています。

さらに井立さんは、このきゃんす家が蓄積してきた団体を組織・運営するためのノウハウを公表し、他団体や個人への伝承を目指しています。各種団体への講師の無償派遣や、ボランティアに興味がありながら、信頼できる団体を見つけられないなどの理由で踏み出せずにいる学生に向け、大学内で「ボランティアなんでも相談会」を開くなど、少しずつ実現に向かっています。

「ところがもっと上手がいて、私がやりたかったノウハウの蓄積・伝承を素晴らしい形で実現しているものがすでにありました。IBMのODCソリューション『ボランティアをはじめよう』です。私も今後『ボランティアなんでも相談会』などで活用させていただきたいですね」。

そもそも井立さんがボランティア活動を始めたのは、親御さんの介護がきっかけでした。仕事を引退し、親御さんを看取るまで介護に専念。その中で多くの人の世話になったことから、「今度は自分が人の役に立つ番」と、ボランティア活動に入り、今はきゃんす家の活動が生活の中心です。
「スケジュールは毎日いっぱい。やりたいことが存分にやれる生活ができて幸せだと思っています。ボランティア活動は『できることを、できる人が、無理のない範囲で』が継続するコツだと思います。新しく活動を始めたい方へのアドバイスは『まずは小さな一歩から始めましょう』ですね」。

IBM定年退職者の皆さんへ

オンデマンド・コミュニティーに参加して、皆さんのスキル・ノウハウを活かしてみませんか ?