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がん撲滅支援プロジェクト



がんとは何か
がんの副分類
組織マイクロアレイ
ワールド・コミュニティー・グリッドと組織マイクロアレイ



がんとは何か

がんとは、身体の何らかの部分に影響を及ぼす可能性のある疾患群の総称です。世界保健機関(WHO)によると、がんによる死亡者数は全世界で毎年700万人に達しており、全死亡者数の12.5%を占めています。また、毎年1,100万人を超える人々ががんと診断されており、2020年までの間、毎年1,600万人もの新たながん患者が生まれると推定されています。

がんは、身体の一部の細胞が暴走し始めたときに発現し、多くの場合は他の組織を侵害することになります。これには、がんが他の組織を直接侵害する場合と、身体の他の部分へ移動してそこで成長を始め、転移と呼ばれるプロセスを経て正常な組織に取って代わる場合があります。

がん細胞は、DNAの損傷によって発現します。DNAが損傷を受けても、ほとんどの場合は、身体に備わっている機能によって修復することができます。しかし、がん細胞内部では、損傷を受けたDNAは修復されません。DNAの損傷には、遺伝的なもののほかに、発がん物質を原因とするもの、放射性物質による被爆を原因とするもの、あるいは自らのDNAをヒトゲノムに送り込む特定のウイルスを原因とするものが考えられます。


がんの副分類

がんの広義の分類(乳がん、肝臓がん、肺がんなど)には、いくつかの副分類が存在します。例えば、乳がんという広義の分類には、多数の副分類(乳管内がん、小葉がん、髄様がん、膠様がんなど)が含まれています。これらの副分類はがんの攻撃性における差異を示し、副分類に応じて特定の治療や投薬計画が必要となります。そのため医師は、乳がんを単一の疾患と見るのではなく、それぞれの疾患を標的とした治療が求められる多数の疾患の集まりとして考えなければなりません。

がんの副分類には、まだ特定されていないものもあります。特定の臨床プロファイルを対象とする新たな薬や治療法が次々と利用可能になるに従って、がんの副分類を特定する能力の重要性は増しています。研究者は、さまざまながんを分類し、新たな副分類を特定することを目指して、どのシグニチャーが具体的にどのがんに対応するのかを特定するために、遺伝子やタンパク質のプロファイリング分析を実施しています。科学者が疾患進行の基礎メカニズムに対する理解を引き続き深めるにつれて、ますます多くの副分類が新たに発見されています。


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組織マイクロアレイ

現在、医師が患者をがんと診断する際には、同僚の医師と協議したり、多数の補助的検査を利用することによって、標本の顕微鏡評価に基づいてがんの種類とその進行段階を判定しています。患者の治療をどの程度積極的に進めるか、どの薬物療法が適切と考えられるか、また、どのようなレベルのリスクが正当化されるか。最終的な診断は、これらの点に影響します。

組織マイクロアレイ(TMA)と呼ばれる比較的新しい分析手段は、医師による適切な治療方針の選択と、がん患者に対する正確な予後診断の提供を支援する上でかなり有望です。研究者は、TMAによって、さまざまな関連するがん標本(または組織標本)の数百個もの検鏡用切片を1枚の顕微鏡スライド・ガラス上に配列します。配列後の標本は、組織標本の基礎病態のタンパク質および分子的シグニチャーを明らかにするために、染色溶媒と複合体を形成した抗体(該当する分子標的を特異的に検知して結合するタンパク質)によって処理されます。研究者がそれぞれの標本を互いに比較し、タンパク質および分子的シグニチャーの差異に基づいて判断を下せるように、標本の選択と編成は綿密に行われます。遡及的調査を実施し、そこで既存の組織アーカイブから標本を取り出すことによって、記録(スライド上の検鏡用切片ごとの組織学的記述、疾病の進行段階、臨床成果)の外科的診断とシグニチャーを互いに関連付けることができます。

TMAは現在、医師が基本診断を下すためには使用されていません。しかし、TMAを使用することで、研究者ががんの具体的な種類と進行段階を判断し、それぞれの患者の既知の結果に基づいてがんの種類ごとに最も効果的と考えられる治療法または治療法の組み合わせを体系的に研究することが可能になります。そして、特定の抗体が存在するかどうかに基づいて、実際のがん患者に対して具体的な治療過程を指示することができます。

TMAは、がんの生態に対する研究者の理解を深め、これまでにない治療過程を示唆する新たな副分類を明らかにします。また、ある治療計画に反応する可能性が最も高い患者集団を圧倒的な正確さで見極められるようにする一方、将来の薬剤設計に必要な情報も提供します。

TMAは、創薬や治療計画の改善という領域に及ぼすと考えられる効果だけにとどまりません。わずかな生検試料しか使用しないことで限られた組織資源を最大限に生かすとともに、調査研究の実施コストを削減することから、従来の標本作成を上回るいくつもの利点をもたらします。


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ワールド・コミュニティー・グリッドと組織マイクロアレイ

現在、組織マイクロアレイを評価する際に使用されている主な方法では、人手を介した対話式レビューによって標本の主観的な評価や判定が行われています。それほど利用されてはいませんが、これに代わる方法として、標本を連続してデジタル化し、その後に半定量分析を実施する方法もあります。いずれの手順でも、最終的にはTMA標本の対話式評価を行います。これは時間と手間がかかり、人為的な誤りを起こしやすい作業です。がん組織マイクロアレイの発現パターンについて一貫した評価を下す際の問題の多くは、観察者の主観的印象が紛れ込む点に起因します。

コンピューター支援分析に基づいた特性判定を実施すると、客観性、再現性、および検出感度が大幅に向上することが明らかになっています。現在、多数のTMAを迅速に分析できる画像処理技術や定量的技術の開発を進める機運が著しく高まっています。ニュージャージーがん研究所、ラトガース大学、およびニュージャージー医科歯科大学(UMDNJ)ロバート・ウッド・ジョンソン医学校の研究者間の共同事業によって、デジタル化した組織マイクロアレイの画像処理、分析、保存、および共有を目的とするWebベースのロボット型プロトタイプが既に開発されています。このシステムでは、高度な画像処理とパターン認識の方法の組み合わせを利用して、がん組織マイクロアレイにおける発現パターンを自動的に分析し特性判定することが可能です。これらの組織の研究者は、国立衛生研究所(NIH)からの資金提供と、国立医学図書館(NLM)との契約5R01LM007455-03、国立生体イメージング・生体工学研究所(NIBIB)との契約1R01EB003587-01A2によって、乳がんの分析を既に開始しており、頭部がんと頚部がんにおけるタンパク質および分子の発現パターンの評価へと近日中に進行する予定です。

IBMのワールド・コミュニティー・グリッドは、計算コストが高いソフトウェア・コンポーネントを最適な速度で実行可能にすることで、数式計算およびパターン認識手順を実行する際の精度と検出感度を向上させます。研究者は、ワールド・コミュニティー・グリッドに結集される計算能力を利用することで、従来のコンピューター・リソースを利用した場合よりもはるかに幅広い抗体と染色溶媒の組み合わせを使用して、より大規模ながん組織標本の集合を分析し、実験を行うことが可能になります。

現在までのところ、既知の抗体のごく一部しか検査されていません。長期的な目標は、抗体と抗体が人間の健康において果たす役割を記録したライブラリーを作成し、将来の医師たちがライブラリーを調べて診断の助けにし、がん患者に対して最も有効な治療を提供できるようにすることです。

ワールド・コミュニティー・グリッドが存在しない場合、TMAは単独で、あるいは小さなまとまりごとに処理されます。ワールド・コミュニティー・グリッドを利用すると、数百個の組織アレイを並行して分析できるため、複数の実験を同時に実施することが可能になります。このように速度と洗練度が高まるため、研究者が測定可能なパラメーターの微妙な変化を検知し、追跡できることが可能になり、その結果、手作業の検査や従来の分析手法だけでは見つからない予兆の手がかりを発見する事が容易になり、がん生態学、創薬、治療計画といった分野にも進歩をもたらす可能性もあります。


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