
TryScience実験教室は、インターネットで提供している実験メニューをリアルに体験し、子供達に科学の楽しさを知ってもらおうと、IBMが行っている社会貢献プログラムのひとつです。ボランティア社員が講師となり、日本科学技術館にて月に一度、定期的に開催されています。 紙コップなどを使って音の伝わり方を実験する『ゆかいなクラクション』、風船・ストロー・糸・おはじきを使って宇宙船を作る『探査機を宇宙へ飛ばそう』など、子供の興味をそそる実験を毎回3つ程度ピックアップして行っています。 土屋久美子さん(東日本SS. 公共サービス)が、社会貢献のボランティアに登録し、Try Scienceに参加するようになったのは、2005年の9月から。特にボランティア活動に特別な思い入れがあったわけではありませんでした。動機としては、むしろ自分のため。「当時、個人的な悩みを抱えており、自分を励ますものが欲しかったんです。私だって世の中に必要とされているんだ、と」。そしてもうひとつの動機は、TryScienceに参加する前にひととおり紹介されたソリューションを見て、小学生の頃「自由研究」を思い起こさせる内容に思わず懐かしくなったこと。「こういった実験は本や雑誌で見かけることも多く、手軽そうに見えるのですが、自分も含めて「実際に実験をする」に至らないことがなかなかないので、自分でもなんだかやってみたくなり、不安半分、楽しみ半分・・・というような気持ちで初日を迎えました。」
自分が楽しめば、子供達も楽しい 実験教室の楽しさに目覚めた ところが、初めて参加した回は、散々な結果でした。一所懸命に説明しているのに、別のブースで行っている実験をのぞきこむ子供が現れたり、子供達に興味を引き付けておくことができなかったのです。2回目、3回目・・・と、世の中に必要とされる実感にはほど遠く、どっと疲れるばかり。しかし、4回目で転機が訪れました。終了後の反省会でのことです。あるボランティア社員が「子供達を楽しませるには、まず自分が楽しむことだと思います」と発言。土屋さんは、その言葉にはっとしました。「実験のやり方や原理を教えることに一所懸命で、私は、自分が楽しむことを忘れていたのです」。
そして迎えた5回目。「今日は、実験を楽しむつもりでやろう」と決めていました。実験は『ゆかいなクラクション』。あっと驚く場面の多い実験だったため、見せ場を作ると、狙った通りに子供達から歓声が上がりました。土屋さんの心に充実感と達成感が広がりました。 毎回2〜5名のボランティア社員が講師役でいるため、それからは、他のメンバーの実験を参考にしながら、道具に名前を書かせて子供を名前で呼ぶなど、子供達の心をつかめそうなアイディアをどんどん取り入れるようになりました。
子供には苦手意識がありましたが、教えることが楽しくなると、子供達に接することにも喜びを感じるようになりました。最初は、付き添いの親まかせで実験を行っていた子供が、工夫したであろう点をほめてあげると、2回目からは自分で実験を行い、改良した点を楽しそうに話してくれることがあります。「実験教室に参加してよかった」と思う瞬間です。 さまざまな親子が参加してくれる中、こんな楽しみもあります。わが子が手間取っている時でも、じっと見守る親ほど、子供の達成感が大きいことなどを目の当たりにして、「将来、自分が親になった時、子供にはどんな接し方をしたらいいのか、ひそかに学ばせていただいているのです(笑)」。
いつしか実験の楽しさに夢中に 出張授業という夢を仲間と語り合う
 そうして、いつしか実験そのものにも魅了されている自分がいました。「同じ原理の実験でも、人によって説明の切り口が違ったり、実験は奥が深いんです」。気がつくと、移動中のバスの中などで、どうしたら実験を面白くできるか考えていることもあります。一枚の紙を折って、500mlのペットボトルをおいてもくずれない橋を作る「紙の橋」という実験が終わって、帰途についた時のことです。実験のマニュアルにある最強の折り方に納得がいかず、バスの整理券をいじっているうちに、まだ誰もやってことのないオリジナルの折り方を思い付いたのです。 実は、「他のメンバーも、いかに実験を面白く見せようかと切磋琢磨してる」のだとか。 悩みを抱え、自分を励ますつもりで始めたボランティア活動。今では、すっかり生活に溶け込み、土屋さんの元気のもとになっています。2006年11月には、ボランティア活動が50時間を超えたことでODC賞を授与されました。社長表彰として社内Webで紹介されたせいか、周囲の反響は意外と大きく、多くの社員から「実は、自分も社会貢献に興味を持っている」と話し掛けられることが増えたそうです。「これをきっかけに他の社員がボランティア活動をはじめるきっかけになれたらいいですね」。
一人の力は小さくても、仲間が集まることで、TryScienceの実験教室は、社会的にさまざまな効果を与えることもできると、土屋さんは考えています。 「既製のおもちゃで受動的な遊びに慣れている子供達にとって、実験は、紙コップや風船など身近なものでも、こんな面白いことができる、という発見に満ちています。子供達には、今までにない楽しさ、自発的に学ぶ楽しさ、試行錯誤しながらも目標に達成する喜びを感じるチャンスになると思います。ご両親にも、親でも先生でもない大人とコミュニケーションしたり、実験に取り組むという、普段と違った子供の一面を見られるという効果があります。そうした貴重な経験をすることによって自己実現にもつながっていくのではないかと思っています」。
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