
メンタープレイスは、社員ボランティアがメンター(相談相手)となり、eメールを通して、子供達に学業上のサポートやキャリア・カウンセリングを行うというプログラム。IBMのグローバルな社会貢献活動の1つで、これまでに全世界で7,000人を超える児童・生徒が参加しています。インターネットにつながっていれば、いつでも、どこでも出来ることから、社会貢献活動に未経験の人たちからも、人気の高いプログラムのひとつです。「教育分野における青少年育成」を目的に掲げてはいますが、メンターを志望する動機は、「子を持つ親として、中学生が何を考えているか知りたい」「世の中の役に立つことをしたい」など、さまざま。
「残業や休日出勤も多く、仕事漬けの毎日。リフレッシュを求めて、メンタープレイスに参加しました」というのは、豊洲事業所IS. セキュリティ&プライバシーに所属する寺崎 寿里さん。2006年5月から約1年間、南林間中学校3年生だった星奈津季さんとのメール交換の様子を語っていただきました。陸上部の副部長を務めるなど、明るく活動的な女の子です。学校生活や日常の何気ないことから、寺崎さんが休暇で訪れた外国のこと、ニュースで取り上げられる話題の事件など、さまざまな話題を話し合いました。
寺崎さんにとって中学生といえば、学生時代に何人もの家庭教師を務めたことから、身近に感じられる存在でした。勉強を教えるだけではなく、進路や友人関係の悩みなど、いろいろな相談に乗ったものでした。その経験から、「何かの役に立ちたい」と期待に胸をふくらませ、キックオフ会に臨みました。ところが、初めて会った星さんは、「大人しい印象」。会話が弾むかどうか不安がよぎったといいます。 そこで、まずは雑談で、星さんが興味を持っている話題から入ろうと、部活動の陸上からスタート。「これが好感触で、夏の大会を前に、練習に明け暮れていると、イキイキと書いてきてくれました。副部長になれたことがとてもうれしいとも。実は、とても明るい女の子なんだと印象も変わりました。」 しかし、それで会話が続くようになったかといえば、否。「たとえば好きな芸能人の話題で、なつきちゃんがGactが好きだといえば、私は元X-JAPANのファン。好みがちょっと似てるね!とか、一時的に会話が盛り上がっても、すぐに会話の波がスーッと引いていてしまう。」そのくり返し。「しばらくは、何を話そうか悩みました。」
メンタープレイスでは、スタート前にどんなテーマでメールを交換するか、課題を決めることになっており、寺崎・星ペアが選んだのは、尊敬する人、スポーツなどについて。 星さんに、ある変化を感じたのは、この課題である「尊敬する人」について話していたときのことです。星さんが、「尊敬する先生がいて、将来、学校の先生になりたい」と打ち明けてくれたのです。それは、「恥ずかしくて誰にも言わずにいたこと」でした。 「私は、嬉しくて、なつきちゃんがその夢を叶えるために、知っておいたほうがいい情報を調べて提供しました。小学校の先生なら教育学部へ、中学や高校の先生だったら、専門分野を学びながら教職課程を取らなければならないよ、と書いて送ったんです。」 その気づかいが「夢を応援してくれてるんだなって、とても嬉しかった」という星さん。それ以来、ほぼ毎日のペースでメール交換をするようになりました。今年3月のプログラム終了時点で、交換したメールは、なんと183通。1年間でクラスでのダントツの回数を誇ります。
「メンターさんとのメール交換は、とても楽しい」と、笑顔いっぱいで話してくれた星さん。星さんの心をつかんだ、寺崎さんの「会話術」とは---「いじめ自殺など、世間で耳目を集める話題の時は、まず私はこう思ったけど、なつきちゃんはどう思う?と、まず自分の感想を書いてから、なつきちゃんの意見を求めるようにしています。」相手を知りたければ、まず自分のことを知ってもらおう、というわけです。 「あと、意見を求めたいことがあっても、彼女が興味を示さない話題は、深く追究しないことにしています。何か言いたいことがあったら、自分から言ってくれると思うので。たとえば、受験生だったので、進路の悩みを抱えているかもしれませんが、彼女が私に相談をしてこない以上、そこには踏み込みませんでした。」 傷つきやすい年頃のため、ささいな一言で傷つけたりしないよう、文章は推敲に推敲を重ね、一通のメールを書くのに1時間をかけることもあります。 また、メンタープレイスから遠ざかっていかないよう、2〜3日返事が来ない時は、「返事を待ってます」とさりげなく催促のメールを出して、フォローも忘れませんでした。その反面、「試験の2週間前からは、勉強に専念するためメールを出さなくても良い」というルールを作ったりも。 最後には星さんが「親や先生に言えないことでも、メンターさんになら言える」という信頼関係を築くまでになりましたが、それは寺崎さんのこうした心づかいの賜物といえるでしょう。
実は、寺崎さんがつねに意識しているのは、「事前研修で指導された 『メンターとは、親でも先生でもない。第三者としてメンティを気づかう存在』というメンターとしての心がまえ」だといいます。 星さんのことを思いながらも、深入りしすぎない。その絶妙な距離感が、星さんに安心感を与え、何でも話せる存在にしているのかもしれません。
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