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体験事例「できることから始めよう」
EWeekを成功へと牽引した最年少コーディネーター - 井上真奈さん -
井上 真奈さん
ROBLABの教材を開発
EWeekを成功へと牽引した最年少コーディネーター
EWeekは、子どもたちに科学や数学、テクノロジーの面白さを伝えようと、アメリカでIBMなどの企業が協賛して始まったプログラム。 日本IBMでは2006年に第1回目が行われました。6月から10月にかけて、東京都中央区中央小学校や、日本科学技術振興財団サイエンス友の会会員らを箱崎事業所、幕張事業所、大和事業所に招いて、計10回が開催され、延べ80名のボランティア社員が参加。大好評のうちに幕を閉じました。
その成功を支えたのが、EWeekのコーディネーターを務めた大和事業所・ソフトウエア開発研究所の樋口正也さん、同・東京基礎研究所の宇野栄さん、幕張事業所・テクニカルサポートの富田幸子さん(現在・豊洲事業所勤務)、箱崎事業所・テクニカル・ストラテジー&コンピテンシーの井上真奈さんです。
4人がEWeek開催に向けて動き出した当初は、誰を対象に何をするのか、まったく白紙の状態でした。そこからプログラムを作り上げるには、開催する学校の選出や行政機関との折衝など、慣れない事も多く、苦労もありました。特に、子供たちにどれだけ魅力のある授業ができるかがEWeek成功のカギでしたが、その教材開発に力を発揮したのが最年少の井上さんでした。
協議の末、Try Scienceの実験教室とROBOLAB----レゴブロックで組み立てた自動車ロボットを簡単なプログラミングで走らせるキット----を授業で行うことになると、井上さんはROBOLABを授業でどう使うか、教材の開発にあたったのです。
大学院まで学んできた教育の知識を生かし
ROBOLABの教材開発に取り組んだ日々
大学院まで教育関連を専攻し、幼稚園と小学校教諭の免許を持つ井上さんは、教育には高い関心を持ち続けていました。「子供たちに科学技術の楽しさを教えられる教材の開発は、とても楽しい作業だった」と振り返ります。
まずは、家にキットを持ち帰り、自分で自動車ロボットを組み立てるところから作業は始まりました。ROBOLABのHPに掲載されている授業例などインターネットで情報を収集。簡単すぎても難しすぎても子供達の興味を引き付けておくことはできないため、文科省の理科の指導要領で小学6年生の科学への理解度も調べました。目標にしていたのは、「試行錯誤しながらも、達成感が味わえる」授業。失敗することがあっても、ゲーム感覚で楽しみながらゴールを目指せるものなら、子供達はやり遂げられるはず。そう信じて、『黒いわくから出ない車をつくろう』『コースを走らせよう!』という2本の教材を作り上げました。
『黒いわくから出ない車をつくろう』は、自動車ロボットに黒色を感知する光センサーを搭載し、黒い枠内を走るようプログラミングを行うもの。『コースを走らせよう!』は、コースを設計して、スタートからゴールまで完走するようプログラミングを行うというものでした。
実際にその教材を使って指導するのは、ボランティアの社員。彼らが教えやすいように指導マニュアルも作成しました。指導内容にそって、子供達に言うべきセリフまで書き込む念の入れようでした。
それと平行して、どういう流れで授業をするかプログラムも立案。 「エンジニアとは何か」というボランティア社員による講演を皮切りに、その後にTry Scienceのコンテンツ「ロボットを動かそう」でプログラミングの基本を学習、それから自動車ロボットを組み立て、黒い枠から出ないように走らせ、最終目標でコースを走らせる、という授業の流れを作りました。
本番前には、EWeekを開催する中央小学校へ出向き、プレゼンテーションを行い、その後、実際に子供達の指導にあたるボランティア社員を集めて講習会も開きました。
不安を胸に迎えた第1回目
ボランティア社員の輝く表情に成功を確信
そして迎えた7月13日。中央区立中央小学校6年生を対象に、ROBOLABの第1回目の授業が行われました。
「始まる前は、子供達が喜んでくれるか、私の作った教材で本当に授業ができるのか、すごくドキドキしました。」
でも、集まったボランティア社員の顔がイキイキとしているのを見て、「大丈夫。きっと成功する、と確信した」そうです。
「子供達も見知らぬ大勢の大人を前に、始めこそ表情が固かったけれど、いざブロックを組み立てはじめると、とても楽しそうで、どんどん顔が輝いてくるのを見て、嬉しくなりました」。
プログラミングの時間には、子供達は熱中。自動車ロボットを自分の好きに動かせるようになると声を上げて喜ぶ子供もいました。児童19人対してボランティアは8人。二人に一人の割合でつくことができ、手間取っている子供にも手厚くサポート。できた時はともに喜びを分かち合いました。そして、狙い通り、試行錯誤しながらも、全員がプログラムを終了することができました。
担任の先生は、「一日ひとつのことに集中する子供たちの姿に驚いた」とコメント。さらには、「ボランティアの方々が子供達一人一人を見てくれたおかげで、子供達も幸せな時間を過ごすことだできたと思う」という評価を残してくれました。
それを裏付けるように、一度、帰宅した子供達が、井上さんらボランティア社員を見送るために、学校に戻ってくる、という感動的な場面もありました。
先生らのフィードバックを教材に反映
開催中も教材の改訂が続いた
しかし、教材に改善すべき点が出て来ました。「実際にコースを走らせるまで、もっとスモールステップを用意したほうがいい」という意見が担任の先生から挙がったのです。
フィードバックは、すぐさま教材に反映し、「直線を走る」「直角に曲がる」などのプログラミングを学習する「前ステップ」を取り入れました。
8月8日の箱崎事業所にサイエンス友の会メンバーを招いてのEWeekでは、その改訂版で実施。
「前ステップを取り入れた分、コースを走らせる時の子供達の理解が早くなった。それ以降、前ステップを丁寧に行うようにしていきました」。
そうして回を重ねるごとに教材もプログラムもブラッシュアップ。最終回だった10月11日、中央区立明石小学校6年生を対象に行われた回では、たまたま時間の都合で、「コースを走らせよう」と「黒い枠から出ないように走ろう」の順序を入れ替えると、子供達のつまずきが少なく、全体の流れがスムーズになりました。
井上さんは、「授業の流れが今日がベストだったと感じた瞬間、これで、やっと完成形になった。私の役目も終わった、と思いました」と言います。
さらにこの回では、ボランティア社員が一人ずつ自分の仕事について紹介する時間も設けました。そうすることで、「 IBMという会社、エンジニアという仕事についても子供達にわかりやすく伝えられ、EWeekに必要なすべてを網羅できた気がします」。
子供達に科学の楽しさを伝える目的を達成
4人のチームワークが導いた成功
EWeekの開催にあたっては、 事業所と事業所のエリア内にある学校で行うことが決まると、あとは事業所ごとに動き、Try ScienceとROBOLABでどんな授業をするかは、担当者次第でした。当初は、大和事業所や幕張事業所では、ROBOLABの教材を独自で作る予定でしたが、井上さんのクオリティの高い教材に注目。いずれの事業所でも、井上さんの教材が使われることになりました。
ROBOLABの教材として、ひとつの雛形を作り上げた井上さんの活躍は、EWeekをどう展開させていかく、来年度以降のひとつの指針となることでしょう。
「でも、それは私一人の力ではありません。コーディネーター4人のチームワークがあってこそです」。
事実、EWeek開催中も、週に一度のテレコンを欠かさず、EWeekが開催されるたびに経験とフィードバックをシェア。より良いものにしてゆくため、最後まで全員が一丸となって力を合わせてきました。
4人は、EWeekを振り返って、こう言います。
「一日のうちで、子供がどんどん成長していく姿を目の当たりにできるのは、ひじょうに嬉しいことでした」(樋口さん)。
「開催後の子供達のコメントを読むと、ここまでプログラミングを理解してくれたのかと感無量。楽しかった、という言葉にも、あたたかい気持ちになります。こんな体験を一人でも多くの社員にしてもらいたい」(宇野さん)。
「子供の理科離れと言われますが、こういう場があると、とても楽しんでやるものです。必要なのは、子供が理科や科学に触れるチャンス。どんな形であれ、EWeekは来年度以˜も続けて欲しいですね」(富田さん)。
最後に井上さんは、「子供たちにTry&Errorを繰り返しながら、よりよいものを作っていくことを体験してもらえたと思う」としめくくります。子供達に科学やテクノロジーの面白さを伝える、という主旨で始まったEWeek。井上さんらの活躍で、その狙いは充分に達成できた第一回目でした。
井上 真奈さん