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科学者が語る科学の楽しみ

大貫 惇睦氏



プロフィール   若者へのメッセージ
科学のおもしろさについて   研究テーマ



プロフィール

大貫惇睦氏の顔写真 大貫 惇睦(よしちか)
日本IBM科学賞 第3回(1989年)物理分野受賞者
大阪大学理学部 教授

第3回日本IBM科学賞受賞の詳細はこちら

研究室のホームページ

若者へのメッセージ

研究室での生活はいかがなものでしょうか。
私は実験データを前にして、あるいはデータを取りながら学生と一緒に議論するのが好きです。なんやかんやと話し合っているうちに考えが固まっていくことがあります。 しかし、学生にはああ言ったが、どうも違っているのではないかと家に帰って布団の中で考え込むこともあります。それぞれの学生にはいろいろ違った才能があり、 そういう光輝くものに接するのは教師としての何よりの喜びです。教えるということは学問の根本に戻ることが多く、未熟な自らの足腰をしっかりと固めようとする行為に結びつきます。 失敗に続く実験に対しても、学生を前にするとやめましょうとは言えず、もう一度方法を変えてやってみませんかと、くじける自らの気持ちを奮い立たせる気迫に通じることになります。 そんな私の毎日ですが、昔つくった詩をのせて結びとします。

私のゆりのき通り

暑い夏の日差しに 汗がしたたり落ちて
ゆりのき通りを 何度通ったことだろう
濃いい木陰に しばしたたずみ
入道雲をながめていたら
こみあげてきた この思い
遠くへ行きたい

木の葉が風に揺れて 仰ぎ見る
ゆりのき通りを 何度通ったことだろう
昨夜は眠れなくて
シュトルムの湖を 読み返したら
涙ぐんでしまった
あなたはちっとも わかってくれない


仕事がはかどらなくて 何を想うこともなく
ゆりのき通りを 何度通ったことだろう
淡い光と冷たく澄んだ大気に
ぼーっとした頭がめざめてくる
今日はなんとかしなくっちゃ

小鳥のさえずりが 耳に心地よく
ゆりのき通りを 何度通ったことだろう
心がはずんで
思わずほっぺたを つねってみたくなる
この歓び
誰かに伝えたい


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科学のおもしろさについて

超伝導の電子対モデルイメージ新しい超伝導とはどのようなものでしょうか。 超伝導は金属中の伝導電子が2個ずつ対になり、その集団が電気抵抗ゼロの状態をつくって います。そこで、この対の状態がどのような電子状態をしているのかを知ることが極めて重要です。超伝導には、これまで2つのモデルが知られています。 第1のものは、1911年に水銀で発見されて以来伝統的なもので、s波型と呼ばれます図(a)。ところが、1986年に酸化物高温超伝導体が発見され、その後の10年の研究の結果、図(b)のような電子対モデルで示されるd波型が有力な説になっています。今回私達は大阪大学の北岡良雄助教授や北海道大学の榊原俊郎教授および富山県立大学の前沢邦彦教授らの 研究グループと協力して、UPt3が、これまで全く知られていない新型の超伝導体であることを明らかにしました。つまりUPt3の超伝導は上記のいずれでもない全く 新しいp波型であることが、NMRなどの研究で明らかになりました。図(c)で明らかなように電子対の波型は、左右逆で、中央で折り返しても重ならない(奇パリティ)。 しかも電子スピンの向きは、これまでのs、d波型では互いに逆向きだったが、p波型では平行になっています。超伝導体として初めての奇パリティ電子状態が発見されたことになります。


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研究テーマ

研究テーマは「重い電子系の物理」です。
(1)私達は主として希土類化合物やアクチナイド化合物が示す重い電子系の物理を研究しています。 それらの化合物の4fおよび5f電子は大きな軌道角運動量による強い遠心力ポテンシャルによって、それぞれ5s25p6および6s26p6の閉殻の内側に押し込められ、f電子は基本的には原子に局在します。ところがある種の化合物では、周囲のポテンシャル、相対論効果、伝導電子との混成効果あるいは温度・圧力・磁場によってf電子の一部あるいはすべてが伝導電子に引きずり出されて動き出します。この様な電子系は電子の静止質量の10?1000倍重いキャリアになります。私達のグループが発見したCeCu6は世界で一番重い電子系です。このような重い電子系は様々な興味ある電気伝導、磁性及び超伝導現象を示します。その本質を解明するためには、まず非常に純良な単結晶を必要とします。研究対象とする物質の蒸気圧と融点及び反応性に応じて様々な新しい手法を用いて単結晶を育成します。
(2)物性を解明するための基本的な実験条件として低温と強磁場が重要です。我国で初めて試作したトップ・ローディング型の希釈冷凍機によって生成される低温と超伝導マグネットによる強磁場、更には大阪大学の創案による新しい原理のパルス強磁場(極限科学研究センター)を用いて実験を行います。この様な実験条件の下で、磁化が階段的に増大するメタ磁性、伝導電子の顔とも言うべきフェルミ面の形状と伝導電子の重さなどを検出するドハース・ファンアルフェン量子効果、あるいは従来のBCS理論では説明がつかない新しいタイプの超伝導現象などを研究しています。


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