日本IBM科学賞第2回(1988年)受賞者
受賞者紹介
山本 尚(やまもと・ひさし)
昭和18年7月16日生まれ
名古屋大学工学部 教授

昭和 42年
京都大学工学部工業化学科卒業
昭和 46年
ハーバード大学大学院博士課程修了
昭和 47年
京都大学工学部・助手
昭和 51年
京都大学工学部・講師
昭和 52年
ハワイ大学準教授
昭和 55年
名古屋大学工学部・助教授
昭和 58年
名古屋大学工学部・教授
専門:
有機合成化学
著書:
『有機合成の新反応剤』
(化学同人/編著・共編)
『オルガノメタリックス』
(化学同人/共編)
『立体選択的な有機合成反応』
(共立出版/共著)
贈賞の理由
有機アルミニウム化合物を用いる精密化学合成反応の開発
有機反応は、その重要性にもかかわらず、試行錯誤で開発されてきました。そこで近年は、反応剤を設計することによって、望みの物だけを生成する反応を開発する研究が行なわれています。山本教授は、有機合成における反応剤を設計・合成して精密な反応制御に成功し、この分野で世界的な業績をあげました。
有機合成においては、目的の生成物以外に色々なものができてきます。これは反応の経路が複雑なためで、反応の経路を単純化すれば、望みの産物のみを得ることができます。たとえば、アルミニウム反応剤は溶液中でかならずしも単量体ではなく、いくつかが会合しているので、出発物から生成物にいたる経路がいくつもあるのです。そこで、溶液中でも単独でいる反応剤を作れば、必要な反応だけを行なわせることができることになります。
山本教授は、「かさ高いアルミニウム触媒」を合成し、それを用いたディールス=アルダー反応によって、光学異性体の一方だけを98%の光学収率で作り出す反応系を開発することに成功しました。「かさ高いアルミニウム触媒」というのは、アルミニウム原子を大きな配位子で囲んで体積を大きくしたものであり、こうすると、このアルミニウム化合物は溶液中でも単独で存在するようになります。ちなみに、この反応は、炭素?炭素結合を生成する不斉触媒反応では、現在のところ、世界で最も効率の高いものです。
山本教授が成功した理由の1つは、反応剤として早くからアルミニウムに着目していたことにあります。有機アルミニウム化合物は、空気中で自然に火がつくきわめて酸素と反応しやすい物質であり、この有機アルミニウム化合物の親酸素性に注目したのです。
山本教授は、アルミニウムのほかにもホウ素やチタンなどの有機金属化合物を用いて、ベックマン転位-アルキル化反応、βオキシドイリド反応な
ど、おびただしい数の新合成反応の開発に成功しています。それらはすでに、プロスタグランジンやトロンボキサン受容体拮抗剤の合成などに広く利用されています。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
