日本IBM科学賞第3回(1989年)受賞者
受賞者紹介
大貫 惇睦(おおぬき・よしちか)
昭和22年9月1日生まれ
筑波大学物質工学系 助教授

昭和 46年
京都大学工学部金属加工学科卒業
昭和 51年
東京大学理学系大学院博士課程修了
昭和 51年
武蔵工業大学工学部・非常勤講師
昭和 52年
日本学術振興会奨励研究員
(東京大学物性研究所で研究)昭和 53年
埼玉工業大学工学部・講師
昭和 57年
筑波大学物質工学系・助教授
昭和 61年
アルゴンヌ国立研究所客員研究員
昭和 62年
筑波大学物質工学系・助教授
専門:
希土類化合物の物性
著書:
『エキゾチック・メタルズ』
(共著:アグネ技術センター)
『層間化合物の開発と応用』
(共著:シーエムシー)
贈賞の理由
重い電子系の典型物質の合成とその物性の実験的研究
1983年当時、極低温でも磁気秩序を起こさない物質の探索が世界中で行なわれていました。
金属をどんどん冷やしていくと、電気抵抗が少なくなり、ついには超伝導状態になります。しかし、鉄などの磁性不純物をごく少量含んだ金属は、ある温度からは、逆に温度が下がるにつれて電気抵抗が増していきます。この理由を説明するのが、1964年に近藤淳氏が発見した有名な「近藤効果」です。近藤効果によれば、このような現象は、低温で磁性不純物の局在スピンが伝導電子を散乱するために起こるのです。
しかし、極低温の絶対零度付近になると、局在スピンは伝導電子のスピンによって隠され、電気抵抗はそれ以上上昇しなくなります。
これらの現象が起きるのは磁性不純物が微量の場合だけで、高濃度の場合には、低温で磁気秩序を起こしてしまうために見られません。そこで、世界中の科学者が、低温でも磁気秩序を起こさない物質を探していたわけです。こうした状況の中で、大貫氏も探索を進め、セリウム銅6(CeCu6
)を発見したのです。
セリウム銅6は、磁性物質であるセリウムが銅の中に高濃度で含まれていながら、絶対零度まで磁気秩序を起こさない非常にユニークな物質です。このような物質は、今日でもセリウム銅6以外には見つかっていません。
さらに驚くべきことに、セリウム銅6では絶対零度付近で電気抵抗が再び減少していくのです。これは、セリウムが周期的に配列しているため、セリウムの4f軌道の電子が通常の伝導電子の
200倍の重さの伝導電子となって動き出すからです。
こうして大貫氏は、セリウム銅6の発見によって、「重い電子系」という新しい研究分野に貴重な研究材料をもたらし、現在、自らもその分野を切り開きつつあるのです。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
