日本IBM科学賞第4回(1990年)受賞者
受賞者紹介
十倉 好紀(とくら・よしのり)
昭和29年 3月 1日生まれ
東京大学理学部 助教授

昭和 51年
東京大学工学部物理工学科卒業
昭和 56年
東京大学大学院博士課程修了
(工学博士)昭和 56年
東京大学工学部物理工学科・助手
昭和 58年
東京大学工学部物理工学科・講師
昭和 61年
東京大学理学部物理学科・助教授
昭和 62年
IBMアルマデン研究所・客員研究員
専門:
固体物理学
贈賞の理由
電子型高温超伝導体の発見と物質の一般則の導出
ベドノルツ、ミューラー両氏の発見以来、さまざまな種類の酸化物高温超伝導体が発見されてきましたが、それらはすべて、p型つまり正孔がキャリア(担体)である物質でした。そのため、一部には、高温超伝導はこの正孔の特殊な振る舞いに由来する現象ではないか、という考え方さえ生まれていました。
十倉助教授は、1988年12月、東大工学部の高木助手、内田助教授とともに、ネオジム・セリウム・銅酸化物という「キャリアが電子の高温超伝導体」を初めて発見し、世界の研究者に衝撃を与えました。この発見は従来の“常識”を覆し、超伝導という現象が、他の物理現象と同様に、プラスの正孔でもマイナスの電子でも起こる普遍的なものであることを実証しました。
十倉助教授はさらに、高温超伝導体と結晶構造の関係を説明し、従来は偶然の要素に支配されていた新物質の探索に、確固とした道しるべとなる一般則を見つけ出しました。それが現在Tokura
Rule と呼ばれているものです。この考え方の基本は、高温超伝導体でキャリアが移動するのは2次元のCuO面であり、その上下を、プラスもしくはマイナスにドープされた絶縁層がサンドイッチしている、というものです。このような組み合わせは、++、+-、--の3種類しかありません。このうち、前2者がp型、後者がn型になるわけです。
このような洞察に立って、それまで発見されていた物質を分類するとともに、まだ未発見の物質があることを予言しました。そして自らも新超伝導体の発見に成功したのです。これは理論的予言に基づいて見つかった初めての超伝導物質です。当然のことながら、それ以降見つかった10種類以上の物質も、すべてTokura
Rule を満たしています。
このように、十倉助教授はn型超伝導体を発見し、高温超伝導体に関する一般的法則を導き出して、偶然が支配していたこの研究分野に学問的な統一性を確立しました。今後の発展の重要な基盤を築き上げたのです。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
