日本IBM科学賞第4回(1990年)受賞者
受賞者紹介
和達 三樹(わだち・みき)
昭和20年 2月10日生まれ
東京大学理学部 教授

昭和 42年
東京大学理学部物理学科卒業
昭和 45年
ニューヨーク州立大学大学院卒業(Ph.D.)
昭和 45年
ニューヨーク州立大学研究員
昭和 46年
東京教育大学光学研究所・助手
昭和 50年
東京教育大学光学研究所・助教授
昭和 50年
アルバータ大学客員研究員
昭和 53年
筑波大学物理工学系・助教授
昭和 55年
東京大学教養学部・助教授
平成 2年
東京大学理学部物理学科・教授
専門:
物性基礎論・統計力学
とくに非線形物理学著書:
『液体の構造と性質』
(共著、岩波書店)
『物理のための数学』
(岩波書店)
『新しい物性』
(編著、講談社)
贈賞の理由
ソリトン理論の発展とその応用
バイオリンの音のような複雑な波形でも、基音(基本周波数)と倍音の足し合わせで記述できますが、こうした形に分解できない現象、つまり非線形の波動も自然界には多数あります。ソリトンというのは非線形現象でありながら、「孤立波」の足し合わせで、あたかも線形現象のように記述できる不思議な波のことです。和達教授は、このソリトンの分野で数々の業績を上げてきました。
ソリトン問題の本質は、それがカオスやフラクタルと同様、非線形問題だということです。
線形問題はフーリエ変換で解けることが 170年前に明らかになっていましたが、非線形問題は最近まで解くことができませんでした。しかし和達教授は、フーリエ変換を拡張した「逆散乱法」が非線形波動の問題を解くのに使えることを明らかにしました。その結果、20年前には、大変特別なもので、Kdvと呼ばれる方程式にだけ現れると思われていたソリトンが、いろいろな方程式に現れる普遍的なものであることがわかったのです。 和達教授は次に、ソリトン理論が量子論や統計力学でも成り立つことを明らかにし、さらにこの研究から、統計力学の大きなテーマの1つであった「厳密に解ける模型」が無限個あることも明らかにしました。
研究はやがて、「ひもの理論」とも関連することになりました。2つのからみ合った紐がトポロジー的に同じかどうかを調べるのは大変難しいことで、それを解くカギになる絡み目多項式と呼ばれる不変量を見つけるのは数学の大きなテーマの1つになっています。和達氏はソリトン理論から、この不変量もやはり無限個あるということを明らかにしました。
これら和達教授の業績は、物性基礎論の発展はもちろん、素粒子物理、高温超伝導現象の解明、高分子物理、光ファイバーの設計、位相数学などに大きく貢献しています。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
