日本IBM科学賞第5回(1991年)受賞者
受賞者紹介
荒川 泰彦(あらかわ・やすひこ)
昭和27年11月26日生まれ
東京大学先端科学技術研究センター 助教授

昭和 50年
東京大学工学部電子工学科卒業
昭和 55年
東京大学大学院工学研究科
博士課程修了昭和 55年
東京大学生産技術研究所・講師
昭和 56年
東京大学生産技術研究所・助教授
昭和 57年
~61年カリフォルニア工科大学客員研究員
昭和 63年
東京大学先端科学技術研究センター
助教授平成 元年
東京工業大学・助教授併任
専門:
量子マイクロ構造デバイス
著書:
『化合物半導体エレクトロニクス』
(東京大学出版会/共著)
『超格子ヘテロ構造デバイス』
(工業調査会/共著)
『超高速光エレクトロニクス』
(培風館/共著)
贈賞の理由
量子効果半導体レーザーの研究
1970年に室温で発振した半導体レーザーは、光通信の中心的なデバイスとして実用化されてきましたが、75年ころから、これに超格子構造を取り入れたらどうなるかという研究が始まりました。
1982年、半導体超薄膜の、量子井戸レーザーがやっと試作された時期に、荒川助教授は、超格子をさらに細分化した量子細線、量子箱という新しい概念を提案、これを半導体レーザーに使うと、レーザーの発振を起こす「しきい値電流の温度依存性」が著しく小さくなるなど、その性能を飛躍的に向上できる可能性を示しました。そして、強磁場のサイクロトロン運動を利用して量子細線レーザーと等価な状態を実現し、その効果を実証しました。
光通信の光源にする場合、さらに重要になるのは、より多くの情報を送るために「どこまで変調をかけられるか」という変調帯域幅の問題です。荒川助教授は、カリフォルニア工科大学滞在中の1984年、半導体レーザーに量子効果を取り入れると、変調帯域幅が大幅に改善され、同時に、スペクトルの線幅、つまりゆらぎの小さいきれいな正弦波をつくる上でも大きな効果があることを世界に先駆けて提案しました。
さらに、半導体レーザーでもう1つ重要な点は、いかに短いパルスを発生させるかということですが、この点についても、荒川助教授は、1987年に、量子効果を使うとパルスが非常に短くなることを理論的に予測し、1.3ピコ秒という世界最短のパルスの発生に成功しています(この記録は措しくも1990年に破られました)。
このような理論を提案する一方で、荒川助教授は、有機金属気相成長法(MOCVD)を用いた新しい形成法により、量子細線や量子箱の製作技術を開拓、実際に200オングストロームの細線構造を作り、効果の実証に取り組んでいます。
量子効果が半導体レーザーの重要な特性のすべての面で有効に働くことを予測し、それらを実証した荒川助教授の研究は、次世代レーザーヘの大きな道を開いてきました。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
