日本IBM科学賞第5回(1991年)受賞者
受賞者紹介
池田 研介(いけだ・けんすけ)
昭和24年l月10日生まれ
京都大学基礎物理学研究所 教授

昭和 47年
京都大学理学部卒業
昭和 54年
京都大学大学院理学研究科
単位取得退学昭和 54年
京都大学大学院理学研究科
学位取得(理学博士)昭和 56年
京都大学理学部・助手
昭和 60年
京都大学基礎物理学研究所・教授
専門:
非線形物理学
贈賞の理由
光カオスを中心とするカオスの理論的研究
カオスというのは、ある現象の時間的発展が決定論的な法則で記述されているにもかかわらず、予測不可能な変動を示す現象をいいます。たとえば水の流れは「ナビエ・ストークス方程式」で決定論的に記述されるのに、ある条件を超えると、乱流のような予測不可能な状態が起こります。
池田教授は、非常にきれいに整った光によって起こる非線形光学現象においても、いわば光の乱流現象である「光カオス」が存在することを理論的に発見し、その性質を理論的に予測して、新しい研究分野を開拓しました。
1979年、池田教授はレーザー発振に代表される非線形光学現象を記述する「マックスウェル・プロッホ方程式」が、ある条件のもとで遅延微分方程式と呼ぷ比較的簡単な方程式に変換され、光双安定系において、その解が不安定化(分岐)を次々に繰り返して、カオスに遷移することを予測しました。光双安定系というのは光の入力に対して、2つの安定な出力状態がある系のことです。こうして、光の世界にもカオスが存在することを世界で初めて理論的に発見したのです。
この予測は、その後いくつかのグループによって実験的に確認され、カオス現象が物理学で注目され始めた時期とも重なって、非線形光学の分野でカオス研究が活発に行われる契機となりました。非線形光学現象は、たとえば赤いレーザー光をある媒質に入れたときに別な色の光として出てくるように、応答が比例関係で記述できない現象のことです。これまで多くの研究がなされてきましたが、光カオスの発見によって、この領域で見られる不安定現象の相当部分に、カオスが関与していることがわかりました。
このように、池田教授による光カオスの発見は、それまで回避されていた不安定現象の原因を解明
するとともに、さらに進んで、それを積極的に利用しようという新しい学問の流れを作り上げたのです。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
