日本IBM科学賞第5回(1991年)受賞者
受賞者紹介
坂井 修一(さかい・しゅういち)
昭和33年11月1日生まれ
電子技術総合研究所情報アーキテクチャ部 主任研究官

昭和 56年
東京大学理学部情報科学科卒業
昭和 61年
東京大学大学院工学系研究科
博士課程修了(工学博士)昭和 61年
電子技術総合研究所
平成 2年
電子技術総合研究所・主任研究官
平成 3年
マサチューセッツ工科大学招聘研究員
専門:
計算機アーキテクチャ
著書:
『Advanced Topics in Data-Flow Computing』
(Prentice Hall/共著)
歌人として『ラビュリントスの日々』
第31回現代歌人協会賞受賞
贈賞の理由
高並列データ駆動計算機の研究
コンピューターの高速化にも限界が見えはじめ、多数のプロセッサを同時に働かせる並列計算機の研究がますます重要になっています。並列処理方式には多くのタイプがあり、それぞれが得意の分野をもっています。また、効率の良い並列処理を行うためには、問題を分割するアルゴリズム、各プロセッサを均等に働かせる方法、データ転送や同期のオーパーヘッドを小さくする方法など、多くのむずかしい問題が残されています。
坂井主任研究官は、並列処理計算機の1つであるデータ駆動計算機(データフローマシン)において、「強連結枝モデル」という新しい並列計算モデルを発案・提唱し、これをもとにEM-4と呼ぷ最大性能1GIPSのプロトタイプマシンを開発しました。
並列処理では、それぞれの処理の同期をいかにうまくとるかという課題があり、基本的にはプログラムで並列実行を指定しなくてはなりません。しかしデータ駆動方式は、いわば「借り物競争リレー」のように、「必要なデータが集まった段階で、各プロセッサが勝手に前に進む」という方式であり、個々の同期を考える必要がありません。したがって、プログラムが比較的簡単に構成できる有力な並列処理方式と考えられてきました。
ところが、プロセッサ相互のデータ転送量が膨大になるなどの問題があり、実際のマシンはなかなか実現しませんでした。坂井主任研究官を中心とする電総研グループは、プログラムを表現するデータフロー図式に、常連結枝と強連結枝という2つの枝を設け、データ駆動方式の利点と局所的・逐次的に処理するフォンノイマン方式の利点をうまく結合させました。
ハードウェアとしては、2階層のパイプラインを融合した構成を採用し、シングルチッププロセッサEMC-Rを製作しました。これは、並列計算機用要素プロセ
ッサとして初めてRlSC方式を取り入れた記念すべきチップです。さらに、このプロセッサ80台からなるEM-4のプロトタイプマシンを実働化させ、実際のプログラ
ムで高い性能が出ることを示しました。世界で初めて、汎用性のある高並列データ駆動計算機を誕生させたのです。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
