日本IBM科学賞第6回(1992年)受賞者
受賞者紹介
喜連川 優(きつれがわ・まさる)
昭和30年7月13日生まれ
東京大学生産技術研究所 助教授

昭和 53年
東京大学工学部電子工学科卒業
昭和 58年
東京大学大学院工学系研究科
情報工学専攻博士課程修了(工学博士)昭和 58年
東京大学生産技術研究所・講師
昭和 59年
東京大学生産技術研究所・助教授
専門:
データペース工学
並列コンピユーターアーキテクチャ著書:
『第5世代コンピュータ』
(共著)
『Database Machines & Knowledge Base Machines』
(Kluwer Academic Publishers)
贈賞の理由
関係データベースの高性能化に関する研究
1970年代初め、lBMのコッド博士が「関係(リレーショナル)データモデル」という新しいデータベースモデルを創案し、80年代に実用化が進みました。この関係データベースは、柔軟で容易に操作できる半面、システム全体の負荷が非常に大きくなるという問題をもっていました。喜連川助教授は、ハッシングという技法を利用したアルゴリズムによって、負荷の大きな関係データベース演算を従来よりも大幅に高速化できることを示し、1983年、それに適したアーキテクチャを発表しました。そして、アルゴリズムの改良、並列処理の組み込みなどを推し進め、実用レベルの処理時間が達成できることを示しました。
一方、ビジネスデータ処理では、データの整列化つまりソーティングが処理時間の大半を占めており、その高速化が望まれていました。喜連川助教授は、「ディスクからデータを読み取った時点でソーティングも完了する」という独自のメモリー管理技法を用いた専用ソートプロセッサーを1985年に実現しました。18個のプロセッサから構成された試作システムは、当時最高速のディスクからのデータ転送に追従し、一度に25万件のレコードをソートできる「実用レベルの性能」を達成しました。この方式はその後LSl化され、商用システムに採用されています。
また、CPUの高速化の一方で、データを格納するディスクの入出カの遅れが大きな問題でした。これに対して、ディスクにマイクロプロセッサーやメモリー、独自の専用コントローラーなどをつけてディスク自体を高機能化し、データベース管理機構を二次記憶上で実現することをめざした「機能ディスクシステム」を1985年に作り上げました。試作機は、当時の商用ソフトウェアより1桁以上も高い性能を達成しました。
現在、これまで開発してきた基礎技術を統合し、きわめて高い性能をもつデータベース専用のスーパー・データベース・コンピューター(SDC)の開発を目指しています。すでに2個のモジュールのシステムが稼働しており、これは大型コンピューターをはるかにしのぐ性能を示しています。
このように、喜連川助教授は、一貫してデータベースの高性能化と取り組み、独創的、先駆的な成果を上げてきました。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
