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日本IBM科学賞第8回(1994年)受賞者

受賞者紹介


野末 泰夫(のずえ・やすお)
昭和27年5月25日生まれ
東北大学理学部物理学科 助手


野末泰夫氏の顔写真

  1. 昭和 50年

    新潟大学理学部物理学科卒業

  2. 昭和 52年

    東北大学大学院理学研究科
    物理学専攻修±課程修了

  3. 昭和 54年

    東北大学大学院理学研究科
    物理学専攻博士課程中退

  4. 昭和 54年

    東北大学理学部物理学科・助手

  5. 昭和 57年

    理学博士(東北大学)

  6. 専門:

    物性物理学
    (主として分光学的方法による)

贈賞の理由


アルカリ金属クラスターの強磁性の発見とナノ構造物質の開拓

金属において強磁牲が発現するには、電子のバンド幅が狭くフェルミ準位での状態密度が高いこと、電子間の相互作用が大きいことが条件であると考えられてきました。Fe、Co、Niなどの遷移金属や、希土類金属などがその好例です。アルカリ金属や貴金属では自由電子モデルがよく成り立ち、強磁性からはもっとも遠いところにあると思われていました。

ゼオライトという物質は、Na、Al、Si、0、Hなどを含む多孔質の結晶で、たとえばLTAと呼ばれるものでは、内径約11Åの中空の孔が間隔12.3Åの単純立方格子を形成し、隣り合う孔は直径約5Åの窓でつながっています。この微小な孔の中にアルカリ金属を必要な量だけ押し込むことができます。

野末助手は、ポタシウム、ルビジウム、ナトリウムについて、孔の中の金属の量をいろいろ変えた試料を作り、低温における帯磁率を測定しました。その結果、ポタシウムとルビジウムが強磁性を示すことを発見しました。なお、ナトリウムは反強磁性的な振る舞いを示しました。

ポタシウムの場合、孔当たりの原子数が3の近辺から強磁性が現れはじめ、5で最大値を取り、7の近くで消滅します。最大値は孔あたりにして0_24ボア磁子に達します。キュリー温度は約5K、磁化曲線は5エルステッド程度で飽和し、ヒステリシスが存在しないのも特徴です。この強磁性磁化が孔の中のポタシウムのものであり、ゼオライト自身や不純物のせいではないことは十分に確かめられています。

野末助手はまた、同じ試科の光学的測定を行い、ゼオライト中のアルカリ金属の伝導電子は個々の孔の中に局在しているのではなく、窓を通じて結晶全体に広がっていると結論し、12.3Åの周期を持つ3次元人工格子中の電子というモデルを提唱しています。

この強磁性発現の機構はまだ明らかではなく、他の物理量の測定や、理論的研究が待たれます。しか し、この発見は単純な予想を覆す極めて興味深いものであり、金属磁性の分野に新しいぺージを開くものであることは明らかです。

※所属名および役職は、受賞時のものです。