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日本IBM科学賞第8回(1994年)受賞者

受賞者紹介


鈴木 啓介(すずき・けいすけ)
昭和29年6月24日生まれ
慶應義塾大学理工学部化学科 教授


鈴木啓介氏の顔写真

  1. 昭和 53年

    東京大学理学部化学科卒業

  2. 昭和 58年

    東京大学理学系大学院博士課程修了

  3. 昭和 58年

    慶應義塾大学理工学部・助手

  4. 昭和 62年

    慶應義塾大学理工学部・専任講師

  5. 平成 元年

    慶應義塾大学理工学部・助教授

  6. 平成 2年

    スイス連邦工科大学(ETH)・客員教授

  7. 平成 6年

    慶應義塾大学理工学部・教授

  8. 専門:

    有機合成化学

  9. 著書:

    『Organic Synthesis in Japan Past, Present, and Future』
    (共編著:東京化学同人)

贈賞の理由


糖類関連化合物の高選択的有機合成法に関する研究

糖質の科学は、タンパク質、核酸に続いていちばん遅く登場したのですが、その生物学は前二者に劣らず多様で、新鮮な知識を人類の科学に提供しています。しかし、これに対応する化学はまったく立ち遅れていました。その原因は「合成するための手法の欠如」という一語に尽きます。これに対して大きな貢献をしたのが鈴木教授であります。

オリゴ糖鎖の生物機能が解明され始め、特にオリゴ糖鎖が生体内情報の伝達を担うことが解明されて以来、分子量の大きな糖鎖構造を精密に構築できる方法の登場が待望されていました。鈴木教授はこの間題の中心となる糖と糖とをつなぐ手法としてのグリコシル化反応の革新的な方法を示しました。すなわち、ジルコニウム、ハフニウム錯体をフッ化糖の活性化剤として用いるユニークなグリコシド合成反応を開拓したのです。この方法を活用し、従来至難とされてきた化学的に不安定なマクロリドのグリコシル化を見事に達成し、その有用性をマイシナミン類の合成などで実証しました。

一方、アリールC‐グリコシドは多様な生理活性を示すので注目され、その合成も試みられていますが、合成化学的には未開の分野でありました。鈴木教授はこの問題にもいち早く取り組み、顕著な成果を挙げています。すなわち問題解決の鍵となるC‐グリコシド結合の形成法に関し、ルイス酸を触媒としたO-グリコシドからC-グリコシドへの転位に基づく斬新な手法を創出しました。この反応を駆使し、抗腫瘍性化合物ビネオマイシンB2の全合成を完成しています。

また鈴木教授はこれらの手法を駆使して、強力な抗腫瘍性を示しかつ毒性が低いことで注目されているギルボカルシン類の全合成に成功しています。この化合物の合成は全世界で十数グループにより競われてきましたが、いずれも糖が導入できずに未完成であったものであり、鈴木教授の手法の有効性を如実に物語るものであります。実際、この合成のエレガントさと高度な効率は類まれなものであります。

鈴木教授の研究はこのように糖を含む有用な生体機能物質の全合成をモチーフとし、新規合成手法の開拓に関するもので、国際的にも高く評価されています。

※所属名および役職は、受賞時のものです。