日本IBM科学賞第10回(1996年)受賞者
受賞者紹介
河田 聡(かわた・さとし)
昭和26年10月1日生まれ
大阪大学大学院工学研究科応用物理学専攻 教授

昭和 49年
大阪大学工学部応用物理学科卒業
昭和 54年
大阪大学大学院工学研究科
応用応用物理学専攻博士課程修了
(工学博士)昭和 54年
日本学術振興会・特別研究員
昭和 54年
カリフォルニア大学アーバイン校電気工学科
博士研究員昭和 56年
大阪大学工学部応用物理学科・助手
平成 4年
大阪大学工学部応用物理学科・助教授
平成 5年
大阪大学工学部応用物理学科・教授
専門:
光学、光エレクトロニクス
著書:
『科学計測のための画像データ処理』
(CQ出版、1994)
『新しい光学顕微鏡:第1巻、レーザ顕微鏡の理論と実際』
(学際企画、1995)
『光が創るマルチメディア新時代』
(三田出版会、1996)
『赤外分光法』
(学会出版センター、1996)
贈賞の理由
近接場ナノ光学に関する研究
ナノメートル(1nm=10-9m)の世界は光の波長よりはるかに小さな世界であり、このような微小な領域を光を用いて観察したり制御することは、これまでは、光の持つ波動性のため不可能だと思われてきました。
河田教授は、物質からの距離が光の波長以下(ナノメートル)である近接電磁場に早くから着目し、光の波動性による回析限界を超越したナノメートルの空間にフォトンを局在させるという画期的な研究を世界に先駆けて推進し、光学における新しい学問分野を開拓してきました。
近接場ナノ光学の研究は、ナノメトリックな分解能を持つ光学顕微鏡として、あるいは光による超微細加工や超高密度記録技術として、さらにはメゾスコピックな材料・デバイスを評価したり、分子一つ一つの化学反応の直接観察・制御する方法や生体分子の機構・機能を解明する手段として、最先端の産業・自然科学の発展に貢献するものと期待されます。
これまで、河田教授は先端を尖らせた金属プローブを用いたニアフィールド光学顕微鏡を世界で最初に提案し、STM像とニアフィールド光学像のナノメーター分解能での同時観察に成功し、また赤外領域でのニアフィールド分光分析顕微鏡を最初に発表しました。さらに、近接場領域での光学理論を展開し、試料とプローブが近距離に存在するときの電磁相互作用や像解釈について、多くの新しい知見を示しました。また、エバネッセント場を介して薄膜や複数の微粒子間に生じる光放射圧の力学についての研究を進め、レーザー光によってトラップされた微小球をプローブとしたニアフィールド顕微鏡や光導波路上の微粒子の駆動実験などを、世界に先駆けて発表しました。
同教授による近接場光学の特殊性の発見、また近接場光学とフォトン力学の融合の追求により、光波長の壁を克服したナノ
メートルスケールの物質制御が実証されました。そのインパクトには極めて大きいものがあります。この学問は材料科学、分子生物学、光記録
技術、量子デバイス工学、マイクロ力学など多くの学問と接点を持っているので、広い学問分野に波及し、またその発展に大きな貢献をするものと期待されます。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
