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日本IBM科学賞第10回(1996年)受賞者

受賞者紹介


大堀 淳(おおほり・あつし)
昭和32年1月15日生まれ
京都大学数理解析研究所 助教授


大堀淳氏の顔写真

  1. 昭和 56年

    東京大学文学部哲学科卒業

  2. 昭和 56年

    沖電気工業株式会社・入社

  3. 平成 元年

    米国ペンシルバニア大学
    計算機・情報科学科博士課程修了 Ph.D.

  4. 平成 元年

    グラスゴー大学にて客員研究
    (英国王立協会リサーチフェローシップ)

  5. 平成 2年

    沖電気工業株式会社
    関西総合研究所勤務

  6. 平成 5年

    京都大学数理解析研究所・助教授

  7. 専門:

    プログラミング言語の型理論、
    データモデル理論、
    オブジェクト指向プログラミング

贈賞の理由


高水準プログラミング言語のための多相型システムの研究

ソフトウエアに対する要求が複雑かつ大規模化することに伴い、種々のプログラミングパラダイムにおいて使われるさまざまなデータ構造を統合的に扱う高水準プログラミング言語の開発が求められ、その設計および開発の基礎となる厳密な理論を確立することは重要かつ緊急の課題であります。大堀助教授は、プログラミング言語の基礎理論である多相型(polymorphism)の理論および型推論(type inference)の理論を拡張、統合することにより、包括的な基礎理論の体系を完成され、高水準プログラミング言語の設計および開発の基礎に多大な貢献をもたらしました。同助教授の業績は、多相型レコード計算系の確立、データベースプログラミングのための多相型理論、多相型理論のオブジェクト指向プログラミングへの拡張の3つに大別されます。

種々のデータ構造は、一般に、レコード型とバリアント型の組み合わせで実現されます。大堀助教授は、従来の型推論および多相型理論をレコード型およびバリアント型のデータ構造が扱えるように拡張するとともに、コンパイル理論を含めた多相型レコード計算系の理論を確立されました。型を用いてコンパイルを行うという同助教授のアイデアは、独創的かつ汎用的なもので、同分野における理論的研究の端緒になっています。

従来のデータモデルの理論は、テーブル形式を前提としているため、その適用範囲は極めて限られていました。大堀助教授は、領域理論を用いてデータ構造を抽象化することにより、関係データモデルの諸概念を一般化できることを示され、さらにデータベースプログラミングに適した多相型システムを構築され、その後のデータベース言語の研究に大きな影響を与えました。

近年、ソフトウエアの世界ではオブジェクト指向パラダイムが注目されています。大堀助教授は、レコード型を含む多相型理論を抽象データ型に拡張することによって、クラスとメソッドの継承を表現しうることを示され、オブジェクト指向プログラミングの理論的基礎づけに貢献されました。

このように、大堀助教授は、高水準プログラミング言語の基礎理論を、プログラミング言語、データベースプログラミング、オブジェクト指向プログラミングの3つの側面か ら研究され、各々の分野においてその後の世界の研究をリードする重要な研究成果をあげられ、国際的にも高い評価を受けています。

※所属名および役職は、受賞時のものです。