日本IBM科学賞第10回(1996年)受賞者
受賞者紹介
関口 章(せきぐち・あきら)
昭和27年2月14日生まれ
筑波大学化学系 教授

昭和 49年
群馬大学工学部応用化学科卒業
昭和 53年
筑波大学大学院化学研究科
博士課程化学専攻中退昭和 53年
筑波大学研究協力部研究協力課
文部技官昭和 56年
筑波大学化学系・助手(理学博士)
昭和 57年
筑波大学化学系・講師
昭和 60年
~61年米国ウィスコンシン大学化学科
博士研究員昭和 62年
東北大学理学部・助教授
平成 8年
筑波大学化学系・教授
専門:
有機化学、有機金属化学
著書:
『The Chemistry of Inorganic Ring Systems』
(共著:Elsevier)
贈賞の理由
14族元素を含む新規な特異構造化合物の合成と特性
有機化学の中心である炭素化合物の化学においては、その結合や構造の多様性ゆえに現在でも数多くの興味深い化合物が誕生している。一方、近年、同族のケイ素、ゲルマニウムなど元素をもつ化合物についても、炭素とは異なる特徴ある性質が解明されつつあり、これらの14族元素をもつ特異な構造の化合物の研究が世界的に極めて活発に行われている。
関口教授は、14族元素を含む立体的、電子的に極度の歪みをもつ有機化合物や極度に不安定な有機化合物の合成を行い、その構造と性質の解明を行った。ベンゼンに2電子加わったベンゼンジアニオンは8π電子系であり、理論的にその興味ある性質が指摘されながらも、その極度の不安定性のためその合成は著しく困難と考えられていたが、関口教授はベンゼン環上にケイ素置換基(トリメチルシリル基)を4つまたは6つ導入することによりそれぞれ非芳香族性および反芳香族性をもつ2種のベンゼンジアニオンの合成に成功し、その興味ある構造と性質を明らかにした。ケイ素置換基を活用する同様の手法により隣接した炭素に電荷をもつエチレンジアニオンも初めて合成した。
高い対称性を持つ分子は、その美しさ、期待される興味ある性質、合成的な困難さなどのゆえに常に有機化学者の研究意欲をそそってきたが、関口教授はこの分野でも世界をリードする研究を行った。プリズム型6面体の頂点にそれぞれゲルマニウム、ケイ素原子の存在するヘキサゲルマプリズマン、ヘキサシラプリズマンの合成に初めて成功し、さらに同様な手法によりサイコロ状の正6面体であるオクタシラキュバン、オクタゲルマキュバンも合成し、これらかご型分子の化学を日本の化学として世界に認知させた。関口教授はまた、その構造の特異性のため多くの興味ある性質が期待されている樹枝状分子(デンドリマー)についても、その骨格が全てケイ素原子であるポリシラデンドリマーを斬新な合成法を用い初めて合成した。
このように、関口教授の14族元素有機化合物に関する研究は、それら元素のもと特性を巧みに活用し、独自の方法論を開発しつつ、基礎科学的に大きな意義を有
する分子の合成を行ったものであり、14族有機化学のみならず広く有機化学一般に大きな波及効果をもたらした。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
