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日本IBM科学賞第12回(1998年)受賞者

受賞者紹介


遠藤 斗志也(えんどう・としや)
昭和28年12月9日生まれ
名古屋大学大学院理学研究科物質理学専攻 教授


遠藤斗志也氏の顔写真

  1. 昭和 52年

    東京大学理学部生物化学科卒業

  2. 昭和 57年

    東京大学大学院理学系研究科
    生物化学専攻博士課程修了
    東京大学理学博士学位取得

  3. 昭和 57年

    群馬大学工業短期大学部工業化学科
    助手

  4. 昭和 61年

    バーゼル大学バイオセンター
    博士研究員併任

  5. 昭和 62年

    群馬大学工業短期大学部工業化学科
    助教授

  6. 平成 元年

    群馬大学工学部生物化学工学科
    助教授

  7. 平成 元年

    名古屋大学理学部化学科・助教授

  8. 平成 3年

    名古屋大学理学部化学科・教授

  9. 平成 8年

    名古屋大学大学院理学研究科
    物質理学専攻・教授

  10. 専門:

    生物物理化学、分子細胞生物学

贈賞の理由


プロテイン・トラフィックの分子機構の解明

タンパク質は特定のアミノ酸配列からなる鎖状高分子であるが、その機能が細胞という「生命の場」で発現されるためには、細胞内で生合成されたタンパク質が機能するべきミトコンドリアや葉緑体などのオルガネラに移動し、機能構造を作り上げる必要がある。遠藤教授は、この「プロテイン・トラフィック」の問題に取り組み以下のように先駆的業績をあげてきた。

タンパク質の移行先を指定するシグナルは、タンパク質自身に書き込まれている。遠藤教授はまず、核磁気共鳴(NMR)などの分光学的手法により、ミトコンドリア行きシグナルと葉緑体行きシグナルの立体構造を明らかにした。さらに最近これらのシグナルを読み取るミトコンドリア側の受容体の立体構造をも、多次元NMRの手法により世界で初めて決定することに成功した。こうして、移行先を示すシグナルとその認識の仕組みを分子構造のレベルで理解する突破口を開いた。

タンパク質がオルガネラ内に入るためには、オルガネラを取り囲む生体膜を通り抜けねばならない。この「膜透過」過程は、オルガネラ膜上の様々なタンパク質と膜脂質の連携プレーによって初めて実現する。遠藤教授は、ミトコンドリア膜を通過するタンパク質は、膜上の酸性リン脂質によって立体構造がほどかれることを発見した。生体膜によってタンパク質の高次構造がほどけるという現象は全く意外なものであったが、その後様々な系で同様の現象が見つかり、生物学的に重要な現象であることが分かってきた。次にミトコンドリアや葉緑体において、タンパク質の膜透過に関わるタンパク質を次々に発見し、その機能を明らかにした。そして非天然アミノ酸導入タンパク質を用いて、膜透過に係わるタンパク質と通過するタンパク質の相互作用の詳細を明らかにすることに成功した。

このように、遠藤教授はプロテイン・トラフィックに関する新しい発見を次々に行い、その分子機構の解明に大きく貢献した。その成果は、タンパク質の 分子認識、タンパク質・脂質相互作用などの問題一般を考えるうえでも、大きな指針を与えるものであり、受賞にふさわしいものである。

※所属名および役職は、受賞時のものです。